第10話 風邪引いた

 あらすじ

 偽姉が真姉になった


 あの後――

 雨降ってた中二人とも立ち尽くしてたのでずぶ濡れになって帰ってきた。


「「ただいまー」」

「おかえりなさーい、って二人ともびしょ濡れじゃあないですか!」

 ずぶ濡れだったことをエミリアに怒られた後に、

 アドレ―さんと村の人が湖から水を沢山運んできてくれた。

 その後に村で炎魔法が使える人が総出でお湯を沸かしてくれてそこに二人して入りました。


 その後、暫く寝込んで、次の日の朝になった。


  ◆


「おはよーございます、レイくん!」

 いきなりノックも無しに女神さま、じゃない真の姉になったフラウ姉さんが入ってきた。


「姉さん…大分元気だね…」

 僕、割とまだ体調悪いんだけど…。


「フラウさん、レイはまだ調子悪そうですからもうちょっと後にしたらどうですか…?」

 その後にゲンナリとした顔をしたエミリアが部屋に入ってきた。


「レイくん、もしかしてまだ体調悪い?」

 あれだけずぶ濡れで突っ立ってたら普通風邪ひいて寝込むよ。


「うん、ちょっとまだ悪い……もう少し寝かせてほしいです」

 むしろ何で姉さんそんな元気なの?女神だから?でも女神辞めたよね。

「ほら~だからフラウさんもまだ寝ていましょうね~」


 その後お姉ちゃんはエミリアに部屋に連れ戻された。

 それでも言うことを聞かないので、外側から鍵を掛けて姉さんは部屋の中に監禁されました。


 その後、エミリアが戻ってきた。

「さて、レイさん。ちょっとお熱を測りましょうか?」と看護師さんみたいなことを言う。

「えっと、熱ってどう測るの?」

「こうやってやります。 <能力透視 Lv3>アナライズ

 ま、魔法にそんな使い方が…?


「透視完了…と、熱は37.5℃ですね」

 しかも早い。元の世界の体温計よりも性能良いんじゃないだろうか。


「その魔法って相手の能力見る魔法じゃないの…?」

「調べたい場所を制限するとこういう使い方も出来るんですよ」

 魔法便利過ぎるだろ…。

 てっきり、おでこを当てて熱を測ったりとかするのかと思った。

(別に期待してたわけじゃないけど……)


「まだ平熱より全然高いですね。薬を飲んで今日一日まだ安静にしていましょうね」

 むしろお医者さんみたいだ。

「エミリア先生、本当にご迷惑をおかけしました」


「だれが先生ですか、ご飯を作ったので持ってきますけど食べられそうですか?」


「うん、多分食べられると思う」

 脂っこいものは無理そうだけど、おかゆとかなら…おかゆってあるの?

 エミリアは僕の言葉を聞くなり、直ぐに持ってきてくれた。


「はい、どうぞー」

 と、蓋を開けるとそれはやっぱりおかゆだった。この世界、料理は元の世界に似てる。


「ありがとう、じゃあ頂きます」

 一口食べると、程よく塩加減が利いている。


「あ~ん、ってしてあげましょうか?」

 同年代か年下の女の子にそれをやってもらうのは…。


「こういうのは病気の時くらいしかして貰えないですよ?」

 普段なら恥ずかしいって言うところだけど、今は本当に調子が悪い。

 だから僕は素直に甘えることにした。

「う、じゃあちょっとだけ…」


 そう言って少しだけ「あーん」してもらった。

 エミリアは火傷しないように少し冷まして口に運んでくれたり、時折頬の汗を拭いてくれたり…。

(熱に浮かされてるせいか、ドキドキする……)


 その後は一緒に持ってきてくれた白湯も時々飲んで時間を掛けて食べさせてくれた。


「ごちそうさまでした」

「ハイお粗末様です、そこに水とお薬置いときますね」

 薬とコップ以外を手早く片付けたエミリアはそのまま台所に持って行った…。


「エミリアって要領良いし、面倒見も良いよね…」

 自分よりどうみても年下に見えるのに、自分とは大違いだ。


「はぁ…もうダメ」

 さっきから顔が赤い、もしかしたら熱が上がったかも…。

 エミリアに言われた通り薬を飲んで、ベッドに横になって随分また眠っていた。

 それから夕方まで僕は眠っていた。


  ◆


「ん……んーーっと」

 腕を伸ばして伸びをすると、朝より随分体が軽くなっていた。


「これならもう大丈夫かな?」と思い、ベッドから出て着替える。

 下に降りると、アドレ―さんやエミリアが食堂のテーブルで談話をしていた。


「おう、坊主、もう大丈夫か?」

「はい、アドレ―さん、ご迷惑をお掛けしました」

 びしょ濡れになった時に村の人みんなに迷惑かけたから、本当に反省してる。


「一応もう一回熱測っておきましょうか<能力透視 Lv3>アナライズ

 手慣れてきたのか、魔法発動の速度がどんどん早くなってる気がする。


「36.5℃、もう大丈夫そうですね。ただ今日は鍛錬は無しですよ、アドレ―さん?」

「そうだな、今日は止めとくか」

 と言ってアドレーさんは席を立つ、もしかして僕を待っていてくれたのかな?


「すみません、明日から復帰できると思うんで」

「おう、また明日朝来るからそれまでに治しておけよ、それじゃあな」


 アドレ―さんを入り口まで見送ると、フラウ姉さんが居ないことに気付いた。


「姉さんは?」

「あ、そうですね、そろそろ監禁から解きましょうか」

 あの後ずっと閉じ込められていたのか。


「レイくん、元気になってよかったですねー!」

 部屋を開けたら早速姉さんが抱き着いてきた。熱で二人とも汗かいてたから正直うっとおしい。


「フラウさん、自分がまだ熱あるのに看病しようとするからから困りますよ」

 だから姉さんとエミリアが来たとき、エミリアがゲンナリとしてたんだね。


 二人とも元気になったので普通の夕食を食べることになった。


「そうだ、レイ。鍛錬は難しいですが、ちょっとした魔法の習得は出来ますよね」

 食事中に、エミリアはこのようなことを切り出した。

「ちょっとした魔法?」

 今使えるのがマジックアローだけだから、使える魔法が増えるのは嬉しい。

「はい、初歩魔法なんですがちょっと使ってみますね」


 そういうとエミリアは指を一本立てて

<点火>ライト」と唱えた。すると、指先からライターのような火が灯った。

「レイも一度やってみてください、フラウさんもやってみたらどうですか?」

 言われて、フラウ姉さんと顔を見合わせて頷くと僕も唱えてみた。


「「<点火>ライト」」

 すると、二人とも問題なく指に火が灯った……のだが、


「ちょ!? 姉さん、火が大きすぎ!」

 僕は本当にライター程度の火の大きさだったが、姉さんは上に2メートルくらいの火が出ている。


「え?わぁぁ、ご、ごめんなさい!これどうやって消すの!?」

 外ならともかくここは室内。下手すると天井を焼いて火事になるためシャレにならない。


「ゆ、指に息を吹けば消えるんですけど、やってみてください!」

 姉さんは指にふーふーするが、いかんせん火が大きすぎて全然消えない。


「仕方ありません、フラウさんちょっと覚悟してください! <初級氷魔法>アイス!」

「きゃああああああ!!指がぁ!」

 火は消化されたのだがフラウ姉さんの指先も一緒に凍ってしまったので僕の<点火>で溶かした。


「うう、酷い目にあったよぉレイくん…」

 姉さんは指が冷え冷えのままだったので、水を汲んで火で温めてから指を温水に付けていた。


「あー、ごめんなさいフラウさん、私も咄嗟だったので…」

「うん、大丈夫です…私の方こそすみません……」


 どうもフラウ姉さんの魔法力はちょっと桁が違うらしい。ただ魔法の扱いは素人なので全く調整が出来ないそうだ。

(流石元女神さま…)

 その凄さのせいで危うく火事になりそうだったので、フラウ姉さんはしばらく魔法の使用禁止になった。


<レイは点火の魔法を獲得>

<レイは初級攻撃魔法を習得可能になった>


 ひとまず騒ぎで中断してた食事を再開してから、僕達はちょっと村の入り口付近に出ていた。


  ◆


「初級攻撃魔法を習得できるようになったのでまずは簡単な二つを覚えましょうか」

 さきほど点火の魔法を使ったときに、攻撃魔法の習得条件を満たした。

<点火>は自然干渉魔法の基礎の基礎だから使えれば人によっては初級攻撃魔法も使えるのだとか。


「まず私が使いますね。 <初級炎魔法>ファイア

 エミリアがステッキを草原の方に向けて魔法を放つと、ステッキの先から炎の弾が飛び出し着弾した。

 着弾した周りに炎が飛び交い、少し草原が燃えている。

「で、次にこの魔法で消化します。 <初級氷魔法>アイス

 今度はステッキから氷は飛び出さず、ステッキの向く方向の狙った場所にそのまま氷が出現した。

 狙ったのか火が回ってた部分に氷が発生したので見事に鎮火している。

「レイさん、試しにやってみてください。あ、フラウさんはやらないでくださいね?」

「えっ?はい!」とフラウ姉さんは体を震わして反応した。


「よーし、<初級炎魔法>ファイア」ミス!

 う、上手くいかない…。指輪付けた左手で撃ったんだけど…。


「マジックアローや点火と比べると魔力消費が4倍なので少し集中するといいです」

 そ、そうなのか…意外と燃費悪いな。


「炎魔法は点火の上位互換のようなものです。その感覚で更に集中してみてください。」

 なるほど、さっきの点火は火を灯すような感覚だから分かりやすい。


 じゃあ普通に手から強めの炎を出す感じで…。

「………よし <初級炎魔法>ファイア

 今度はエミリアの炎の弾に比べると幾分か小さいが、見事に前方に飛んで着弾した。


「やった!」

「レイくんすごーい!」「お見事です!」

 二人ともに褒められてちょっと調子に乗った僕は次は氷の魔法を試す。


「よし、次!…………<初級氷魔法>アイス


「あ!それは……」とエミリアが反応したが、大丈夫、ちゃんと発動した…


「あれ?」「え?」「あーあ……」


 魔法はちゃんと発動したが、自分の発動した左腕の手首が凍っていた。


「ぎゃあああああああ!!」「れ、レイくーん!」

 そのあと、エミリアの炎魔法でゆっくり手首の氷を溶かしてもらいました。



「氷魔法は直接飛ばす魔法じゃないので炎魔法の感覚で出すとダメですよ」


「はい、すいません…」


 僕には氷魔法はまだ難しいということで炎魔法だけ練習することになった。

 何回か使ってみて、自分の魔力では<初級炎魔法>ファイア5発が限界だと分かった。


「初級攻撃魔法は最大5回、初歩魔法は最大20回と考えると分かりやすいです」

 なるほど、そういう感じで覚えよう。


「あと、何かクラクラするんだけど…?」

「お、レイも少しは魔力が付いてきた証拠ですね。

 魔法がほとんど使えない人はそんな副作用はありませんが、

 ある程度魔力が上がってくると使い過ぎた時に副作用が来るので注意して下さいね」

 副作用でこんな頭がクラクラするのか…。


「もし、エミリアが使い過ぎたらどうなるの?」

「暫く動けなくなります。だから魔法力を使い切るのは危ないんですよね…」

「き、気を付けます…」


<レイは初級炎魔法(ファイア)Lv1を獲得>

<レイはLv6に上がった>


  ◆


 ―――その日の就寝前


「レイくん、まだ起きてます?」

「姉さん、うん開けるよ」と部屋の扉を開くと…


 可愛らしいピンクのパジャマを着た元女神のお姉ちゃんが居た。

「一緒に寝ましょう?」

「あ、いや‥…流石にそれは…」

 というか、もう一着、黄色いパジャマ持ってるんだけどそれって…

「はい、正解です!レイくんのパジャマですよ、前にも言いましたよね?」

 確かに言ってたけど、え、それ着るの?


 断れないかと思ったけど、昨日本当の家族になったので今日だけは一緒に寝ることにした。

 ……下心とか無いから!


「もう”姉さん”でいいのかな?」

「うん、そうだよ?私はもう女神では無くて”レイくんのお姉さん”です」

「変な感じだね…」

「ふふふ、そうだね……でもこれで私が変にどっか行ったりしないから安心していいよ?」

 それは時々居なくなっていたりしたことだろうか?


「時々先輩から連絡が来ててね、覚悟が決まるまで引き伸ばしていたの」

 誰かと話してるように見えたからそうなんじゃないかとは思ってた。


「それで許可は貰えたの?」

「許可というか、女神を退職したって感じですねー」

「退職って…女神って社会人みたいなものなの?」

「うーん、どうだろ…一番上の人には絶対逆らえないのは似てるかな?」

「一番上って?」

「女神よりも上の神様、摂理とか言ったりするけど実際に会ったことはないの」

 要するに一番偉い神様ってことだろうか。


「その…女神を止める必要はあったの?」

「辞めないとずっと一緒に居られなかったから」

「それは……」


 僕の為にって事なのかな…。

 すると姉さんは僕の頭を撫でながら言った。


「そんな顔しないで、ね?私は全然後悔してないし、

 むしろ自分から進んでやったんだからレイくんが気にすることなんてないよ」

「でも……」

「それに女神ってそんなに良いものでも無いんですよ?

 凄い力とかありますけど、永遠に自由が無かったりしてとても不自由なんです」

「………永遠に?」

「そうです、女神は死ぬことは無いけど一生自由が無い。

 でも人間になれば寿命はあるけど、私の意思で先を決めることが出来るようになりました。

 女神の正装も返却したから多分権能は使えないだろうけど」

「もしかして最初に来ていた服の事?」

「うん、元人間になった今、あれを持ってても意味ないから」

 あの服、姉さんに似合ってたんだけどな……。

「あの服を着ているとね。

 普段は良いんだけど上の神様に逆らってるとどんどん負担が掛かっちゃって。

 実はあんまり着たくは無かったの」

 もしかして途中姉さんの体調が良くなかったのはそれが理由?

「まぁ、どのみち女神を引退したからあの服は着れませんから」


 その後、姉さんと色々な話をした。

 僕が生まれた時の話、天界での仕事の話など。

 そして夜遅くなったのでその日はもう休むことにした。


「じゃあおやすみ、レイくん」

「う、うん…おやすみ…」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……寝れるわけないじゃん」

 その後、眠るのに1時間くらい掛かった。



<レイとベルフラウは滅茶苦茶仲良くなった>

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