第19話 ブリードル帝国(その1)

 


 あれから数日が過ぎた。


 「ヒィー、毎日ランニングに剣の素振りって、つかれんですけど~」


「私なんて、呪文の丸暗記なんて無理よ!」


「俺なんて、賢者様候補なんだろう~ってイヤミ言われながら、わけわからん錬金術の本を音読させられるんだぜ!


 あの本さ~中身間違ってね?

 塩ってさ、温度変えても溶ける量はほぼ同じなんだよな。

 コップ一杯の水に、魔力入れて無理矢理塩を3kg溶かせって、無理じゃん。」


「盾持てって言われるけど、おも過ぎてムリ。」


「聖女は祈るものです!って言われても、感謝しろ!とか言われても、元の世界に帰せ!としか祈れないよ。」

 

 それぞれ愚痴(ぐち)をたくしかない。

 食堂でのこの会話は、フロンに筒抜けである。

 だが彼・彼女達は知っていてもやめない。

 たとえ、訓練内容が増えてもやめない。

 それがせめてもの、抵抗だから。


 またムチを持ったフロン王女がいや…違った。

 フロン皇女様が食堂に入って来た。


 俺たち勇者を召喚成功した功績により、[王女]から[皇女]に昇格したらしい。

 この世界の国の制度はよくわからんがそうなっているみたいだな…。

 怖いから、あまり聞きたくないけど…

 さてそんな怖く気品高い皇女様がやって来ても決して、しゃべる事をやめない!


「帆山だけ、肌が艷やかになってないか?」


「あれな~なんか騎士長とも仲いいし。」


「あの二人は何やってるんだ?」


 フロン皇女が顔を引きつらせながらムチを振り上げたとき、それは起こる。


 「大変です姫様! 緑の巨人がわが城上空に現れました。」


フロン皇女

「なにィ!まさか? ゴブリンジャイアントか?」


(フロン視点)


 隣国辺境にゴブリンジャイアントがあらわれ、モンスター軍団が移動している情報は、放ったスパイからの情報で

わかっている。


 まさかいきなりあらわれるとは!


 しかし、城のバルコニーから見たそれは、なんか違った。


 聞いていたものよりも、絵本などで描かれているものよりも、丸いのである。

 顔らしきものには黄色い玉が左右に移動しているし、ゴーレムに近いような~


 しかし、召喚者達の反応は違った。


 ザーゴ大公国が攻めてきた?

 →そんな公国この大陸には無い!


 持っている大きな筒がマシンガン?蜂の巣にされる?


 なにバカな事を。


 ジークザーゴ! なんて一部が唱えだした。


 わけわからない。何かの呪文か?


 城下は大混乱である。


 そして緑の巨人は動き出し、召喚者達の言葉を無視出来なくなる事態が発生する。

 グレネードなるものがぶつかる。


 マシンガンなるものが、火を吹いたのである。


 何かが城にぶつかる。

 城が揺れる。

 攻撃を受けているのだ。


 伏せながら、巨人を観察する。


 何か投げた。爆発する。

 バルコニーが崩れる。


 メイド達が聖結界を張るが、部屋の壁まで吹き飛ばされる。

 バルコニーにいた者は皆生きている。

 それだけ確認した時に意識が、なくなった。

 

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