第129話 大人の階段

 数分後――

 僕達は少し休んでからその場を少し見渡した。


「……しかし、たくさんの魔物の死骸の数だね」

 見回す限り数十体の魔物だ。

 これほどの魔物が犠牲になったとは……。


「あの魔物が全部やったのか?」

「本当に全部一人で倒したのでしょうか?」

 僕達は魔物の死骸を確認しながら感想を言い合う。

 しかし、奇妙なことに気付いた。


「みんな、こっちに来て!!」


 僕は二人を呼び寄せて魔物達を剣で転がした。


 すると……。


「……何でしょう、この傷跡は?」

 一体の<バーサクグリズリー>は、

 まるで大きな口で胴体を食い千切られたような傷だった。

 他の魔物も同じ様な傷を負っている個体が多く見られた。


「<森の主>がやったにしては不自然ですね……」

「普通の大きさじゃありませんね、よほどの大型か」


 さっきの魔物はここまで大きな口では無かった。

 それに、この傷跡は獰猛な牙で、

 力任せに食い千切らないとこうはならないだろう。


「誰がこんなことを……ん?」

 ふと、周りを見渡すと不自然に地面にくぼみがある。

 それも、規則的にいくつか、足跡だろう。


「これって……」

「<森の主>より大きい!?」

「いえ、それよりももっと大きいです!」


 それは人の大きさよりも遥かに大きく、

 明らかに普通の獣ではないものだった。


 頭で想像するのは、やっぱりあのドラゴンだ。

「以前飛んでいった<雷龍>かな」

「しかしレイ様、以前見掛けた<雷龍>は、

 ここまでの大きさでは無かったような………」


 いや、仮説がある。


「<奇跡の実>……」

「「えっ?」」

「多分だけど、あのドラゴンも奇跡の実を食べたんだと思う」


 昨日、飛び去った姿を見た時、以前よりも大きく感じた。

 あれは多分気のせいでも何でもなく本当に大きくなっていたのだ。


 <奇跡の実>を大量に食べたことで大きくなり、

 おそらく食欲も増したのだろう。しかし魔物も食べるとは。


「魔物は倒されたら通常は黒い煙になって消えていくのでは……」

「あっ……それは確かに」


 僕達は疑問を呈するが、それはレベッカが答えてくれた。

「人は全て等しく<神>の祝福を受けており、

 それにより使用する武器や魔法は少なからず<浄化>の力が宿ります」


「レベッカ、それは本当?」


「はい。ですが、そうでない存在。

 例えば同じ<魔物>や<悪魔><龍種>などは例外です」


 つまり、この魔物の死骸は同じ<魔物>、

 あるいは<龍種>に殺害されたのは間違いなさそうだ。


「<森の主>か<雷龍>のどっちかに殺されたんだろうね」

 ……となると、<奇跡の実>の木は放置すると危険かもしれない。


 ……待てよ。もしかしたら……。


「ちょっと調べたいことがあるんだけど……」

 そう言って、僕達は一旦姉さんの元へと戻った。


 ◆


 それから僕達は一度姉さんのいる場所に戻った。

「どうしたのレイくん?

 っていうか、三人ともボロボロじゃない!?大丈夫?」

 姉さんは慌てて僕達に回復魔法を使用して、傷を癒してくれた。


「ありがとうございます、ベルフラウ様」

「お世話になります」

「ありがとう姉さん、ちょっと頼みごとがあってね」

 そう、僕達がここに一旦戻ったのは姉さんの力を借りるためだ。


「私に出来ることならいいけど……何をするの?」

「うん、それはね――」


 ◆


 そして、僕達は<奇跡の実>を見つけた木の場所まで戻ってきた。


「レイくん、ここで何するの?」


「うん、この木に姉さんの<浄化>を使ってほしいんだ」


「……えっ?木に?」「うん」


 僕のお願いを聞いて、姉さんは少し戸惑った様子だったが、

 すぐに両手を広げて目を閉じた。


「――彼のものに永劫の安らぎを与えよ」

 次の瞬間、眩い光が辺り一面を包み込む。そして――


「あ、あれ?」

 そして、姉さんが<浄化>を使用した木は、

 きれいさっぱり消え去ってしまった。


「れ、レイくん?これどういうこと?」

「そのまんまの理由だよ」


 この<奇跡の実>の実る木は浄化が有効な存在。

 要するに<魔物>だったという事だ。


「でもどうしてわかったの?」

「僕が以前の村で立ち寄った森に似たような木があったんだ。

 その木も魔物で<魔力の実>っていう似たような物が実っていたんだよ」


 あの魔物は<魔力の実>を採取しようとしたら襲い掛かってきた。

 けど今回はそうでもないらしい。

 魔物に意思が無いのか<奇跡の実>を取らせるために襲ってこないのか。

 どちらかは分からないが好都合だ。


 というわけで……。

「この森の<奇跡の実>が実ってる木を全部浄化してくれない?」

「え?………えっ!?」


 ◆


 その後、姉さんの活躍によって大半の魔物の木が消滅した。

 おかげで少し谷の風景が変わってスカスカになったけど仕方ない。


 浄化で魔法力を完全に使い果たした姉さんは、

 そのまま馬車に連れ帰って休ませた。

 そして、僕達は谷を抜けて、昨日と同じ場所で寝泊まりをする。


「も、もうダメ、

 お姉ちゃん眠いから先に寝るね……」


「お休みお姉ちゃん、今日はお疲れ様……」


「うん、じゃあみんなお休み……」


「おやすみなさい、ベルフラウ様」

「おやすみです、ベルフラウ」


 少し遅れて二人もテントの中で眠りについた。

 ちなみに僕は一人用のミニテントだ。

 周囲にはエミリアが<防御結界>を二重で敷いて、

 聖水も撒いているので問題なく休むことが出来る。


 そして、眠りに付いてから数時間後――


 ◆


「………ん?」

 眠りに付いて数時間、僕は少し違和感を覚えて目を覚ました。

 眼を開けるとまだ真っ暗だ。

 おそらく深夜だろう。特に魔物が侵入したような気配もない。

 では、何故目覚めたのだろう。

 僕はそう思い、また眠りに付くために目を閉じた。


 しかし――


「………ん」

 また違和感を覚えて僕は目が醒めた。

 身体に何か柔らかい感触が包み込んでいた。

 何だろう、テントの中の毛布はそこまで柔らかいものは無い。

 だけど、まるで人肌のように柔らかくて、僕は目を開けた。


 するとそこには――

「――んっ……」

「………」

 そこには、レベッカ、

 今は大人の体なので大人レベッカと言わせてもらおう。

 大人レベッカが僕に覆いかぶさるように、僕に抱きついていた。

 顔は赤らめており、僕の体に大きな胸や下腹部を押し付けていた。


「れ、レイ様ぁ……」

 彼女は完全に発情していた。


「ちょ、れ、レベッカ……!?」

 ね、なに、これどういう状況!?


 僕と大人レベッカは別のテントで寝ていた筈なのに。

 いや、そういう問題では無くて――!


 完全に今僕はパニックを起こしていた。

 いきなり大人レベッカが僕の上に乗っかってきているのだ。

 いくら何でもこれはまずい。

 僕の理性的にも社会的にも色々とアウトだ。


「レベッカ、落ち着いて!」

「ああっ、レイさまっ……♡」

 駄目だ全然聞いていない。

 むしろますます興奮しているようにさえ見える。


「どうすれば―――むぐっ!!」

 突然、レベッカの唇が僕の唇を塞ぎ、

 そのまま口の中に舌を入れてきた。

 それから数秒、お互いの口の中で舌が絡み合い濃密なキスをした。

 お互いの唇が離れた時、僕は完全に落ちていた。


「――レイ様、愛しております」

 そう言いながら、レベッカは僕のシャツのボタンを、

 手で一つ一つ外していった。


「れ、れべっか………」

 僕は既に完全に呑まれていた。

 先ほどのキスの時、<魅了の魔眼>で僕は抵抗が出来なくなっていた。

 今こうやってレベッカの名前を口にするだけが限界だ。


「レイ様、わたくしと一つになりましょう……」

 まるで夢のような時間だ。

 ずっと愛していたレベッカとこんな風に一つになれるなんて……。

(やめろ、レベッカ)

 レベッカの指が今度は僕のズボンに這っていく。

 僕の一番刺激の強い部分に指を添える。


「ふふふ……レイ様も期待されてるのですね……♡」

 そして、ズボンに手をかけようとして、ズボンを下ろし始めた。


 まさか、僕の初体験が妹のように可愛がっていたレベッカになるとは。

 意外だけど嫌では無かった。

(違う!僕はそんなのを望んじゃいない!)


 そして、遂に僕の下着に手を掛けて下におろし始めて――


「止めろ!レベッカ!!!!」

「――っ!!」


 ようやく僕は声を出すことが出来た。

 その瞬間、テントの入り口が開いて――

<中級暴風魔法>ブラスト!!」

「ひゃん!!」


 突然、強烈な爆風が吹いて、

 レベッカはテントの中でひっくり返った。

 そして、その後別の魔法が発動した。


<束縛>バインド!!!!」


 <束縛>バインドの魔法が、レベッカ――と、

 何故か僕にも発動し、二人まとめて縛り上げられた。


 そして、小さなテントの中で二人が入り込んできた。


「無事ですか!?レイ!」

「お姉ちゃんが居るかぎり、R-18展開は許しません!!!」


 それは頭をボサボサにしたエミリアと、

 何か勘違いしてる寝ぼけ眼の姉さんだった。

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