第7話 正常な異常な世界 完



翌朝。



窓から差し込む光と、スズメの鳴き声で


Nはさわやかに目が覚めた。



うん。



今日は違和感がない。



すっきりしている。



昨日飲んだ薬が効いたのかもしれないし


医師に話して気持ちが落ち着いたのかもしれない。



Nはベットから出て、歯を磨き顔を洗った。



鏡に映る自分の顔と、目があった。



こんな顔だったといえばこんな顔だったし



いつもと違うといえば、違うような気がする。



しかし、もうそんなことはどうでもいいじゃないか。



目があって鼻があって口があって耳がある。



自分の顔が見えているし



歯磨き粉の匂いや味もわかる。



シャカシャカいう歯ブラシを動かす音も聞こえる。



それでいいじゃないか。



キッチンに戻ったYはトーストを焼き


熱いコーヒーと共に食べ、食後の薬を飲み


トイレをすませてきちんと身支度をして外に出た。



駅までは歩いて五分くらいだ。



なんだか空気が美味しい。



天気も晴れている。



なんだか生まれ変わったみたいだ。




行き交う人々に目をやるN。



皆、一様にマスクをしている。



また、世界が変わっている。



Nはスマホで大谷を検索した。



すぐにたくさんの情報が出てくる。



元の世界に戻った。



やはり、昨日は疲れていたのだ。



幻覚を見ていたんだ。



もしかしてずっと寝ていたのかもしれない。



とにかく、元の世界に戻った。



よかった。



やはり、自分の世界がいい。



Nはガッツポーズをして走り出し、


駅の売店でマスクを買って身につけて


電車に乗り込んだ。




その様子を、K子が見ていた。



今日は朝から違和感があった。



何が伝インかわからない。



体調は悪くなかったので、そのまま家を出て会社へ向かった。



会社へ向かう道中、人々がマスクをしている事に気がついた。



ほとんど全員がマスクをしている。



その理由に全く心当たりがなかった。



心配になっておどおどし出した時に



自分と同じくマスクをしていない人を見つけた。



もしかしたら、自分と同じように


人々がマスクをしている理由がわからない人かもしれないと思い


話しかけてみようと思った矢先、その人はガッツポーズをして


走り出して行ってしまった。



さっきの人は、マスクの理由がわかったのだろうか。



K子はマスクをした人混みの中を歩き


余りにも一様に人々がマスクをしている理由がわからず


こわくなってしまい、コンビニに寄って、自分もマスクを買った。

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正常な異常な世界 @noghuchi

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