第90話 最終階層 その2
引き続き僕たちは地下十階を攻略する。
「さっきの宝箱に入ってこれって何なのかな?」
僕は
黄色い液体の入ったフラスコ瓶をエミリアに見せる。
「――!これ、<万能ポーション>じゃないですか!」
「万能?」
エミリアは少し興奮して言った。
「これを全部飲むだけで傷も治り魔法力も全快する凄い薬です!」
おお、それは確かに凄いかも……!
「他にも<魔法の霊薬>とか<中級回復ポーション>とか、
確かにミリクの言う通り、便利な消費アイテムが沢山置いてあったわね」
反面、強力なレア装備とかは今のところない。
「まぁ助かるは助かるのですが……」
レベッカはそう言いつつ微妙な顔をしている。
便利ではあるけど、<万能ポーション>以外は別にレアではないからね。
「でも便利だし持って帰ろうよ」
「わかりました」
それから更に進み、途中何度か
「うわっ、あの鎧がまたいるよ!?」
今度は他の魔物と一緒にダンジョンをうろついていた。
「いえ、お待ちください――。あの魔物、装備が違うような……」
レベッカが言うように、確かに装備してる鎧も盾も妙にランクが落ちている気がする。
「ちょっと試してみましょうか、
エミリアは<動く鎧>のみをピンポイントで狙って攻撃した。すると動く鎧は同じように盾を構えるが、そのまま抵抗できずに一撃で溶かされて倒れてしまった。
「よわっ……」
「あの鎧だけ特別だったみたいね……」
以降、特に苦戦する事もなく順調に攻略を進めていった。
その後、更に下に降りる階段が見つかり降りていくと再び似たような迷宮が広がっていた。
「ここ地下十一階って考えていいのかな?」
「普通に考えればそうなんでしょうけど、
このダンジョン景色が変わらない限りは同じ階層の扱いみたいです」
地下七階も下に降りる階段があったけど七階扱いだった。
「つまり、ここも引き続き十階ってことなのね……長いわ」
姉さんが疲れた顔で言う。
確かにここまでずっと同じ風景が続いているので飽きてきた。
「とにかく進んでみるしかないね」
僕達はそのまま進んでいくことにした。
「さっきの戦いの話だけど、エミリアの魔法の詠唱速度上がってない?」
ボス扱いの
上級魔法を随分早く詠唱していたように見えた。
「ドラゴン料理を毎日食べてました。
威力も詠唱速度もあがったのかもしれません」
あの肉、魔力が上がるとは聞いたけどそんな効果あるのか……。
「多分
となるとエミリア以外の僕らもかなり魔法力の上限が上がっていそうだ。
しばらく何度か戦闘を繰り返しながら進むと、数度目の別れ道があった。
「ここはわたくしにお任せください」
レベッカは前に出て、跪いてまた手を合わせて祈り始めた。
いつか見た、ミリク様に答えを教えてもらう儀式だろう。
「まぁここのダンジョン主がミリクさんなわけだけど」
「そりゃあ答えも知ってるわよね……」
僕達はレベッカが祈ってる後ろでボソボソと話していたのだが――
「分かりました、右側には宝箱、左は魔物ハウス、正面は正規ルートだそうです」
随分具体的なルートを教えてもらったようだ。
「それなら右に行こうか、宝箱あるみたいだし」
僕達はお告げの通りに右へ向かうと確かに宝箱が置かれていた。
その周りは少し広くなっているが、行き止まりのようだ。
「
エミリアは魔法を唱えて宝箱の罠をチェックする。
―宝箱は赤く光っている―
「普通に罠は設置されてるのか……」
「<呪いの書>や<パンドラの箱>ではないと思いますが、一応……」
エミリアは引き続き魔法を唱える。
「
エミリアの魔法が発動、すると宝箱が勝手に開いた。
「あ、しまった」
エミリアはバツが悪そうに呟いた。
「どうしたの?」
「どうやら解除に失敗したみたいです、ごめんなさい」
ここまでエミリアは一度も失敗したことなかったが、初めて失敗した。
勝手に開いた宝箱から何かが急に飛び出してきた。
何かと思い、僕たちは後ろに下がって警戒すると、そこには二つの首を持ったドラゴンが居た。
「レイ様、このドラゴンは<ツインドラゴン>です!!」
「えぇ!?」
そのドラゴンは体長八メートルはありそうなのだが、どうやって宝箱に入っていたのだろうか。
「うそっ、ドラゴン!?」
「これは手強そうですね……!?」
僕達は距離を取り警戒すると、二股のドラゴンの口から氷と炎のブレスを繰り出してきた。
「うわっ!」「きゃっ!?」
咄嗟にレベッカが前に盾を置いたことでブレスの威力を軽減できたが、
どっちの頭もキッズ以上の威力だ。
僕は自身と周囲に回復魔法を使いながら姉さんに指示する。
「姉さん、防御魔法お願い」
「うん、
<極光の護り>はブレス攻撃を軽減する魔法だ。これでかなり耐性は付いたはずだが……。
「流石にこの威力だとキツイわね……」
もう一度ブレスを吐かれて十分な軽減効果は確認できたが、
無効化とはいかなかった。このままでは一方的なので僕たちは攻撃に転じる。
「
炎を纏った僕の剣の一撃を片方の頭にぶつけるが、やはり固い。
少しは傷はついて怯んだものの、まだまだ倒せそうに無さそうだ。
「
「
エミリアとレベッカの魔法攻撃がさく裂するが、ダメージはあっても弱点とまではいかない。
「やっぱりドラゴンは固いね!!」
僕はドラゴンの爪の攻撃を剣で凌ぎながら、敵を抑え込む。
「みんな、伏せて! レイくんは横に逃げて!」
後ろから姉さんの声が飛んでくる、僕は指示通りに左に逃げる。
エミリア達は言われた通りに伏せたようだ。
姉さんは両手を突き出し重ねて手のひらを敵に向けながら魔法を発動した。
「
姉さんの重ねた手のひらから大きな魔力の弾が飛び出し、轟音を上げながら<ツインドラゴン>にぶつかった。
『グギャアアアアアム!!』
顔面からモロにぶつかったドラゴンは魔力弾でそのまま壁まで引き摺られて倒れた。
「姉さん、今の魔法って……」
「私って他の攻撃魔法使えないから
いや、凄すぎるでしょ!! あれだけ苦労して倒したドラゴンが一発で吹っ飛んだよ?
「すごいです、ベルフラウ様」
「お見事です……とんでもないごり押し魔法ですね……」
エミリアとレベッカも驚いているようだ。
「ただ、結構魔法力消費しちゃうみたい。<魔法の矢>30発分くらい」
燃費悪いなぁ。それでも上級魔法の事を思えばマシなくらいだけど、
姉さんはヒーラーだから節約した方が良い。
「凄い魔法だけど、乱発は避けた方が良さそうだね」
「うん分かった」
さっき倒した<ツインドラゴン>を見ると、
既に姿がなく魔石と何かの指輪が転がっていた。
「あれ、ドラゴンなのに消えるんだ」
「<ツインドラゴン>は魔物扱いみたいですね」
「残念です、良い素材なのに」
ややこしいな……。また剥ぎ取りするの面倒だからいいけど。
「それで、この指輪は……と」
エミリアは魔石と指輪を拾い上げ、指輪に
「おお、これは良いですねぇ」
「どんな指輪だったの?エミリアちゃん?」
「装備すると魔法力と魔力が底上げされて、更に魔法力が少しずつ回復する魔道具のようです」
「おお、それは凄いねー」
魔法職には嬉しい効果だ。特にエミリアと相性が良さそう。
「じゃあエミリアが使うといいよ」
「いいのですか!?」とエミリアが目を輝かせる。
「エミリアが一番使いこなせそうだし」
「ありがとうございます、えへへー」
エミリアが凄く嬉しそうだ。可愛い、抱きしめたい。
そして僕たちは地下十階の攻略を継続する。
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