第21話 お買い物タイム
ゴブリン討伐を終えてから――
「はい、討伐確認しました。では約束の報酬をお渡ししますね」
無事、以来の達成を確認して報酬の金貨2枚を貰うことが出来た。
「はぁー、大変だった」
「ふふふ、お疲れ様レイくん、とっても格好良かったよ」
テーブルでヘバってた僕の頭をナデナデする姉さん、気持ちいい…。
「レベッカさんの補助があったとはいえ中々に無茶しましたね…」
「弓使いのゴブリンがあれだけいるとキツい…」
レベッカのおかげで逃げ切るのだけは簡単だったけど、弓を回避できたのは運が良かった。
「最後は完全にレベッカさんのおかげでしたね」
正直、レベッカに掛けてもらった<矢避け>がなければ最後のは当たっていただろう。
「ありがとう、レベッカ」
「ふふふ、レイさまの勇気のおかげですよ」
「それで、報酬の金貨2枚も山分けという事で」
エミリアは自分の財布から小金貨と大銀貨を4枚取り出してそれぞれに分配する。
「皆さんのおかげでどうにか宿泊費を稼ぐことが出来ました、ありがとうございます…」
レベッカは丁寧にお辞儀をする。
「それで、レベッカに相談があるんだけど…」
僕は今回は早めに切り出した。
「はい?」
「一緒にパーティ組まない?」
「わ、わたくしとでも良いのですか?」
今回の作戦はレベッカがいないと成立しなかったし、レベッカ自身も頼りになった。
それ以上に、僕はレベッカの事がかなり気になってしまっている。
(色々心配なんだよね…)
「姉さんたちはどう?」と一応聞いてみるが、
「よろしくね、レベッカちゃん!」
「むしろこっちから誘いたかったくらいです、よろしくお願いしますね」
「あ、ありがとうございます、みなさま!レベッカ、誠心誠意、尽くします!」
「いや、そこまでしなくても……」
この子、難しい言葉知ってるなぁ…。
「レベッカ、よろしくね」
「はい!」
その後、レベッカの宿を取りなおしに行った。
「ちゃんと自分で支払うなら何の問題もない。冷たく言って悪かったな、嬢ちゃん」
「いえ、そんなことは…」
◆
それから1時間ほど休憩を入れてからまた宿の前に集合した。
「エミリア、今回はどこに行くの?」
「武具店に行こうかと、戦利品も売りに行きたいです」
先のゴブリン討伐でいくつかまだ使えそうなゴブリンの武器があった。
少し短めの鉄の剣と質素な弓だ。
木の矢もあったのだが、レベッカが欲しいということで渡した。
「レアリティはかなり低いですし、はした金でしょうけどね」
あそこの親父はケチですからと毒を吐く。前に何かあったの?
「レイの装備も新調した方がいいかと思います。ちょっと危なかったですよ」
言われてみれば確かに…今回は運が良かったけど次はどうなるか分からない。
僕たちは四人で噴水広場にある商業区への向かう。商業区の方に入るのは初めてだ。
まだ街に来てから二日目なので殆ど散策していないが、こちらにも色々なお店が建ち並んでいる。
「……」
冒険者をよく見かけるなぁ…。
大きな剣を持った男性や固そうな鎧を着込んだ戦士とすれ違う。
中にはエミリアのようなとんがり帽子を被った人もいた。やっぱり魔法使いかな。
「あ、レイさまっ…すいません」
「ん、いいよ」
人ごみに紛れそうなので隣にいるレベッカの手を握って歩く。迷子になったら大変だ。
「着きました。ここですよ」
「おー…」
すごい、いかにも剣とか鎧とかカッコいい武器が並んでいる。
ここのお店や武器と防具が両方売られているみたいだ。
「これを売却したいのですが」
「おおん?嬢ちゃん、なんだいこのショボイ剣と…弓か、これ?」
「ゴブリンから剥ぎ取りました」
エミリアは戦利品の売却で店主と交渉している。
「んー、私としてはあんまり武骨な装備は…」
姉さんもさっきから装備を見回ってるけどあまり気に入ったものは無いようだ。
「姉さん、重い装備とか付けられそう?」
「むっ、舐めないでくださいね!私だってこんな剣とかだって……うぅ」
持ててないじゃん…。
「
「むり……」
女神さまだからって強いわけじゃないんだね…。
レベッカはどうしているんだろう?
「レベッカ、何か良いの見つかった?」
「レイさま、こういうものがありまして」
レベッカの視線の先を見ると、大きな盾が置いてあった。
「レベッカにはとても持てないと思う」
「レベッカの場合、持ち運ぶ必要はないので…使う時だけ前に出す感じで」
そういう使い方もあるのか。しかしアンバランス過ぎるような……。
僕らのパーティって考えてみると、
僕→前衛 姉さん→後衛 エミリア→後衛 レベッカ→後衛。
そもそも前に立てるの僕しか居ない。
か弱そうな女の子ばっかりだから仕方ないけど、その分僕がダメージ受けやすい。
となると、攻撃を防ぐ鎧とか盾とかが良いのかな?
「こんなもんに銀貨一枚とか出せねえよ!」
「何でですか!ちゃんと刃物付いてますよ!武器として使えるじゃないですか!」
「こんな鈍らじゃあ打ち直してもガラクタにしかならねぇよ!」
エミリアと店主が揉めてるんだけど大丈夫かな…。
近くにあった頑丈そうな盾を持ち上げてみる。
大きさとしては70cmくらいだろうけど、手に持とうとするとかなり負担だ。
「片手ってことを考えると間違いなく筋肉痛になりそう…」
これを持ちながら戦うのは難しそうだ。
「これは…さっきよりは軽いかな」
大体50cmもないくらいの円形の盾だ。裏に取っ手が付いてて持ちやすそうだ。
「これ打撃武器に出来そうだけど、剣両手で持ちたい時もあるんだよね…」
そう考えるとやっぱり盾は邪魔に感じるかな……と、考えていると良さそうなのを見つけた。
「これって…」
さっきの盾よりは少し小型でちょっと軽い。
防御面は若干乏しく思えるけど、取っ手の部分が特殊だ。
籠手と盾を合わせたような感じで、さっきの盾のように丸くて少し楕円になっている。
(腕に固定できるってのが良い感じだ、これにしよう)
「次は鎧だけど、これが良いかな」
プレートアーマーの胸や肩、脇腹などを重点的に守る鎧でそこまで重くは無さそう。
背中も以前よりずっと頑丈そうだ。ゴブリンの矢を受けても致命的とまではならないだろう。
全身鎧とかもあるんだけどとても自分だとまともに動けそうにない。
「武器は…」
目に留まったものが一つあった。
『これは魔法が掛かっており、通常より切れ味が鋭いものになっています』
見た目は幅広のブロードソードと言った感じだろうか。長すぎもせず比較的軽い武器だ。
「これ良さそう……値段は……金貨10枚!?」
流石に買えそうにない。今回は諦めることにしよう。
結局今回は盾と鎧だけに絞ることにした。
それでも合計の金額は合わせて金貨4枚と高額だった。
盾は腕に固定用のリストを嵌めて盾をその上に固定するものだった。
見た目は結構ゴツく慣れが必要そうだが、思ったより頑丈そうで良い感じだ。
鎧の方は実際に装備させてもらうと頑丈ではあったがやっぱり重かった。
「次は魔道具屋に行きましょう」
エミリアはこっちが本命だったようだ。結局さっきの交渉は銅貨5枚で買いたたかれたらしい。
「あの親父、今度は目にモノ見せてくれます…」
どうもあの店では毎回二束三文で戦利品を売却する羽目になってるらしい。
「レイさま、体がフラフラとしておりますが大丈夫でございますか?」
「大丈夫、ちょっと着慣れてない装備ってだけだから…」
今までは少し頑丈なだけの服だったのが、鉄装備の鎧に変えたのだからか重さを感じる。
これでもし全身鎧なんて選んでいたならどうなっていたのだろうか。
「今は辛いかもしれないけど、多分一週間もすれば……」
あまり自信は無いけど、慣れるといいなぁ…。
「大丈夫?お姉ちゃんがおんぶしてあげよっか?」
「気持ちは嬉しいけど、それをするとお姉ちゃんが潰れちゃうから…」
「すみませーん」
僕たちはエミリアに連れられて魔道具屋に入っていった。
「エミリア、魔道具屋って具体的に何が売ってるのかな?」
魔法っぽいアイテムが売られてるのはなんとなくわかる。
「良い質問ですね
ここは私が求める薬の素材や時折貴重な魔法アイテムが売られているのです」
「薬の材料?」
「例えば調合すれば魔力が回復する薬や、一時的に魔法効果を付与する飲み薬、
それ以外にも今日レイに渡した薬などの材料も手に入ったりするのです」
あの匂い薬の材料はここで調達したのか…。
「お姉ちゃんとしては魔法アイテムって方に興味がありますねー」
「そちらの方はたまに良いものが入荷していることがあります
興味があるなら時々お店に寄ってみると良いですよ、掘り出し物が見つかるかも」
「レベッカも魔法アイテムの方に興味があります…」
実を言うと僕も魔法アイテムにはかなり興味があったりする。
ただ、さっき金貨4枚も使ってしまったためあまり無駄遣いは出来ない。
お店の中はというとかなり怪しい雰囲気が漂っていた。
一言で言えば『魔女の家』という感じだ。色々戸棚に入っているのだが、
中には怪しい薬やトカゲの標本、人の足の形をした植物などとオカルトチックなモノが置かれている。
それに、何より……
「ひーひっひっひ……ヒイーイッヒッヒ!」
奥にいるもう百歳とか平気で超えてそうな老婆が紫色になった何かをかき混ぜている。
…何かちょっと怖くなってきた。メルヘンなお店かと思っていたのに…。
「おんやぁ‥そこの、この鍋が気になるのかい…?」
ヒイッ…!気付かれた……!?
「心配することないさぁ、これはただの胃薬だからねぇ‥」
ただの胃薬なの!?何で紫色で発光してるんだよ!どうみてもおかしいだろ!
いきなりペースを乱されたけど折角なので色々物色してみる。
エミリアは薬の素材を買いに来たらしい。メモを見ながら分量を量って材料を集めている。
レベッカは魔法アイテム、姉さんは何かの本を見ていた。
「姉さん、何を見てるの?」
「これね、多分魔導書だと思うの」
え、魔導書?それってエミリアが持っているような?
「ううん、あんな凄いのじゃなくて、簡単に言えば魔法を覚えるための教科書みたいな本」
「具体的にはどういう内容の本なの?」
「ええっとね、これは回復系の魔法とかが書かれているみたいね」
回復魔法…そういえば、僕らは誰も使えないな。
「うん、私はこれが気に入ったからこれを買おうかな」
姉さんもしかして回復魔法覚えたいんだろうか。
「私が出来ることって限定的だからね、ここでお姉ちゃんとして頑張らないと!」
がんばろー、むん!と張り切る元女神のお姉ちゃんだった。
「レベッカは何を見てるの…?」
「ああ、丁度良い所に。レイさまに良さそうな魔法アイテムがありましたので見ておりました」
え、僕に?
「どんな魔法アイテムなの?」
「こちらは<
見た目、緑色で羽のようなデザインがされて靴だ。
「でも、それってレベッカに掛けてもらえば良いんじゃ…」
「その通りなのですが、強化魔法は途中で効果が切れてしまいます。
それに魔法アイテムと魔法は効果が重複するものでして、より大きな効果を期待できます。
特に今レイさまは重たい鎧を装備してお辛い様子…いかがでしょうか」
そ、それを言われてしまうと…。
少し考えて、僕は『疾風の靴』を老婆の元へ持って行った。
「あの、これをください…」
「おやぁ……?それが欲しいのかぃ…?イーヒッヒッヒ!」
やっぱり怖い、誰か助けて…
「金貨8枚だけどいいのかぇ?」
「たっか!!」
驚いて大きな声を出してしまう。
「それくらいの魔法が付いてるなら相場としては妥当なくらいさぁ……ヒッヒ!」
「うぐぐ……」
「……そんなに財布が辛いなら少しだけ割引してもいいよ?」
「ほ、本当ですか!?」
「た・だ・し! 私がギルドに依頼する仕事を進んで受けに行くのが条件さ。
時にはお前さんを名指しにすると思うが…やるかい?」
「む、難しいのはちょっと…」
「いんやぁ、私が依頼するのは主に採取だからねぇ
報酬があまり多くないから依頼を貼っても誰もやりたがらないだけさ。
それをお前さんがこなしてくれるなら、半額にしてやろう」
「は、半額!?わ、分かりました!!」
「毎度ぉ…ひっひっひっ…お互い良い取引だったと思える関係を作ろうじゃないかぁ‥」
こうして僕は一日で大量の金銭を使ってしまった…。
ちなみにエミリアは薬の材料をごっそり購入、姉さんは魔導書数冊と魔法アイテム一つ。
レベッカは持ち合わせが少ないので今回は購入を見合わせた。
New (R+)アームバックラー 金貨1枚
New (R)ブレストプレート(上) 金貨3枚
New (SR)疾風の靴 金貨4枚(相場は金貨8枚)
残りの残額は金貨1枚と小金貨と銅貨数枚(あとは食費で消えました)。
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