第9話 / 灯台に走る航路
ある朝、大学のポータルサイトを確認すると、気になる文言が並んでいた。
――【重要】「宇宙人」イジリについて
すぐさまクリックして内容に目を通す。
そこに書かれていたのは、以下のようなものだった。
――学生の皆さん、日々のオンライン授業お疲れ様です。この度こうして学生あてにお知らせを書いているのは他でもありません。
昨今、巷で話題になっているという「宇宙人」イジリについてです。
これはSNS上で密かに始まった動きで、次第に大きな声となり、ついには学校側にまでその噂が届いてきました。
最初は一人に対しての侮辱から投稿が始まったようですが、最近だと対象が拡大され様々な人たちが傷付いてしまうこととなっています。
その投稿は果たして多くの人を幸せにしているでしょうか。
確かに、SNSは自由に自分を発信し、拡散していける、素晴らしいツールだと思います。
しかし、このような使い方では、やがて無法地帯となり、サービス自体が終了してしまう可能性すらあります。
それはもちろん一つの可能性にすぎません。
それでも、自由だからこそ守らなければならないモノがあるのではないでしょうか。
これは、そういった当たり前を、自由を、今一度考える良い機会になるかもしれませんね。
あと補足しておきますと、別に犯人捜しをしたいという訳ではございません。
ただの注意喚起ですので、もしこういう行為をしている人がいるなら自分の胸に手を当てて立ち止まってみてほしいということです。
先生たちは皆、信じています。
オレは更なる気持ちよさを求めて、自分が不満に思っていることを呟くようになってもいた。
もう何でも良かった。ここに楽園があると知ったから、ここに救済の天国があると知ったから。
一つ良い兆候が見られれば、人はより多くの幸福を求める。
理解していても、求めることが止められなかった。
これまでの鬱憤は、十八年間の鬱憤は、簡単に清算できなかった。
自分のことを考えてくれる人がいて、自分のことを待ってくれる人がいて、自分と会話することを楽しみにしてくれる人がいて、そのどれもが刺激的で、オンラインなんて苦じゃなくなった。
どんどん会話を広げていき、面白いグループワークを演出していく。
自分の絶対的な支柱ができたから、何でも楽しむことができるようになっていった。
先生の話は『今さら』な内容だった。これは何のこともない道徳の話。
もう疾うにどうでもよくなっている。
自分はここに光を見出した。
これだけが確かなことなんだ。
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