第15話

 サラさんは一瞬驚いたが、直ぐに楽しそうに笑みを浮かべる。


 俺もニヤニヤが止まらない。俺はついにの可能性に気付いた。


 やった事は簡単だ。腹部に巻き付けた紐にスキルをしただけだ。


 実はさっき紐魔法の文字をクリックして調べた時だ。


 こう表示された──


【紐魔法】

 Lv1:紐を創り出せる。

 Lv2:が出来る。


 つまり、このLv2の効果を簡単に言うと──スキルを紐に付与する事が出来るのだ。


 今回、付与したスキル、それは唯一近接戦闘に使えるであろうだ。


 やはり、このヒモという職業ジョブはスキルの習得が不可というデメリットはあるが、戦闘面ではスキルの限定解放と紐魔法が救済処置を行なっているのだろう。



『え? そうなの?』


 …………何でお前が知らねぇんだよ……俺をヒモにしたのはお前じゃねぇかよッ!?


『いや〜スキルをコピペして都合良く封印出来た上に僕と相性が良さそうなのがそれしかなかったから★ はしたけど、ぶっちゃけると詳しい事は知らない(ドヤッ)』


 イラッとしたのでヒメがいる方向に視線を送ると、腕組みをしながらドヤ顔をしていた。


 後でしばくッ!!!!



『はよ、おっぱい縛れ★』


 ……冷静になれ俺……例え激怒したい気分であっても、今は戦いの最中だ。冷静を欠けば直ぐにやられてしまう。


 油断したら直ぐに乱打が飛んでくるから、今は目の前に集中しよう。



 とりあえず、このヒモという職業ジョブは習得したスキルが限定解放したら、紐魔法を媒体にしないとスキルが発動しないのだろう。



 しかし……これ大人の状態で異世界に来てたら限定解放の条件が非常に厳しいな……だって養われる事が前提だし……しかも、もれなくセクハラ変態のヒメも付いてくる。


 まぁ、かつて習得したスキルが無駄にはならないという事がわかった上に、色々と使えそうならこの職業ジョブでも十分強くなれそうだな。



 と言っても、現状──身体強化と劣化版の武技ではサラさんの攻撃を避けるので精一杯だけど。


 とりあえず、即死は免れそうだ。


 後はどうやって終わらすか、だ。


 さっきよりは距離も取りやすいし、それなりに避けれるから余裕はある。


「あー楽しい♪」


 我が天使であるサラさんも大層お喜びになっておられる。殴りながらだが……。


 そろそろ俺のターンにしたいところだ。


 無力化がベストだが、何か方法はないだろうか?


 魔法は正直言って使いたくは無い。

 スキル欄に記載されていないのに使えるというのは不信感を招くだろう。


 これから一緒に暮らすのに隠し事をするのは気が引けるが、異端な視線は向けられたくない。


 ヒメによるラーニングモードを使っても──おそらく魔法を付与して使われる可能性もあるだろうし、何より使だろうから論外だ。


 さっきから、おっぱいを縛れとうるさいからな……。


 何よりさっきからサラさんの攻撃を避ける度に『おっぱい』とメールが来やがる……。


 サブリナル効果で頭の中がでいっぱいだッ! 


 しかも、サラさんの巨乳が拳を振り抜く度にバルンバルン揺れるから普通に視線がおっぱいに行く!


 なんだこの煩悩との戦いは!?



「ロキ兄〜“おっぱい”ばっかり見てたらダメだよ☆ もう〜変態だな〜♪」


 うぉいッ!!!! なんて事を大声で言いやがるッ!



 これ以上長引かせたら、ヒメによって俺が社会的に抹殺されてしまうって!


 さっさとなんとかしよう──



 紐魔法以外で残りのスキルで怪しまれず、そしてバレずに使えるのは──


 家事万能、地獄耳、マッサージの3つ。


 家事万能は戦闘で使えるかと聞かれると無理だ。


 地獄耳は情報収集には使えそうだが、現状の打破には向いていない。


 残りは──


 マッサージだか……これ使えるのか?



 マッサージの効果には確かってあったが、他人に対しては疲労回復効果のあるスキルだったはずだ。

 せっかく消耗させた体力が回復しないか?


『はよう使うのだ★ 卑猥な姿を所望する!』


 いちいち鬱陶しいメール送ってくんなよ?!

 後、隣にいるミカに変な事言ってないだろうな?! さっきから俺の事を汚物を見るような視線を向けてきているぞ?!


『そんなのはどうでもいいから、さっさと逝かせろ☆ 逝かせたら立てないぞ♪』


 どうでも良くないッ!


 ……はぁ、ヒメもそう言っているという事は“快感増進”って俺の思っている通りの効果だろうな……。


 確かに……無力化するのに最適かもしれない。


 まぁ、試す価値はある。


 というか、サラさんのあられもない姿はとても興味がある。


 なんせ、俺は女性とのお付き合いも無く、風俗に行く勇気も無かった。

 2次元かAVぐらいしかそういうのは見た事が無いからな!


 童貞を貫いたら──


 ゲームでは魔法使いと賢者を飛び越えて『賢帝』になれたんだぜ?


 凄いだろ?



 さて、そんな事はどうでもいい。


 エロ本で起こり得る事が現実で起こせる──


 是非、実物を拝見してみたいッ!


 畜生みたいな考えではあるが、一応弁明しておく。


 俺が無事に生き残るにはこれしかないんだ。



 サラさんを見据えると──


「体術スキルを得ましたか……──来なさいッ!」

「──行きますッ!」


 納得したような表情をして受けの姿勢を取る。

 先程まであった油断は無い。俺がこの土壇場で体術スキルを得たと思っているはずだ。


紐を使おうとも、先程までのように一筋縄ではいかないだろう。


 一応、マッサージの効果が思うほど発揮されなかった場合のプランもちゃんとある。


”と“”の組み合わせで致命傷は避けて引き分けに持って行くッ!


 これしかないッ!



 願わくば──



 マッサージの“快感増進”効果が発揮されますように──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る