第55話

 急遽開いた店ではあったが、今日も大繁盛だったな。


 吊るされた人も大勢いたけど……というか吊るしたんだけどね!



 さて、ゴンさんに氾濫スタンビートの報告もしてもらったし、冒険者ギルドもそのうち本腰を入れて動いてくれるだろう。


 気になるのは高ランク冒険者が少ない事ぐらいだ。間引く必要はありそうだな……。


 カオルさんにも常時依頼の報告も頼んだから懐は大分暖かい。


 後、数回狩りをしたら肉を一気に市場に回す事にしよう。

 俺達の店だけでは街の人全員を飢えから救うのは無理だ。


 それなら稼げる今の内にまとめて買い取ってもらった方が得だ。



 ただ、今日店を出してみて思ったが──午前中に肉の調達をして、午後からお店は少しハード過ぎる。


 俺が夜中にこっそり狩りをして、皆に店をやってもらうのが1番かもしれないな。


 幸いにもミカは既にトラウマを乗り越えているように思うし──


 何より、俺1人の方が動きやすい。

 それに俺の実力を確かめるのにちょうど良いだろう。


 まぁ、1番の理由は孤児院の皆を守りたいだけだけどな。


 アルベルトさんのシークレットクエストに絡んでいるのであれば惨劇が訪れるはずだ。


 シナリオの詳しい内容は思い出せないが、ピースの一つ一つを当てはめた結果──


 予想では飢餓はゴンさん達の派遣でなんとかなったはずだ。


 しかし、アルベルトさんが討伐に向かったダンジョンはゲームの世界でも存在していた。


 つまり、攻略は


 そして、今回の二次災害──


 強いボスか、数による暴力かは不明だが、ゴンさん達は全滅したと見て良いだろう。


 ただ、孤児院の皆が全滅したのに街が無事だったのは何故なのかは不明だ。



 他にもまだわからない事がある。

 この街はアルベルトさんのシークレットクエスト時にダンジョン発生で滅んだはずだが──


 単純にダンジョンの発生で滅んだのか? アルベルトさんがいるのに?


 という疑問も残っている。



 まぁ、そんな事態を事前に回避するには少しでも間引きする必要がある。


 孤児院の皆は辛い過去を抱えている。

 それでも笑顔で一生懸命に生きている。それをこんな所で終わらせるわけにはいかない。


 俺が頑張ってシナリオが変わるなら喜んでやろう。


 最初は逃げる気満々だったが──


 今では俺にとっても大切な居場所だ。




 だから、俺はなんとかする為に──


 


 抜け出す為にサラさん、カオルさん、ミカ、ティリー、シェリー、ミーヤをマッサージでさせたのだ。

 ミーヤは多少苦労したが、なんとか逝かせる事に成功した。


 全員がセクシーな格好で気を失っている。



『喘ぐなら──喘ぐ前に昇天させようホトトギスか……』


 そんな格言ねぇよッ!!!!



 とりあえず、これで俺を追いかける人はいない。



 俺は孤児院の出口に足を進めるとヒメがいた。


 さっきメールしてたのに何か用があるのか?


「肉大量にゲットしてこい★」


 肉の為に応援にやってきたようだった。


「わかってるよ。朝には戻るから──もし気がついたら、追いかけて来ないように説明頼んだぞ」


 俺はそのまま孤児院を後にする。



 防壁を紐で乗り越えて外に出た後は『マップ』を起動させる。


 モンスターはやっぱり増えている。


 まばらにいる事がせめての救いだ。


 調べた限りでは近くにはいないが──やっぱり、原因となるフィールドボスがいるんだろうな……。



 さて──さっさと討伐するか。


『マップ』と『紐魔法』のコンボを使う──


 使うのは【土蛇】と【風蛇】の合わせ技だ。


 まずは【土蛇】で動きを止めてから【風蛇】で首を切断していく──


 モンスターは一瞬して殲滅させれていった。


 ただ、問題もある。


 回収をするのが凄く面倒臭い……。


 これも『マップ』でなんとかならないだろうか?


 モンスターの死骸と表示された所に『イベントリ』とのコンボを試してみると──


 簡単に出来てしまった。


『マップ』さんがチート過ぎる……。


 まぁ、これなら狩りのスピードを落とさなくても大丈夫だ。


 後は上位種ぐらいかな? 上位種だけあって首が強靭過ぎて【風蛇】だと切断出来ないんだよな……。


【爆火】は肉が傷付くしなぁ……水魔法が無難だろう。


 今度は紐に『水魔法』を同期させる。


「──“紐技”【魔式:水蛇】からの──【水縛】ッ!」


【水蛇】は基本属性の中では正直1番攻撃に向かない。だが、そこからの発展技が優秀だ。

【水縛】は【水蛇】で捕まえた瞬間に紐に含んでいる水を大量に出して水の中に閉じ込める技だ。


 水の中では水圧もあるし、自由に力が発揮されない。


 これで──させる。



 しばらくすると、上位種の反応が消えた。


 近くに行くと宙に浮かぶ水溜りの中で亀甲縛りされていた。オークの上位種はとても苦しそうに死んでいる。


「絞殺と同じぐらい、エグい技だな……しかし見た目がなんとも言えない……」


 これなら上位種であっても簡単に倒せそうだな……。


 その後は街の周囲のモンスターを根こそぎ狩り尽くした。


 薬草も『マップ』で採取出来ないかと試したら出来たので乱獲しない程度に集めておいた。



「うん、魔法とマップが使えるだけでイージーモードだな。倒した奴らをどんどん回収──っと。けっこう街から離れた場所まで来たな……ん?」


『マップ』を確認すると離れた場所で戦っている人達がいた。


 夜中だというのに精が出るな。


 というか……これじゃん。


 しかもモンスターがオークキングかよ……確か討伐ランクAの強敵だ。


 こいつが二次災害のフィールドボスだろうな。


 そういえばゴンさん達──


『俺達今度子供が生まれるんだよ』

『院長の依頼が終わったら──結婚するんだぜ』


 ──とか色々と死亡フラグを立てまくってたな……。


 さすがにここで死なれると子供が可哀想だな……それに何でここにいるのかも聞いておきたい。



 とりあえず、助けて恩を売るか──

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