第101話 FOE
「ふう、終わったね」
「お疲れ様です二人とも」
「危険は去ったようです、ベルフラウ様と合流しましょう」
僕達は歩き出し、広場の先にいた姉さんと姉さんに抱えられてる女の子の姿を発見した。
「レイくーん!上手くやったよー!」
そんな姉さんに僕たちは安堵したのだが――。
「――っ!レイ様!」「くっ!」
レベッカの焦った声で僕は姉さん達の後ろに何かが迫ってることに気付いた。
僕はすぐさま姉さんの方に駆け出して言った。
「姉さん、転移して!」「えっ!?」
少し驚いたが姉さんはすぐ冷静になって、
抱えた女の子と一緒に僕達の後ろに短距離ワープした。
――キィィィン!!
僕の
「――間に合ったか!」「チッ!」
敵の姿を捉えた時は、かなり際どかったが姉さんの転移のお陰で間に合ったようだ。
「レイ!」「レイ様!」
二人の心配する声が聞こえたが、「大丈夫!」と言って対峙する敵を確認する。
「――レッサーデーモンか」
その姿は既に何回も目撃したことのある異形の魔物である<レッサーデーモン>だった。
「デーモン?何故こんなところに……?」
エミリアが疑問を呈す。姉さん達を真っ先に襲おうとした辺り不意打ちか、それとも姉さんか背後の女の子を襲おうとしたのだろうか。
「お前の目的は何だ?」「……」
僕が魔物に質問するが何も答えようとしない。
こいつは他の魔物と違って人の言葉を話せるはずだけど、正直に答えるわけもないか……。
すると、レッサーデーモンの背後からまた魔物が迫ってきた。同種の魔物のようだ。
四足歩行で獣のように素早く走り回るからこいつは厄介なのだが――
「こいつ、羽があるのに空飛びませんよね……」
僕の気持ちを読んだのかエミリアが喋った。上位種と違って空は飛べないようだ。こっちとしては面倒が無いから楽ではある。僕達は後ろに下がりながら二体の<レッサーデーモン>と対峙する。
「……邪魔をするな!」
片方のデーモンが僕に怒声を浴びせながら左の爪で襲い掛かってきたが、剣でそれを防ぐ。
「レイ様!
レベッカの強化魔法が僕に付与されて、僕は銀のオーラに包まれる。
突然僕の力が跳ね上がったデーモンはそれに驚き、その隙に僕は剣でデーモンを押し返した。
「――っ!こいつ何者だ!」「おい、何押されてやがる!」
デーモンたちは距離を取って魔法の詠唱を始め、僕に魔法を放ってきた。
「「<
それなりに強力な魔法だが、今の僕はレベッカの魔法で能力が跳ね上がっている。
そのまま魔法をスピードで躱しながら、デーモンに再び接近した。
「
剣に風の力を付与させ、一体のデーモンを剣で斬り裂いたと同時に後方に吹き飛ばした。
しかし敵は身を引いたからか少し浅かった。倒すには至らない。
「グッ…!!このガキがぁ!」「チッ……!二人でやるぞ!」
もう片方のデーモンも僕に襲い掛かってきただが、
後方のレベッカの弓矢がもう片方のデーモンの腕に突き刺さる。
「ぐっ……!」
そして、後ろの方で魔法を詠唱していたエミリアの魔法が発動する。
「
エミリアの強力な電撃魔法が<レッサーデーモン>二体に直撃し悲鳴を上げて倒れた。
僕が切りつけた方はそのまま黒い煙を上げて消えたが、片方は倒れはしたがまだ息があるようだ。
僕は剣を首に突き付けて言った。
「ここで何をしている?」「……」
まだ喋ろうとはしないか。軽く揺さぶりを掛けてみようか……。
とはいえ、こういうのは苦手だ。
そう思っているとレベッカとエミリアが近くに来てデーモンに問いかけた。
背負っていた女の子はレベッカが今は支えて少し離れた場所にいる。
「魔王の眷属でしょうか?」
「女の子を浚って、魔王の生贄にでもしようとかいう魂胆ですかね」
二人はデーモンに色々と問いただしているが、デーモンは何も答えない。
前回のオーガといい今回のオークといい、何者かが関わってるのは間違いないと思うのだが、こいつが扇動したのだろうか?しかし答える気は無さそうだ。
「仕方ない、答えないなら――」
その時、僕は嫌な予感がして咄嗟に後ろに下がってエミリアとレベッカを庇った。
「伏せて!」「えっ」「な、何ですか?」
二人も急いでしゃがみ込んだ瞬間、
上空から魔法が降ってきて地面に突き刺さり大きな爆発を起こした。
「ぐぅっ!!」「きゃあ!?」「――っ!」
僕達三人はその爆風で飛ばされそうになるが、何とか耐え抜いた。
「レ、レイ君大丈夫!?」「なんとか……」
「いったーい……です」
離れた場所から姉さんが叫んだ。
「皆、大丈夫!?」
「大丈夫、心配しないで」
僕達は全員無事な事を確認すると、
目の前の爆発の中心にいたデーモンは既に死に絶えていた。
そして、魔法を放ったと思われる魔物が少し奥の方に立っていた。
いや、あれは魔物というか――
「<魔王の影>?」
以前見た<影>とは姿形は違う、以前は人型だったが今回はさっきのデーモンの姿に似ている。
しかし真っ黒で顔が無いことは共通している。
「こ、こいつが――!」「くっ!」
今戦うのは不味い、こっちにはまだ意識を失った女の子が――
しかし<影>はそんなのをお構いなしに言葉を紡いだ。
『
<魔法の影>は殆ど無詠唱でこちらに上級魔法を放ってきた。
僕は咄嗟に前に出て魔法を受け止めるが、あまりの電撃に意識を失いそうになる。
「ぐうううううううっ!」
「レイ!」「レイ様!」
痛いがまだ何とか耐えられる。だが、奴はまた詠唱を始めている。
流石に二発は耐えられない。このままでは全滅してしまう。
「みんな、私に掴まって!!」
僕の傍まで来ていた姉さんは言った。
僕達はその言葉に従い、姉さんの服や手を掴んだ。
『
ほぼ同時に、敵の上級魔法が発動、僕らの周囲に赤い霧が立ち込め――
爆発寸前でその場を<空間転移>で逃れることが出来た。
◆
そして、その場から百メートルほど離れた所に着地した。
同時に、僕達がさっきまで居た場所から凄まじい爆発音が聞こえた。
<魔王の影>が放った上級魔法がさく裂したのだろう。
「……ふぅ、危なかったわね」
「助かった……うっ!」
流石にさっきの電撃魔法は効いた。僕はその場で膝を付いてしまう。
「れ、レイくん!回復魔法を使うわね!」
姉さんは女の子をレベッカに預けて僕を回復してくれた。
そして少ししてから僕はようやく動けるようになった。
「もう大丈夫だよ。――敵の様子は?」
エミリアは警戒して周囲を魔法で探るが反応は特に無かった。
「反応はありませんでしたが、どこから来るか分かりません。
それに今は戦闘は難しいでしょう、このまま静かに逃げましょう」
「分かった、女の子は僕が預かるよ」
僕はレベッカから女の子を預かり背中におぶった。
その後、周囲を警戒しつつ僕達は途中の村で女の子を送り届けて、
そこで女の子はようやく意識を取り戻した。
どうやらあの村の村長の娘だったらしい。
僕達は村長さんと女の子からお礼の言葉と、ささやかなお礼を頂いて村を後にした。
それから何事もなく二時間ほどでゼロタウンにようやく帰還し、その頃には既に日は落ちていた。
僕達は今日の出来事をギルドに報告してから拠点へ戻った。
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