第22話 ホロン王国ペルト街防衛隊の悲劇

私はペルト街防衛隊隊長ベルガー・テ・モイトである。


 モイト子爵家の三男なのだが、はじめは王宮近衛第2部隊・隊長をやっていた。


 しかし実家の父親が、長男殿を近衛部隊の隊長にしたいらしく、俺に代われと言う。


 実力世界の隊長職を、剣も持ったことが無い長男殿がどうやって務まるのかと言ったのだが、父親は聞く耳を持たない。


 仕事の邪魔はするし、陛下に迷惑かけてばっかりである。もうせめて、こいつと長男殿を叩き斬って…と思っていると、ある日陛下からお呼びがかかる。


 そこには、陛下と辺境伯の長男サパン・ド・パルサー殿がいた。


 曰く、辺境伯ルーラー様の次男ゲース殿は相当悪いらしい。そして辺境伯様はどうも、ゲース殿に毒をもられ病床にあるらしいが、次男殿が隠蔽してサパン殿が領地に帰ったところを暗殺、自身が辺境伯になるつもりらしい。


 陛下も、王太子派と第2王子派の対立に頭を抱えておられ、城下ではやりたい放題の第2王子に対して、かなりご立腹であられる。


 そして、実家の父親とゲース殿は第2王子派であり皇太子暗殺を企んでいるらしいのだ。


 なんてことだ。おかしなことを言って来るとは思っていたが、ため息しか出ない。


 そこで、陛下はある計画を言われた。


 実は、私の顔は若い時の辺境伯ルーラー様に似ているらしい。そう言われた時、運命を感じざる得なかった。私の母親ポーラは前辺境伯の末娘、つまり今の辺境伯ルーラー様の妹である。この事は私と母親だけのヒミツであった。なんでも繼母の陰湿ないじめで、家から死を偽装して逃げるしかなかったらしい。


 そこで、メイドとしてモイト子爵家に働いていた時に私が生まれたわけだ。


 私は、陛下達にこの事を打ち明けた。


 サパン殿はびっくりしておられたが、陛下はやはりなと、おっしゃられていた。


 知っていたらしい。


 そして陛下に計画の賛同を申し出た。



 まず第2王子派のバックのダーク貴族どもの掃除と辺境伯様の救出。

 宮中近衛第2部隊のルールを使った、ブラック貴族の子弟ホイホイ計画。

 第2部隊は問答無用の実力世界。

 兵士長から上は決闘で決まる。

 もちろん試合ではない、死合だ。

 私が出張中に兵士を募集、ブラック貴族の関係者だけ採用して、あとは… 副長の奴は過激だからな…… 勝手に全滅するみたいだ。


 辺境伯様の救出作戦は意識不明の辺境伯様救出後ペルト街で防衛隊隊長をやっている、辺境伯の双子の弟さん(俺からみたら叔父さんだな。)が辺境伯の替え玉を演じて、飲まされている薬など証拠をつかむという計画である。


 そして私はしばらくの間ペルト街防衛隊隊長に出張(成り代わる)ことである。


 それが2年前のことである。第2王子派は瓦解。モイト子爵家はいつの間にか俺が当主になっており父親達は…… コホン。実はこのホロン街の防衛隊隊長室の隠し部屋に、意識不明のルーラー様を匿っている。世話をしているのは我が母親だ。


 解毒剤をいろいろ試してはいるのだが、なかなか回復しない。もう、伝説のエリクサーに頼るしかないかもしれないがあれは、ダンジョンでしか今の所出てきていない。


 残るは第2王子と辺境伯次男ゲース殿なのだがこんな時に、スタンピードが起こった。


 しかも伝説のゴブリンジャイアントが見える。


 あんなものが王都に行かせると、もうホロン王国は終わりだ。

 特急便1号・2号の鳩を王都と領都に飛ばす。備蓄食料はゲースが攻めて来た時に備えて三年分ある。

 だが、ゴブリンジャイアントをどうすればいいかわからん。


 街の町民達に紛れ込ませて、ルーラー様達を逃がそうとしたが、恐竜達に街が包囲されてしまった。

 速すぎる!普段死の森から一歩も出てこない恐竜が攻めてくるのは予想外だ。どうなっている。……


 次の日ゴブリンジャイアントが何かと戦っていて、進軍が止まったらしい。


 だが恐竜が、なかなか手ごわい。防戦一方である。


 次の日、領都から鳩が帰ってきた。執事からだ。次男ゲースがゴブリンジャイアントを倒して第3王女を娶り、オレは王族になる! なんて言って、たった100騎で出陣したらしい。30万を超えるスタンピードをなめとんのか!

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