第三夜 2
庭には平伏する白い狩衣の男。
さあっと一陣、風が庭のすすきをなでると、秋の虫が、何事もなかったかのように心地よく耳をくすぐり始めた。
「
「晴明」と呼ばれた男は
「聞かしておくれ」
「お人払いを」
幸子がそばのものを遠ざけるのを確認すると、晴明はおもむろに口を開いた。
「幸子様の
「兄は気ぃの短いお人ですから」
りん、と幸子の代わりに秋の虫が笑う。乾く唇を湿らせると、晴明は再び言った。
「忠明様がなさったことは、一種の呪い返しです。常であれば、ご自身には何事もないのですが」
御簾の向こうの気配がにじり寄った。
「何かあるのですか?」
「小野様についている呪術師のたちが悪い。命だけはお守りいたします。が、恐れながら報いは受けると」
鈴虫。松虫。
ふと、虫の音が止んだ。
「晴明殿、その報い、
「しかし……!」
「妾のような身分の低い貴族が、
晴明がなおも食い下がろうとしたが、幸子は身振りで止めた。
「これは、
晴明は黙って平伏するよりほかなかった。
すぐに術式が執り行われ、
そして――。
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