第31話 作戦会議
ゴブリン召喚士相手に逃げ帰った次の日
あの後、全員疲労していたため、その日は帰宅してすぐに解散になった。
そして冒険者ギルドにて
僕たちは担当のギルド受付嬢のミライさんと話していた。
「……なるほど、召喚士と遭遇してよく無事に帰ってきてくれました」
僕たちは昨日、依頼目的の場所で召喚士と遭遇し戦闘になったことを伝えた。
話の通り奴は召喚魔法だけでなく攻撃魔法を使用し、他にも多様な魔法を使用する強敵だった。
しかし他にも厄介な点があった。
「奴に剣や弓で攻撃したのにみえない壁で弾かれてしまったんです…」
最初は油断していたのか、レベッカの攻撃が一度だけ通ったがそれ以降は全部防がれてしまっていた。
「ちょっとこちらでも調べてみますね」といってミライさんは行ってしまった。
◆
二時間後――
ようやくミライさんが戻ってきた。
「お待たせしましたー。少し長かったですね、ごめんなさい」
「二時間も待たせて少しとは中々大物ですね、ミライさん」
エミリアの毒が強い。
「それで、どうでしたか?」
「はい、それらしい魔法か何がないかと調べたのですが、一つだけありました。
以前に魔道具で攻撃を無効化する指輪を所持していた方がいまして、それに近い状態かなと思います」
「魔道具?そういえば……」
エミリアが時間稼ぎをしていた時、召喚士は確かに右手に何かを付けていたように思った。
(集中しててすっかり頭から抜けていたけど…)
「以前冒険者ギルドに加入していた方に
任意のタイミングで魔法のダメージを軽減するような魔道具だったと思います。
なので、似たような魔道具ではないかとの推測になりますが、少し根拠が薄いですね」
ここでエミリアが質問した。
「その魔道具に何か対策とかは出来ませんか?」
「彼が持っていた魔道具と同じ性能であるなら、使用の度に
『解除』の効果は分からないけど、推測は出来る。
おそらく『強化魔法』や『防御魔法』を解除するための魔法だろう。
そこまで話してから僕たちは冒険者ギルドを出た。
「今回は依頼を受けないの?」
昨日の話だと今日も依頼を受けると言っていたが、今日は確認すらしかなかった。
「昨日の今日ですからね、それよりちょっと商業区の方へ行きましょう」
そう言ってエミリアに付いて行った僕たち3人が案内されたのはいつぞやの料理店だった。
「レイさま、ここは以前に来たことがありますよね」
「魔物料理のお店だね、結構な高級店だったと思うんだけど」
エミリアがお駄賃くれてからレベッカと二人で行ったんだっけ。美味しかったなぁ。
「レイくん、お姉ちゃんが知らないうちにレベッカさんとデートしてたの?」
ギクッ!
「それで、何でここに?」
運ばれてきた料理を食べてからようやく話を始める。
別に
「今回は他の冒険者に聞かれたくない話なんです。情報アドバンテージですね」
「じょ、じょうほおあどばんてーじ…ですか」
レベッカかわいい。なでなで。
「れ、レイさま…はずかしいです…」
「エミリアさん、もしかして召喚士を私たちで倒そうって思ってる?」
姉さんの質問にエミリアは頷く。
「そのつもりです。レイ、嫌そうな顔しないで!」
顔に出てしまったか。
「ですが勝ち目はあると思います。昨日得た情報を共有しましょうか。私が
エミリアはそう言って僕たちに情報を記した紙を見せてくれた。
個体名:ゴブリン召喚士 種別:ゴブリン
HP180/200 MP150/300 攻撃力70 防御力50 魔法防御力70
所持技能:詠唱Lv10 接続点召喚Lv?? 魔法封じ無効
所持魔法:初級攻撃魔法Lv10 中級攻撃魔法Lv8 回復魔法Lv3 その他魔法Lv3
右手で物理攻撃を無効化、左手で召喚術を使用する。
「これが昨日のデータです。
逃走時のデータなので既に相手の
以前アドレ―さんが戦った<レッサーデーモン>のステータスは確認して無かったが、おそらくデーモンよりは低いだろう。代わりに魔法関連のステータスが高いといった感じか。
「魔力を消耗してるけど、やっぱりあの時の指輪のせいなんだろうか」
「レイ、心当たりがあるのですか?」
僕は昨日の戦いで戦闘前に召喚士が右手に指輪を付けていたことをみんなに使えた。
「なるほど…」
「となると、ミライさんの情報がおそらく正しいのでしょう。
接続点召喚と物理無効化する右手の効果を複数回使用すると敵も厳しいのではと思います」
ミライさんの話では魔法を軽減する魔道具は使うごとに魔力を消耗すると言っていた。あの召喚士も似たようなものであればこの消耗も頷けるかもしれない。それによく考えれば奴は突然あの場所に現れたのだから、戦闘前から接続点召喚を使っていたという事になる。
確かにこれであるなら戦闘時間を延ばして連戦をすればいずれ追い詰められるかもしれない。
「エミリアさま、それだけで勝ち切れるのでしょうか……?
召喚士の
「そうですねぇ、善戦出来てたのはレイくんが頑張って召喚を封じてたのも理由ね」
前回は奇襲で最初有利に進めていたのも理由だ。同じ手が何度も通じるとは思えない。
「そうだよね、次はこっちを発見次第直ぐ召喚魔法を使ってくる可能性がある」
そこをエミリアはどう考えてるのか。
「そこはほら、気合で」
「みんな、解散で」「そうしましょうか」
僕達は席を立って帰ろうとするが、エミリアに慌てて引き止められる。
「冗談ですから!」
僕は再び席に着く。
「レイは前に買った魔道具持ってますか?」
「うん、使うつもりは無かったけどね」
あの『腕輪』を嵌めることさえ出来ればあいつの魔力をかなり奪えるはずだ。
「でも、多分そのままじゃ通用しないよ、右手のバリアをどうにかしないと」
「あえて何度も使わせるのがいいかと思います。レイとレベッカさんが攻撃を途切れさせず常に防御させれば、あっちはいずれ限界が来て強引に攻めてくるでしょう。そこが最大のチャンスです」
その時に、僕が持ってるあの『腕輪』を使えばいいって事か。
「召喚士本人の
今日か明日に戦えば全回復は出来ていない状態になると思います。
私もそうですがある程度魔力があって使い過ぎると全回復しないんですよ」
「その理屈だとエミリアも結構辛い状態じゃない?」
昨日かなリ使ってたと思う。
「前に買った<魔法の霊薬>と自分が作ったものがあるので私は大丈夫です」
「もし、仮に召喚を阻止できなくて大量に召喚された場合は?」
召喚士一人を相手にするのであれば、持久戦に持ち込めるかもしれないけど多数相手となるとこちらの方が危うい、というか絶対勝てない。
「……そうですね、その状況はかなり危ういのですが。
魔導書の力が今日から使えるようになったので、一度か二度くらいなら複数の相手を一気に倒しきれると思います」
その言葉を聞いてエミリアが集落をまるごと凍結させたことを思い出した。
「エミリアさま、それはもしかして集落の時と同じことをすると?」
「あれはもう二度とできないと思います。今回は新しい魔法を覚えたので、それを魔導書の力を込みにすれば雑魚を殲滅程度なら最低1回は可能です」
一回だけか…。
「更にもう1回使うなら霊薬での回復が必須ですね。
最初に大量展開してくれた方がこっちとしては有り難い状況かもしれません」
となると方針はある程度決まってくる。
僕たちは相談をして、召喚士の魔力が回復しきらないうちに勝負を決めることにした。
◆
「さて再戦行きますよ!」
「まさか昨日の今日で挑むことになるとは…」
僕たちは召喚士の昨日鉢合わせした場所に訪れていた。
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