第54話

「今日は一昨日よりも多めに狩りましょう」


 俺の言葉に狩りのメンバーが頷く。


 既にスケルトンズは配置について薬草採取をしてくれている。


 オークは最低でも30匹目標だ。

 一昨日は20匹分ぐらいだったからね。ゴブリンやウルフ系のモンスターは200匹以上だったから効率が悪い。


 もっと稼ぐにはオークを効率良く狩る必要があるだろう。


 その為にちょっとした実験をしているのだが──


「あんたいつの間に縛ったの? 戦えないじゃない……しかもまた?」

「不満そうにするなよ……どうせゴブリンしか今の所現れていないんだ。オークの時に活躍してくれ。ほら討伐部位を切り取ってくれ」


 ミカは不満そうに愚痴るが、戦闘にならずに無力化しているので許してほしい。それにオークを倒す時に体力が尽きていたら嫌だからな。


 さっき、試してみたのだが、『マップ』と『紐魔法』のコンボが可能だった。

 これはかなり有意義な情報だ。狩りの効率はかなり上がるだろうと思っている。



 とりあえずマップを開いて確認するか──



 ……なんか、やっぱり増えてね?


 オークも増えてはいるが、他のモンスターもかなり多いぞ?


 もしかしてダンジョンが原因か?

 討伐が上手く行ってないのか??


 ゴンさんに聞いてみる事にした。


「ゴンさん、モンスターがやたら多いんですが心当たりはありますか?」

「坊主は索敵も出来るんだな。大したもんだ。心当たりは一つしかない。ダンジョンから溢れたモンスターが各地に散らばってるからだろうな……スムーズに討伐が進んでいない。もしかしたらこっちに集まってきている可能性はあるかもな」

「そう、ですか」


 これけっこう不味いんじゃないのか?


 昨日狩りをしてないだけで増え過ぎだろ……。


 間引きもする必要があるな……このままだと街が襲われても不思議じゃない。


「どれだけいるのかわかる? 俺の『索敵』では全然わからないんだけど」


 カオルさんが聞いてくる。スキルでは有効範囲が限れてるからな……この『マップ』がチート過ぎるんだよな……。


 えーと、ざっと数えて──


「ダンジョン方面は半径10キロ以内をざっと数えて500は超えてますね……」

「「「500?!」」」


 全員が俺の言った数に驚く。


 ゴンさんはしばらく考え込んでから口を開く。


「坊主──それは確かなのか?」

「えぇ、間違いありません」

「なら異常事態だな。ダンジョンから溢れたモンスターが原因で──もしかすると、に繋がった可能性があるな……」


 二次災害?


「二次災害ってなんですか?」

「ダンジョンから溢れたモンスターが少数であれば各地に散らばるだけなんだが──あまりに大量に溢れるとコロニーを作る事が稀にある。すると魔力だまりが出来て更にモンスターが繁殖する。つまり──氾濫スタンビートがダンジョン外で起こるって事だ。ダンジョンが危険視される理由だな。しかし、俺らがいた時はそこまで溢れさせていなかったんだがな……こっちにモンスターが集中してるのか?」

「……なるほど……」


 モンスターの群勢が出来上がっていたら厄介極まりないな。上位種もちらほらいるし、その二次災害の可能性が高いかも。



 もしかして、アルベルトさんのシークレットクエストはこれが原因なのか?


 この状況でサラさんやミカ達が死んだ?


 しかし、ゲームでは街は滅んでいなかった気がする。


 食糧難で狩りに出て死んだのか?


 それなら可能性としては十分にあるが──


 引っかかるのはゴンさんがいるのにそんな状況になったのか、だ。


 ゴンさんは間違いなく強い。

 俺が出会った中では2番目だ。

 そんなゴンさんが負けるようなモンスターが存在している可能性があるのか……。


 いや、数は暴力だ。こちらの体力や魔力が切れれば普通に負ける事もあり得るか……。


 どちらにせよ、深入りすると危険だな。


。狩りは午前中で切り上げて、午後からお店をしましょう。ゴンさんはギルドで情報収集をお願いしたいです」

「そうだな。俺もその方が良いと思う」


 ゴンさんも同意してくれている。

 やはり、判断としては間違っていない。


「でも、お肉足りる?」


 ミカの心配はごもっともだ。肉が無ければお店が出来ないからな……。


「けっこうなモンスターがいるしな。たぶん午前中だけで昨日以上は狩れると思うぞ?」


 ミカもトラウマを乗り越えられそうだし、ここで中止にはしたくない。


「坊主、無闇矢鱈に出歩くのは危険だぞ?」

「大丈夫です。俺に案があります────」


 俺は皆の不安を解消する為に説明していく。

 皆は“そんな事が本当に可能なのか?”と疑問符を浮かべていたが、ここに到着するまでにを見せていたので納得してくれた。


 後は確認をするだけだな。



 サラさんとミカには“快楽紐”を装着する。正気を保つ為と、トラウマ緩和の為だ。


 そして、スケルトンズの何体かを招集させて準備完了だ。


「それじゃ──始めるぞ。──“紐技”【魔式:土蛇】──あっちですッ!」


 俺は


 そして、モンスターのいる場所に案内する為に駆け出す──



 モンスターのいる場所まで到着すると、皆は──



「「「?!」」」


 驚いていた。


 それもそうだろう!


 土で覆った紐でモンスターはになっていたんだからな!


 とりあえず確認は成功だ。

【土蛇】は捕縛に適した“紐技”だ。オークの怪力でも抵抗出来ないようだ。


 マップのピンに合わせて紐を出現させると簡単な命令しか出来ない。例えば──“縛れ”とか“殺せ”みたいな単純な事しか出来ないみたいだ。


 というか、この縛り方はどうにかならないのだろうか?


『最初にインプットした縛り方になるよ★』


 ……お前のせいかよ?!


 まぁ、良い……それでも狩りであれば十分効果は発揮するしな。


「固まってないで、さっさとトドメを刺していくぞッ! スケルトンズは討伐部位の回収だ。俺はフォローしながら肉を回収する」

「「「了解ッ!」」」


 そして──


 あっという間に戦闘は終わる。


 もはや、戦闘というよりは虐殺だろう。



 この調子で昼前までやるか──



 ────


 ────────


 ────────────




「ムゴいですね……」

「そうだな……奇襲も受けずにあっさりと討伐出来るとは……縛り方は確かに性癖が歪んでるな……」

「ですね♡ うふふふ、さすがはロキ君です♡」

「もう何も怖くない♡」


 カオルさんは狩り方にドン引きしていた。

 ゴンさんも同様に頬が引き攣っていた。最後に失礼な事を言われたけどな!

 サラさんはまだ『狂気』スキルが発動しているようで俺の信者みたいな事を言っているし、ミカはどこぞの魔法少女の死亡フラグの台詞を発情しながら言っている。



「オーク42匹、ゴブリン260匹、ウルフ223匹、それぞれの上位種が合計40匹ぐらいか……まぁ、半日の成果としてはとても良いね。さぁ帰ろう」


 この辺のモンスターはほぼ狩り取ったな。

 危険も少なくなったはずだ。


 オークの上位種はさすがに【土蛇】での拘束するのは無理だったので、予め【風蛇】でダメージを与えながら足止めしてから皆で一切攻撃で倒した。


 型にハマれば余裕だった。



「でも、急に切り上げて帰って準備とか出来るかな?」


 ミカの不安はもっともだ。


「大丈夫。エリザベスを先に帰らせて伝言を伝えているから用意してくれているさ」


 途中からエリザベスとヒメには孤児院に伝言を頼んだので、帰ったら即お店が出来る状態のはずだ。


 当然、スケルトンズも一通り薬草は採取済みで撤収している。



 後は、帰ったら肉を男衆で切り分ける作業だ。



 まだまだ今日は忙しくなるぞ──

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