第十一夜 4
「お呼びですか、大婆様」
入り、と呼ばれ障子を開けると、珍しく梅子一人だった。
「ゆきは、母親と同じ能力を持っているようですね」
花蓮ははい、と答えると、その場に正座する。なるべく目を合わせないようにしていた。
すると、梅子は立ち上がり、そばに寄って花蓮の手を握った。その手を何度もさする。皺が刻まれた手が立てるシュッシュッという音に花蓮はだんだん心が沈んでいく。また、厄介なことを頼まれる前触れだ。
「花蓮、あれをまたやってください。
さする力が強くなる。こすれて熱を帯びてくる。肌の熱さとうらはらに、心はだんだん冷えていく。目に入れるのが嫌で、花蓮はギュッとまぶたを閉じた。
「
急にさするのを止めると、梅子は花蓮の膝につっぷした。出たい出たいと泣き始める。子どものように泣きじゃくる老婆を見て、花蓮は、自分でもおぞましいと思うほどの嫌悪を感じた。
汚らわしい。
許されるなら、この老婆を払いのけてしまいたい。人をこんなに嫌っていいものだろうか……。
だがもうそれしか、考えられなかった。
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