第17話 ホロン王国辺境ポンロ村のその後

 用が見えなくなるまで見送った後、村長達はそれぞれの仕事に戻って行く。


 その翌日の夜にはミレイが大量の上級回復ポーションを作り、ゴブリン戦で負傷した村人達に飲ましたり、傷口に塗っていく。


 変化はすぐ起こった。

 重症者がすぐに治ったのである。

 それどころか部位欠損の重症者までなくなった部分が、元通りに回復したのである。

 これには村長をはじめ、魔法薬を作ったミレイもびっくりする。


 村長

「すごいな!」


ミレイ

「素材が超強力だからでもあるが、一級品でもあったからね。

 エリクサーに近いものができちまったな。

 領主にバレないようにしないと。」


村長

「いつも救援要請しても無視しやがる領主様なんて、どうせ来ないだろ。」


ミレイ

「こんな時に限って嗅ぎつけて来るからな。

 二本ほど用意しておくよ。

 後は私が空間収納しておく。」


村長

「そのほうがいいだろうな。

 ハァ~。

 ミレイばあさんもご苦労さん。

 ゆっくりと休んでくれ。」


ミレイ

「あ~そうさせてもらうよ。」


 パチン!!  

 何かが弾ける音がする。


ミレイ

「へ? ばあさん?」


 ミレイは雑貨屋さんに急いで帰る。


ラント(雑貨屋の店長)

「おかえり。」


ミレイ

「ラント!今お前から見て、どう見える?」


ラント

「なに言っているんだよ。

 いつも通りの緑髪のばあさんだよ。」


ミレイ

「あの子、私の事どう言った?」


ラント

「ええと、金髪の………え! 

 ああ!

 だけど、あの時も今のばあさん姿だったぞ。

 なんで、母さんの本当の姿が見えていたんだ?」


ミレイ

「なぜ!あの時、疑問に思わなかったのだ?

 どう言う事なの?

 なぜ変化魔法と認識阻害が効いてなかったの?

 それに、何か~妙な感覚が~」


ラント

「わからねぇ。」


 夜がフケてゆく。


 二人が疑問に思わなかったのは、AIが操作していたからだがそれを知るのは、かなり後のことである。

 数日後、森に異変が起こる!


 村を無視して、モンスター達が大勢通過していく。

 通過先の向こうには、伝説のゴブリンジャイアントが見える。

 どうするか、村長の家で会議が始まった。


村長

「どうする?

 こうなったら徹底抗戦だが、いくら伝説のエリクサー並の回復薬があっても、あのゴブリンジャイアントは………」


ミレイ

「だな。村移転するか?」


村民

「あの子は大丈夫かな…」


村民

「そうだ、俺は腕がなくなって嫁も諦めていたのに、あの子のおかげで元通りになった。

 チーコが結婚してくれるって言ってくれたんだぞ!

 命の恩人どころか、人生の恩人だよ。」


ミレイ

「あの子は何か、不思議な力で守られている感じがするから大丈夫だよ。

 私らが生きていれば、また会えるだろうよ。」


村長

「そうじゃ。

 今は皆が生き残る事を考えることじゃ。」


 ドーン!ドーン!ドドドドドドド


村長

「なんじゃ!?」


 そこへ見張り台からの伝令が来る。


見張り村民

「ゴブリンジャイアントに対して、突然あらわれた緑の巨人が戦い出した!」


村長

「なんだって!」


 村人総出で見守るなか、ゴブリンジャイアントとモビルスーツの(?)の戦いが始まる。


 そして……


 (?)が森に落ちていった。


ラント

「村長!これはまずい。」


村長

「うむ、わかっておる。」


村民

「なぁ、今!モンスター達がいないのだから、あっちの方角の山越えが出来るんではないかい?」


村民

「なるほど、確かに!

 見張り台に立っていたが、あの大軍のあとスライム一匹見やしない。

 行けるぞ。」


村長

「だが村の廃棄は厳罰対象だ。

 領主様は話を聴いてはくれるが、やはり罰を与えなければならないだろう。

 この地域担当の次男は、前年に村に来た時は酷かった。

 とても話などならないだろう。」


ラント

「領主様に何か献上品を出すしかないが。」


ミレイ

「これならある。」


 村民達が目をみはる。

 自分達を救った回復薬だ。


村民

「なぁ、前に救援を頼んだのに来なかったから、今度はこちらから村人総出で、届けに来たって事に出来ないか?」


村民

「そうよ!

 私だって武器があれば戦えるわよ!」 


村長

「よし!全員で戦いながら移動するぞ!

 名目は義勇軍じゃ! 


 わしの家に、前年の次男坊様の道楽軍が来た時に、支払い代わりのマジックバッグがかなりある。

 目指すは山を迂回して、直進して直接領都を目指すぞ!」


 こうして、ポンロ村は総出でモンスター軍団と戦う義勇軍として、移動を始めたのである。

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