第73話 side【サラ】→【ミカ】
◆ side【サラ】
「報告です! 傭兵団の拠点にて子供を発見しました! 場所は──」
子供達の捜索をお願いした者が帰ってきて、報告をしてくれます。
どうやら逃げ出した2人が助けを呼ぼうとして発覚したようです。
孤児院の誰かはわかりませんが、既に2人は保護されているらしいです。
それに場所はわかりました。
孤児院はロキ君が用意してくれたであろう者達に任せるとして──
後は殲滅するだけですね。
傭兵ランクAの猛者もいるようですが、ここでもたもたしていると子供達の命の危険があります。
ロキ君が用意してくれた護衛を無駄にしてしまった以上、私が責任を取るべきでしょう。
さっさと出発しましょう。
「──ありがとうございます。では他の人が戻ったら孤児院の護衛をお願いしますね?」
「「「は、はい」」」
私はお礼を告げて、そのまま孤児院を後にします。
拠点らしき場所に到着すると──
「待ちな。ここは俺達の拠点だぜ? 勝手に入るとどうなっても知らないぜ? そういや──お前は孤児院にいた女だな。さっき逃げた奴らが知らせたのか……めんどくせぇな。計画も急遽変更になるし上手くいかなさすぎる」
男から声をかけられます。
どうやら、言葉から完全に黒ですね。
計画が何の事なのか確かめる必要がありそうですね。
「──貴方は?」
「俺は傭兵団『紅蓮の牙』団長の──フレデリクだ。俺は金にならねぇ事はしねぇ主義だ。大人しく帰れば見逃してやる」
誰に向かって“見逃す”と言ってるんでしょうね?
私が見逃しませんよ。
「──子供を拐った癖に何様なんでしょうね? 殺しますよ?」
私は隠していた殺気を解放します。
「──ちッ、大した殺気だ。さすがはアルベルトのとこで働いているだけはあるな」
「孤児院に手を出せばどうなるか知っていますよね?」
アルベルトさんは襲撃者には必ず報復を行います。
この人がそれを知らないはずがないです。
「俺達は仕事が済んだらそのまま他国に行く予定だからどうにでもなる」
「では──私が逃げれないようにしてあげましょう」
「くっくっく、
私は話している途中に手加減無しで顔面を殴って吹き飛ばしますが、フレデリクは上手く攻撃の軸をずらして致命傷を避けます。
それどころか、お返しと言わんばかりに『魔法剣』である“火剣”を使って反撃してきました。
普通の“火剣”とは違い、かなり殺傷力の高い攻撃です。
なんとか避けるも、酷い火傷を負いますが──
「──“継続回復(大)”──貴方に手加減は必要ありませんね」
即座に回復し、メイスを使って勢いよく振り下ろしますが、剣でそらされて地面に激突します。
「──?! 一撃だけそらして、手が痺れる威力とか悪い冗談だな……本当に
「少しばかり接近戦が出来る
「──お前らッ! 地下の餓鬼共を連れて来いッ!」
「──?!」
どうやら、人質にするつもりのようですね……。
さっさと片付けて、地下に向かわなければ──
◆ side【ミカ】
「……はぁ……はぁ……」
「おいおい、もう終わりか? さっきまでの威勢はどうした? まぁ、他の餓鬼よりは頑張った方だがな」
既に私以外は倒れている。
予想以上に相手が強かった……まさかここまで力量差があるとは思っていなかった。
だけど、私は諦めない。
ミーヤを運んで治療するまで絶対に倒れない。
何度でも──
撃ち続けるッ!
「──ガハッ」
「無駄だって。その程度の攻撃力なら避けるまでもねぇよ。そろそろ諦めろよな」
攻撃が当たってもダメージを与えられず、殴られてミーヤのいる場所まで転がる。
力が入らない……。
それでも、ゆらゆらと立ち上がると──
ふと目に入った窓ガラスに映る自分は酷い姿だった。
体中は青痣だらけ、顔は腫れて膨れ上がっていた。
痛みは既に通り越して何も感じない。
「ミカちゃん……もうやめて……死んじゃうよ……」
泣きながらミーヤが止めてくる。
私はまだ戦える。
ここで諦めたら、お父さんの時のように絶対に後悔する。
あの時みたいに私は無力じゃない。
戦う力がある。
負けたらミーヤを失うから、絶対に諦めない。
「私は諦めないわ……」
ミーヤを見殺しにしてロキに顔向けなんか出来ないよ……。
どうにかして、倒さないと。
せめて『魔拳』スキルがあれば──
『ミカ、良いですか? どんな強敵でも中身は弱いものです。この技は“体技”である“遠当て”の延長線の技です。努力しなければ習得出来ません。これさえ使えれば──どんな硬いモンスターであっても関係ありません。いつか守りたいと思った時に使える事を祈ってます』
その時、アルベルトさんが昔に教えてくれた“魔力撃”を思い出す。
“遠当て”は魔力自体を飛ばして離れた敵にダメージを与える“体技”で──
“魔力撃”は魔力を飛ばさずに体に触れた瞬間、一気に爆発させるように放出して内部を破壊する技術だと言っていた気がする。
これが使えれば力は無くても大ダメージを与える事が出来るはず。
練習して“遠当て”は使える……だけど、どうしても“魔力撃”は使えなかった。
何故か、魔力が体を通り抜けてしまう……。
それに“遠当て”では避けられるし、破壊力が足りない。
ロキならこんな時どうするんだろ……。
そういえば──
ロキはマッサージする時に手から魔力を流していたような気がする……あれって“魔力撃”と似たような技術なんじゃ──
──そっか、魔力を飛ばすんじゃなくて、自分の掌に留めたらいいのか。
試しに魔力を手に集めるように意識してみると、手の平全体が暖かい感じがした。
なんだろ……ロキっていつも私を助けてくれてるなぁ。
自然と笑みが浮かぶ。
私は気が付けば、男に向かって拳を振り抜いていた──
「これだけボコボコにされてんのに気持ち悪い餓鬼だな。見せ様に1人ぐらい殺しておくか。死にかけで放った攻撃なんか避けるまでもない────グァッ?!」
腹部に放った拳を避けずに受けた男は、お腹を押さえながらのたうち回った。
だけと、私の“魔力撃”はまだ魔力が集めきれていない未完成の技。
男は立ち上がり──
「──糞餓鬼がッ! ぶっ殺す──」
先程よりも速く動いて攻撃してきた──
眼前に迫る拳は今の私じゃ避けられない。
だけど、最後まで諦めないッ──
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