第137話 防衛システム

『――侵入者を排除する』

 突然声が聞こえたかと思うと、

 目の前の壁が突然開いて中から巨大なゴーレムが現れた。


「は!?」「え!?」「!?」「えぇ……?」

 僕達は突然の出来事に一瞬フリーズした。

 ゴーレムはゆっくりと動き出すと、こちらに腕を振り下ろしてきた。


「――避けて!」

 僕達は全員回避行動を取ったが、

 ゴーレムの攻撃は壁に直撃して壁に大きなヒビが入った。


『排除する』

 ゴーレムは再び攻撃態勢を取ると、

 今度は拳を突き出して、その拳がこちらに飛んできた。


「うおっ!!!」


 まさかのロケットパンチとは……!

 そんなことを考えてたら、

 思いっきり食らってしまい僕は壁に吹き飛んでしまった。


「……つつっ痛い……」

 固い鎧を身に付けていたおかげか、

 痛みはあるが大したダメージでは無かった。


「ちょっとレイ、大丈夫ですか!?」

「なんとか生きてる」


<完全回復>フルリカバリー

 姉さんの<回復魔法>のおかげですぐに回復することが出来た。


「皆さん、来ます!」

 レベッカの警告と同時にゴーレムが再び攻撃を仕掛けてくる。


『侵入者は全て滅ぼす』

 ゴーレムの胴体が一時分離し、その中から魔法が飛び出してきた。


<光線>レーザー

 ゴーレムから光り輝くレーザーが僕達を襲う。


「みんな避けて!!」

 直線のレーザーだったので左右に避けることで回避したが、

 レーザーはそのまま後ろにあった扉を破壊した。


「まずいわね……。

 あの威力だと、次まともに喰らったら無事じゃ済まないかも」


 ゴーレムの胴体部分から分離していたのは、

 どうやら砲身のようなものらしく、そこから発射されたようだ。


「一気に倒そう!」

 僕は剣を構えて、巨大なゴーレムに接近する。


「援護します!<重圧>グラビティ

<中級雷撃魔法>サンダーボルト!!」

<魔法の大砲>マジックキャノン


 僕が接近するのを援護するために、

 三人が得意の魔法をゴーレムに向けて放つ。

 強力な魔法を受けたゴーレムだが、効いている様子は無い。


「くっ!」

 魔法を完全無視してゴーレムは接近する僕ばかりを狙う。

 辛うじて回避するが僕は一旦接近するのを諦めて、

 皆と同じように魔法攻撃で様子見するが、やはり効いている様子はない。


<重圧>グラビティすら効果が薄いとは……!!」

「単に魔法の耐性が高いだけは無いですね、

 向こうも魔法か何かで魔法攻撃をシャットアウトしてるのかも……」

 そう言いながらエミリアとレベッカは続けざまに魔法を発動する。


<炎球>ファイアボール

<暗黒の槍>ダークスピア

 二人とも次々と魔法を放つが、やはり効果はいまひとつだった。


「魔法はあんまり効果無さそうだね」

「なら物理攻撃ね。この杖を使ってみるわ!!」

 姉さんは、買った魔法力を物理攻撃に転化する武器を振り回し、

 ゴーレムに向かって特攻した。 


「ちょっ!姉さん危ない!」

「えっ!?きゃあああ!!」

「ベルフラウ様!!」


 姉さんを突然狙ってきたゴーレムは<光線>で姉さんを狙うが、

 横からレベッカが姉さんを突き飛ばすことで何とか回避した。


「あ、危なかった……ありがとう、レベッカちゃん」

「ベルフラウ様では敵の攻撃を掻い潜るのは難しいかと……」


 確かに姉さんは近接戦闘には向いていない。

 魔法使いは後衛職なのだから仕方ないが……。


「私に任せてください!<上級獄炎魔法>インフェルノ


 エミリアが放った地獄の炎により、ゴーレムは火炎に包まれた。

 通常の魔物なら殆どの場合、この魔法で沈むはずだ。

 しかし、ゴーレムは火に包まれても動きは止まらなかった。


「えぇ……!?この魔法すら効いていないのですか……!」

「そ、そんな……」

 二人は絶望的な表情を浮かべるが、その隙を狙っていたかのように、

 ゴーレムの腕が僕とエミリアの方へと振り下ろされる。


「エミリア、伏せて!!はぁぁぁ!!!」

 エミリアを庇いながら僕は、

 <龍殺しの剣>ドラゴンスレイヤーでゴーレムの腕を受け止める。

 しかし、その威力に押され始める。


「レイ様、助力致します!!<全強化>貴方に全てを!!」

 強化魔法が僕に付与され、ほんの少しだけ押しとどめたが……

 このままだと、押し負けて二人とも潰れてしまうだろう。


「レ、レイ、大丈夫ですか!?」

「正直、僕の力だとどうしようもないかも……!!!」


 エミリアは僕に押される形になって身動きが取れず、

 僕はレベッカを庇いながらゴーレムの腕を剣で押しとどめてるが、

 このままだと力負けして二人ともやられてしまう。


 ヤバい、このままだと本当に……!


「ど、どうすれば……!!」

 レベッカは弓矢でゴーレムを攻撃するがそれでも気を逸らすことが出来ていない。

 しかし、レベッカはそこでハッとした顔になり、ベルフラウに向けて叫んだ。


「ベルフラウ様!!

 ゴーレムの腕をその杖で全力で殴りつけてくださいまし!!」

「え?こ、こう?」


 姉さんは訳も分からないまま、

 言われた通りに杖でゴーレムの腕を思いっきり殴る。


 ドッゴオオオオオオオオオッ――!!

 と、ものすごい轟音がして、ゴーレムの腕をへし折った。


『しゅ、修復プログラム起動……!!』

 ゴーレムは苦しそうな声を上げて、後ろに下がる。


「なんでこんなことに……」

「姉さんナイス!」

「助かりました、ベルフラウ」


 姉さんの杖一発であそこまでダメージを与えられると思わなかった。

 おかげでどうにか危機を脱することが出来た。


「でもまだ安心はできませんね……

 あのゴーレム、折れた腕が少しずつ修復されていってるようです」


 エミリアの言う通り、腕が少しずつ直っていっているようだ。

 だが、先程のような馬鹿力はもう出せないようで、

 今度はこちらから攻めるチャンスだ。


「でも今ので分かった。

 あのゴーレムは強力な打撃に弱いんだと思う」


 姉さんの魔法力は僕らの中で飛び抜けて高い。

 そして、使用した武器は魔法力を物理攻撃力に転化する武器だ。

 そのため、どうにか相手の防御を貫くことが出来たのだろう。


「それでは、今回の主軸はベルフラウ様という事ですか?」


「うん、多分この中だと姉さんが一番アタッカーに向いてると思う」


「そんなバカな……。

 ベルフラウはこの中で一番運動神経も悪くて非力だというのに……」


 事実なので仕方ない。

 今は姉さんがゴーレムに唯一対抗できる存在なのは間違いない。


「エミリアちゃん、辛辣過ぎない……?」

「あ、ごめんなさい」

 でもこれはかなりチャンスだ。姉さんにはアレがある。


「レベッカ、姉さんに<筋力強化>をお願い」

「は、はい…<筋力強化Lv14>力を与えよ


 レベッカは姉さんに強化魔法を付与する。

 これで非力な姉さんでも幾らかマシになるだろう。


「どうやってベルフラウをあのゴーレムに接近させるのですか?

 もう腕の修復も終わりそうですよ?」


「それなら大丈夫、姉さん。

 僕達は魔法でゴーレムの気を逸らすからその間に――」

 

 僕達は作戦を立てて、ゴーレムに立ち向かう。

 ここまでの戦いで大体敵の攻撃パターンは把握出来た。

 一見脅威の相手だが、やり方次第で完封出来るかもしれない。

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