第31話 ホロン王国パルサー領戦1
辺境伯弟トーラーを総大将とする、領都パルサー防衛軍本部は、暗い沈黙の中会議が行われていた。
まず王都からの援軍が領都に到達するのが大幅に遅れているのと、その原因であるモンスターのスタンピードの規模の拡大である。
普通モンスタースタンピードは多くても、過去の記録では1万から3万である。
それでも、過去のある国の国軍総勢10万で対応して滅んだなどの記録があり、その後は正面から衝突せず撤退して戦力を温存し、モンスター達がいなくなったその後都市や王都を奪するのが定石であった。
しかし、今回は規模が違いすぎる。
初め30万と聞いたとき、大げさに言いおってなどと決めつけ、小規模スタンピードの1000くらいだろうと勝手に情報を改変して王国上層部に報告されていた。
そのことで、王国もかなり初動が遅れてしまったのだ。
王都軍事情報担当長官達は、王国達に部下に責任を取らすとか言っているがそんな問題ではない。
初めの観測で30万!今観測されているのでペルト街に40万パルサー領都に30万王国に向かって来ているモンスター軍30万。
増加の度合いが違いすぎる。
何が問題か? 大軍過ぎて数少ない撤退先及び避難先がないのである。
隣国のブリードル帝国が勇者召喚をしてホロン王国を侵攻しようとしているという情報も、また遅れすぎてやってきた。
軍師情報担当局は第2王子ラーホの直属である。
第2王子は謀反の疑いと、スタンピード情報改変の責任を取ることになり、謹慎処分。
その側近及び部下全員と、召し抱えられた暗殺者は近衛第2部隊特別戦奴部隊へと編成された。
もちろん軍事情報担当局も一新された。
その近衛第2部隊・本隊10万・戦奴20万がパルサー領都へ向かっている。
絶望の行軍である。
近衛第2部隊代理隊長ルンバは、領都まであと少しの街道でコボルトを主力とするモンスター軍と対峙することになる。
谷の向こうに領都。
さらに向こうにペルト街が見える。
しかし、かなり馬にムチを当てて急いだが領都とペルト街近くの平原つく前に、よりによってゴブリンジャイアントを落とそうと考えていた谷の前でコボルト軍と衝突となった。
コボルトキングが3匹もいたのだ。
伝説のコボルトエンペラーがいるのは確定だ。
死闘が始まった。
なんとかして谷を超えないと、罠が作れない。
国内に逃げ場はない。
実に戦奴部隊はよく戦っている。
戦奴の首輪を付けられた時に、代理隊長ルンバはムチを使って命令をしなかった。
王国の現状をありのままを話し、逃げ場が無いことやゴブリンジャイアントという伝説のモンスターまで来ていることを話し、谷落としぐらいしか方法がない事も話した。
何より、戦奴隷に差別をまったくしなかったのだ。
食事も温かいものが配られ、普通痛んだ武器を渡されればいい扱いであり木の棒がせいぜいであるのに、武器屋で売っている鍛錬された武器であった。
いろいろ思惑があったのだが、宮廷第2部隊が実力主義であり、戦奴であっても武功を立てると開放したことがある実績が第2部隊だけがあるのが、戦う気力を奮い立たせた。
ここでコボルトがドック系のモンスターであり、鼻が良すぎるという特性を使って魔物避けの魔法薬や煙幕を大量に持っていたのが良かったのか、なんとか対応出来ていた。
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