第22話

 俺はミカに連れられ移動する。


「はぁ……あんた何事してんのよ……」

「いや、普通にマッサージ?」


 何故か呆れられているが、俺はマッサージしかしていない。でも、後ろめたいから疑問系ではあるが……。


「はぁ……マッサージであんな風になるわけないでしょうが……あの変な紐使ったんじゃないの?」


 ……なんだろ、この探りを入れられてる感じは……。


 そういえばミカは俺の“快楽紐”受けた事あるもんな……マッサージがオリジナルなんだよ、とは説明はしないし、したくもないが。


 サラさんみたいなマッサージをしてくれって言われても断りたいと思う。


 また変態って言われるからな……。


 さて、話を変えよう。



「あ、そうだ。アルベルトさんの職業ジョブって何なの?」


 これ凄く気になってたんだよな〜明らかに強すぎるから。


「『』よ」


 は?


「最強職業ジョブの一つじゃん……」


 そりゃあ強いわけだよ……ゲーム内でも素手最強職って言われるぐらいだ。この世界でもおそらく最強の一角だろう。



 ちなみに“帝”の付く職業ジョブになるには“聖” 職業ジョブを習得している事が前提だ。


 俺もゲーム内では『賢帝』になる前は『賢聖』だった。ちなみに『賢聖』ってのは俗に言う『賢者』の事だ。


 前も言った覚えがあるが、『帝』になる為には運の要素が絡むし、特定の条件をクリアしないといけなかったりする。しかも条件内容がベリーハードなので狭き門だ。



 ──ん?


 拳帝──アルベルト?



 あ、思い出した……。


 確か、ゲーム内のメインシナリオ中に発生した緊急クエストだったかな?

 クエスト内容は街に襲うモンスターから街を守り、ボスを討伐するというものだったはずだ。


 その時に街の守りを任された人──


 それが『拳帝』アルベルトだった。


 この人が守りに専念したお陰で強力なレイドボスをプレイヤー達が倒せた。


 この時、俺は色々と調べたのだが──


 設定上、アルベルトさんはで人の為に参加しないはずだと公式に記載されていた。


 だが、知り合いはクエストが始まる前に何度も会いに行ったそうだ。そして弟子になった。


 その事があり、街の防衛をしてくれたと聞いている。



 何で忘れてたんだろ?


 きっと訓練がハード過ぎたせいだな……。


 しかし、ゲーム内の登場人物の名前とかが同じなのって偶然なのか?


 アルベルトさんの戦いぶりはNPCとは思えない強さを誇っていたので、何かクエストが発生とかしないかなとイベント後に会いに行った記憶がある。


 知り合いはイベント前に根気強く会ってクエストが発生したらしいが、俺の時は発生しなかった。


 というか、と言われて門前払いされたっけな……。


 その時はイベント前じゃなければ弟子になれないとか、他に何かの条件があるのかもしれないと諦めた。


 ちなみにアルベルトさんはゲーム内とは見た目が大分違う。ゲーム内では痩せ細り、酒に溺れていた。


 そして、その知り合いは緊急クエストのイベント後にシークレットクエストが解放されたと言っていた。


 その知り合いのプレイヤーが後のゲーム内での『拳帝』だ。



 当時の事を思い出してはいるが、NPCの名前にミカやサラさんはなかったはず。


 いや──


 既にのかもしれない。



 確かシークレットクエストの内容は『拳帝』アルベルトのだったはずだ。


 最愛の子供達を殺されたと知り合いから聞いた気がする。子供達というのは孤児院のという意味だろう。


 ミカ達もその時に死んだ?


 んー、何かがな。


 一つわかるのは今後シークレットクエストが発生する出来事があるという事だ。


 シークレットクエストの内容はダンジョンボスの討伐だったはずだからモンスターに殺されたのが有力かな?


 まぁ、その時に街が一つ滅んでいた記憶があるが……。


 もっと聞いておいたら良かったな。



 まぁ、でもミカはまだ生きている。



 この世界が俺の予想通りであるのなら──



 ゲームのになるのかもしれない。



 ゲームの設定が実は異世界を元にした物なのであれば当然メインシナリオも起こり得ると考える方が妥当か?


 俺はまだこの世界の事を何も知らない状態だ。今後ゲームの設定とすり合わせていくのがいいだろう。


 とりあえず、覚悟だけしておこう。



 メインシナリオはまだ先の方だからまだ良い。

 時系列的にたぶん2年後だろう。



 問題は──アルベルトさんの裏設定部分だ。


 この先にミカ達が死ぬという場面が訪れる可能性がある。


 それがいつ、どこで起こるのかはわからない。



 俺はどうしたら良いんだろうか?


 守る? 


 いや、今の力では無理だろう。

 ミカやサラさんが死ぬような相手を俺がどうにか出来るとは思えない。



「ねぇ? どうしたの? 怖い顔してるけど?」

「あぁ、何でもないよ。ちょっと、考え事をしてただけさ」

「そう……無理しないでね?」

「ん? 心配してくれるのか? てっきり嫌われてるもんだと思ってた──グハッ」

「ロキらしくないって意味よッ!」


 ミカは俺の鳩尾に一発入れて部屋に戻って行った。


 嫌われてはいないようで一安心だ。少しぐらい距離は縮まったかな?


 早く笑わせたいものだ。



 そういえば、ヒメに何故連れて来られたのか聞いても、ふざけられてまともな返事はない。


 ヒメも一枚噛んでいるのか?


 封印を解くのが目的なのであれば達成されている。それに住む場所はここでなくてもいいはずだ。


 1番謎なのが──一緒に逃げようと連れ出そうとしてものは何故だ?


 まるで──


 


 それともただ単に面白いからここにいるのか?



 まぁ、なんやかんやで俺もこの生活を気に入っている。訓練以外は、だが……。



 考えていてもわからない以上、俺がするべき事は──



 最速で強くなる──



 そして、来るか来ないかわからない運命シナリオを切り開くッ!



 いや、紐しか使えないし“”────が正しいか。



 俺の“”を見せてやる──



 それから、毎日──皆が寝静まる頃に自主練を開始した。

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