第140話 フロン海賊団の逃亡戦




 魔導馬車に乗り、全速で街道を走る海賊団達を、黒いもの…

 いや、もはや黒い洪水がフロン達の魔導馬車を追いかける。

 少しでも集中力を切らして、道から外れてスピードを落としたら、すぐに捕まるだろう。


 フロンは、魔導馬車の運転を部下に任せて、最後尾に座り、黒い洪水に攻撃を加える。

 効かないのは、わかっている。

 しかし、魔法を食っている時は少し止まるのである。


 時間稼ぎである。


 「ギャーーーーーーー」


 叫びながら、ファイヤーアローを乱射する。

 部下達も、怖いけど時間稼ぎの為にフロンが魔法を乱射しているのは、わかっている。

 部下達が、MPを回復しながら入れ代わり、使える攻撃魔法を撃つ!


 ファイヤーアロー


 ファイヤーボール


 アイスシャンベリン


 グランドアロー


 :

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 :

 これを見ている、ブリードル帝国宮殿での、皇帝達も、冷や汗をかいて見守っている。

 近衛兵は、いつ発狂してもいい状態に陥っていた。


 皇帝なんか、「ギャー」と叫んでいる。


 大臣達の中には、漏らして尻もちついているものが多数いる。

 宰相は……泡を吹いて気絶したいが、怖すぎるレベルが高すぎて、気絶出来ない地獄の精神状態であった。


 

 それでも、フロン皇女は叫んでいるながらも、スキルを全力で撃ち込む!

 部下も気絶したいが、フロンが死力を尽くして自分達の為にも、攻撃しているのをわかっているので、自分達も頑張って攻撃する。


 潮の香りがして来た。

 もうすぐだ!

 フロン達は、だいたい時速100キロから200キロくらいのスピードを出していた。

 もう運転席で操縦する者も、魔導馬車に魔力を注入する者も、死力を尽くしていた。


 海だ!


 海賊団の船団が見えて来た!


 ちょうど、神官達を乗せたみたいだ。

 岩場から、全速で海に魔導馬車を進ませる。

 一番近くの船まで、なんとか魔導馬車で海を渡り、乗り込んだ!


フロン皇女

「ゼェーゼェーゼェーゼェー!」


大の字になって、甲板に寝転がる。

 その頃、海岸では黒の洪水が丸いたまごみたいになり、いきなり左右十本の脚が出てきた!

 海を渡るつもりだ!

 それを見て、船長は真っ青になり、フロン皇女を見る。


 フロン皇女

「ハァハァハァ。全速で離脱!ハァハァハァ」


船長

「全速前進! 

 この海域から離脱する!

 これは、陛下の命令である。」


 全速で逃げる、船団。


 神官達も村民達も死にたくないので、死力を尽くして魔力を供給して逃げ出す。


 黒の者は追いかけて来たが、海を渡っている途中で、聖カルッティ王国方面?の向こう側?…バボン王国で光の柱がたったと思った時から、急に追いかけてくる速度が落ちていき、引き返していった。



 怖かった~!


 船団の総意である。


 フロン皇女

「ブリードル帝国に帰るわよ。」


 誰も異論無し。


 皇帝からも魔導通信が正常化したので、会話ができたので許可をもらい帰路についた。


 しばらくは、船団内で無言で食べては寝て生活が流行ったが、誰もなにも言わなかったらしい。



追記

 ブリードル帝国の宮殿は、三日間の謎の休日になった。


 理由を聞いても、誰も答えない。


 皇帝陛下に聞きなさい。


 最後には、皆さんがそう言う。


 皇帝陛下は、

 「休みは休みだ!皆の者も消耗している。だから休みなのだ!」

 と、言われたのでそうなった。

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