第72話 side【ゴンザレス】→【ミカ】

 ◆ side【ゴンザレス】



 雑魚を蹴散らしていると──


「ゴンザレスさん!」

「──カオルか。ギルマスは?」


 カオルと低ランク冒険者達と兵士達が到着した。


「そのギルマスから伝言です。ギルマスは他の冒険者ギルドに救援依頼をしてから来るそうです。他にも傭兵ギルドにも連絡したらしいのですが、代官から依頼を受けているらしくて直ぐに動けないらしいです」


 救援か……間に合えばいいがな……。

 それと──傭兵ギルドか……あいつらは金優先で動くからな……。


 代官からの依頼か……きな臭いな。

 とりあえず今はモンスターを狩らければならん。


「あいつらは鼻から当てにしていない。他には?」

「ゴンザレスさんは派手に暴れてモンスターを引きつけろと。俺達と兵は門の死守と援護です」


 作戦というか適材適所だな……。


 雑魚はまだなんとかなる。

 オルトロスが現れれば、低ランク冒険者は邪魔にしかならないので、それしか方法が無いのも事実だがな。


「わかった。斥候が得意な奴らに坊主の捜索をするように伝えたが、そっちはどうなってる?」


 カオルは少し口角を釣り上げる。


 何か良い情報があったんだろう。


「──ロキ君は見つかっていませんが、途中モンスターの群れが場所があったそうです。たぶん、ロキ君が足止めしてくれてるんだと思います」

「そうか」


 カオルの言葉に俺も口角が釣り上がる。

 ドバンとジギルもその言葉に安心している。



 つまり──坊主はという事だ。


 他のモンスターを相手にしているという事はキマイラはなんとかしたのだろう。


 大した奴だな……。


 後は、こっちを片付けたら問題ない。


「なら──そっちは任せたぞ。カオルが冒険者の指揮を取れ。俺達は──犬っころの相手をする」

「──?! わかりました。ご武運を」



「グルルルルルルゥ──」


 さぁ、本命のお出ましだ。


 既にオルトロスは殺気立っている。


 正直──不安はあるし、勝てるかも不明だ。


 だが、坊主がたった1人でキマイラを相手にして勝てたんだ。


 大人の俺達が情けない姿を見せるわけにはいかん。


「後の事など、考えるなッ! 全力で行くぞッ!!!」

「「了解ッ!!!!」」



 ◆ side【ミカ】



 孤児院は久しぶりに襲撃された。

 いつもであれば院長が倒してくれるけど、不在の時は避難部屋に行くように言われていたので──


 スケルトンが襲撃者を相手してくれている間に部屋に向かった。


 でも、襲撃者達はスケルトンを倒して私達に追いついてしまう。


 私はミーヤに鍵を渡して「私達が時間を稼ぐから中に避難してッ!」と言い──


 戦える人で応戦して時間稼ぎをした。


 だけど……私達も強くなっているはずなのに次々と気絶させられていった。



 そして──


 気が付けば、檻の中にいた。


 そこにはあの時に戦ったメンバーとミーヤがいた。


 幼い子供達がいない事からミーヤが身を挺して逃してくれたんだと思う。


 でも──ミーヤは私達と違って戦闘系の職業ジョブじゃないし、戦闘も得意じゃないから怪我が酷い……。


 お腹を殴られたみたいで、さっきから時々血を吐いている。


 手遅れになる前に治療しないとミーヤが死んじゃう──



「ミカちゃん、もう止めてッ! 待ってたら、きっとサラさんが助けに来てくれるよ!」

「──止めないッ! 絶対に脱出するッ!」


 私はビクともしないを破壊しようと素手で殴り続ける。


 既に手から血が流れてるし、痛みも感じなくなってきた。


 ミーヤも凄く心配してくれているけど──


 そんな事言ってられないッ!


 早く脱出してミーヤを治療しないといけない。


 こんな所で捕まっている場合じゃないッ!




「さっきから、うっせぇぞッ! 静かにしねぇと──殺すぞッ!」


 外で見張っていた奴が中に入ってきて檻を蹴りながら『威圧』スキルを使って脅してきたが──


「「「──やってみろッ!!!!」」」


 それぐらいじゃ私達は怯まない。


 そもそも、殺すつもりなら捕まえる必要は無い。

 何か目的があって捕まえているはず。


 そんな事を考えていると、また1人誰か来た。


「こりゃーお仕置きが必要だな」

「副団長?!」

「おぅ、ご苦労さん。【】はここにいないみたいだし、団長がこいつらは人質として使うってよ。とりあえず──1人ぐらい痛い目に合わせたら黙るだろ。お前は休憩してこい」

「すいません。ではお願いします──」


 副団長と名乗る男が現れると、さっきまでいた男と交代する。


 こいつは私達を気絶させた奴だ。


 それより──


 緊縛?


 縛るといえばロキぐらいしか思い浮かばない……。


 もしかしてロキを捕まえる為に私達を人質にするのが目的?



 ──させないッ!



 副団長と呼ばれた男は檻の中に入ってきた。


 今ならこいつは油断している。なんせ出入り口に鍵をしなかった。


 これはチャンスだ。

 私はティリーとシェリーにアイコンタクトを送ると頷いてくれる。



「アルベルトの育ててる餓鬼が強いと言っても俺からしたら餓鬼に変わりはない。生意気な餓鬼は躾けてやろう。まとめてかかって来い」


 私達は全員構える。



「──こいつを外に出るわよッ! 全員──行けッ!!!!」

「「「応ッ!」」」


 私の言葉で全員が男を囲み、いっせいに動く。


 言葉で注意をこちらに向け、皆は四肢に飛びつきつつ、出入り口に向かせないようにする。


 その時にティリーとシェリーは出口目掛けて走り出す──


「──しまった?!」


 男は私達に気をとられて気付くのに遅れる。


 直ぐに追いかけようと動くが──

 

 私達の連携はロキに鍛えられている。


 簡単には突破させない。



 更に──


「──隙だらけよ──」

「グハッ──」


 私の“正拳突き”で動きを一瞬止める事に成功し、その間にティリーとシェリーは脱出した。



 男は倒れなかったけど──


 それでも、倒れるまで何度でも殴ってやるッ!


「アルベルト孤児院を──舐めるなッ!!!!」


 こいつらの好き勝手になんかさせない──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る