第71話 side【ゴンザレス】→【サラ】
「あんのクソ餓鬼、今度会ったらぶん殴ってやるッ!!!!」
「今はそれどころじゃないだろッ!」
「早く冒険者ギルドに行くぞッ!」
「わかってるッ!」
俺達3人は坊主におかしな技を使われて気を失った。
そんで骸骨の嬢ちゃんに運ばれている最中に目を覚ました。
しかも股間が濡れた状態でだッ!
まぁ、街に入る前だったのは幸いだったがな……。
目が覚めた俺達は着替えて必死に走り、やっと街に到着した。
冒険者ギルドに到着すると、ギルマスを呼び出して事情を説明する。
そこからは慌しかった。
緊急を知らせる鐘を鳴らし、冒険者は緊急招集される。
そこにはカオルもいたが──
「ギルマスよ……いくらなんでも少なくないか? しかも低ランクばっかだぞ」
とてもオルトロスを相手にするには役不足な連中ばっかりだった。
「……領主が高ランクを連れて行ったからな……ここに残ってるのは良くてCランクだろう……お前がいてくれて助かった」
「いや、俺達でも足止めが限界だ。オルトロスは群れならSランク相当の扱いだろうに……ここに来るまでに群れの規模がどれぐらいかで──下手したらこの街は滅ぶぞ? 兵は出るのか?」
「わかっている。さっき代官にも伝えたが、冒険者ギルドに任せるとよ」
「ちッ、代官は兵を出さないつもりか。どうするつもりだ?」
ったく……代官なんてそんなもんか……次会ったらぶん殴ってやる。
「籠城しかないだろうな……そういえば、報告にはオルトロスだけしかなかったが──他の2体は?」
「アースドラゴンは討伐したが、キマイラは不明だ。キマイラと戦う前に俺達は街を防衛させる為に気絶させられて逃がされたからな……」
エリザベスの嬢ちゃんから、そう聞いている。
おそらく、キマイラを引き離して、少しでも街の防衛をし易くしたかったのだろう。
本来なら俺達がやるべき役目だった……。
「は? ……お前が気絶させられたのか?」
「お前も知ってるだろ? 孤児院で噂の奴だ」
「【緊縛】のロキ──か?」
「そうだ。あいつは単純な戦闘力では俺よりは弱いが、戦術の幅が広く──総合力という点では俺を超えるだろう。そして、頭も良い。今回、俺達を街に戻したのも防衛の為だ。だからお前が街を放棄したとしても街を死ぬ気で守るつもりだ」
キマイラの単純な戦闘力は討伐ランクAでもSに近い。魔法耐性もある上に俊敏でパワーもある。
坊主は基本的に中距離で紐に魔法を付与しながら戦う。
生き残っている可能性はほぼ無いだろう。
だからこそ託された俺達は命を賭けてでも、街を守る。
「──そうか。ならば、俺達もその小さな英雄に応えよう」
「あぁ、逃げたら──院長に殺されるぞ?」
「……まぁな。元より戦うつもりだったさ」
「なら良い。腕が鈍ってない事を祈る──俺達は先に外で雑魚狩りをしておく。遅れるなよ?」
俺はそう言い残し、冒険者ギルドを後にする。
歩いていると──
「ゴンザレスさん」
「嬢ちゃんか」
サラの嬢ちゃんから声をかけられた。
出来ればサラの嬢ちゃんの力を借りたいが──
不測の事態──モンスターが街に入った時に子供達を守る必要がある。
俺はその事を伝えて、帰るように伝えた。
その時に坊主の居場所を聞かれたので、正直に全て伝えて謝った。
それに対して嬢ちゃんは「ロキ君ならそうしますので、気にしないで下さい……優しくて──強い子なんです。きっと倒してから街を守りに来てくれます」と言ってくれたが、顔色はかなり悪かった。
「まだ死んだわけじゃない──俺達の知ってる坊主はこれぐらいで死なん」
そう自分にも言い聞かせるように告げた後、俺達は街の外に出る──
「キマイラは来ていないか……無事だと良いが……」
「生きてるだろ……ゴンを簡単に気絶させたぐらいだしな」
ドバンとジギルも坊主が生きていると信じている。
あれからけっこう時間は経っている。キマイラがここに来ていないという事は足止め中か──
倒せた可能性があるという事だ。
何より、ウルフ系のモンスターが少ない。
もしかしたら──どこかでウルフ系モンスターも討伐しているのかもしれん。
「そう、だな……あいつは強い。必ず──帰ってくるッ! オルトロスを倒せたら──とっとと援軍に向かうからなッ!!!!」
「「応ッ!」」
俺達は群がり始めているウルフ系モンスターの討伐を開始する──
◆ side【サラ】
ゴンザレスさん達が討伐する為に門に向かうと、私はその場で棒立ちになります。
話の途中──血の気が完全に引いて気を失いそうになりました。
まさか、アースドラゴン、キマイラ、オルトロスの3体が街に向かってきており、既にアースドラゴンの討伐は終わり──
ロキ君はキマイラを街から遠ざける為に足止めしているなんて……。
しかも──街にはオルトロスとウルフ系モンスターの群れが迫っている。
ゴンザレスさん達はロキ君に気絶させられて、エリザベスさんに連れて来られたそうです。
そのエリザベスさんはロキ君を助けに行ったと言っていました。
あの置き手紙は──遺書?
私が追いかけて来ないように──死なせないように書き置きをした?
涙が止めどなく流れます。
ロキ君が死ぬ──
助けに行かないとッ!
「まだ死んだわけじゃない──俺達の知ってる坊主はこれぐらいで死なん」
ゴンザレスさんの言葉が頭を過ります。
確かに私の知っているロキ君はこんな事で死んだりしません。
ロキ君は平気で暗殺者ギルドを潰したり、孤児院の為に大人顔負けの案を出したりしてくれる子です。
今回も勝算があるから出ているはずです。
それにあの雌豚共は孤児院を守るようにロキ君から命令されていました。
ゴンザレスさんの言う通り、街にモンスターが侵入する可能性があります。その時の用心棒代わりなのでしょう。
これだけ用意周到にしているんです。ロキ君が簡単にやられるとは思えませんッ!
ここで私がしっかりしないとロキ君に嫌われてしまいます。
せっかく──距離が縮まったんです。
絶対に離しませんッ!!!!
そうと決まれば──雌豚共を解放しましょう。
そして、私もゴンザレスさん達と共にオルトロスを討伐してロキ君の場所に向かいますッ!
そう意気込んで、孤児院に戻ると──
「……いったい何が……」
争った形跡があり、スケルトン達は全滅し──
子供達が誰1人見当たりませんでした。
一瞬呆然としますが、気配を探ると──
いざという時に逃げ込む避難場所に集まっているようでした。
あそこは拷問部屋と同じく、いかなる攻撃にも耐えられる金属で囲まれています。
ここを開けるには特殊な鍵を使わなければなりません。
鍵は院長が出る時に預かっているので2つあります。
持っているのは私と、子供達のまとめ役である──ミカちゃんです。
私は鍵を開けて中に入ると──
幼い子供達が中にいました。
「サラお姉ちゃん──ミーアお姉ちゃん達を助けてッ! 拐われたんだ──」
事情を聞くに、私が出ていた短い時間の間に襲撃されたようでした。
自分の不甲斐無さに苛立ちが隠せません。
もしかして、孤児院に護衛を置いたのは、モンスターの襲撃に備えるものではなくて──
この為?
私は子供達を落ち着かせた後──
拷問部屋に行きます。
私の姿を確認すると、全員が怯えます。
良い感じに調教出来ていますね。
「──お前とお前はそこそこ強いので、ここの護衛です。残りは拐われた子供達を探し出しなさい。万が一、脱走したら必ず捕まえて地獄を見せますからね?」
「「「は、はいッ」」」
下僕と成り下がった暗殺者は子供達を捜索します。
ロキ君、なるべく早く終わらせて、そちらに向かいますから待っていて下さい──
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