第3話
「うおッ?! …………なんか、異世界こぇな……」
襲われている現場まで来たが──
俺の目に映った光景は、最後の1匹になったゴブリンが素手で殴り飛ばされる瞬間だった。
地面には顔面が陥没した状態のゴブリンが2匹散らばっている。
見た感じ──
『体術』スキルの武技である“正拳突き”だろう。
スキルの中にはスキルLvに応じて色々と使えるものと、スキルLvが無いものがある。
スキルLvがある場合──
戦闘職であれば技などの武技、魔法職であれば魔法の種類、生産職であればそれに通じた生産出来る物が増える。
武技があるのであれば、クールタイムも存在するんだろうな──
そんな思考が巡るが、目の前の光景を見て直ぐに正気に戻る。
なんせ現場にいた青い点は冒険者ではなさそうだったからだ。
予想外の光景だ。
まさか普通の黒Tシャツを着た少女がワンパンでゴブリンを倒せる異世界だとは思いもしなかった……。
これがこの世界の普通なら俺は冒険者を目指すのは諦めようと思う。今の俺の身体能力で紐魔法を駆使しても、あの少女に正面からは勝てる気がしない。
それぐらい速いし、力もある。
うん、最悪は知識チートで成り上がるのも悪くないだろう。というか生活が出来たらそれで良い気がしてきた……。
とりあえず危機は去ったみたいだし、ここは人と出会えた事に感謝しよう。
あまり褒められた行為では無いが、まずはこっそり付属機能の『鑑定』をしてみようと思う。
職業とか気になるし……。
名前:ミカ(10歳)
職業:拳闘士Lv4
スキル:体術Lv5、腕力強化lv3
ふむふむ、ミカちゃんという名前で同い年か。真紅の瞳に髪色でボブカットの可愛らしい感じだな。前髪に髪留めをつけている。
10歳のわりにそこそこ胸あるんじゃないか?
美人になりそうだし、胸も将来有望だ。
おっと、職業はっと──
拳闘士か……通常どの
しかも、
それと、下位職なのにスキルの構成が良いな……羨ましい……。
これで“スキル補正”と“
数値で見えなくても、この破壊力を見れば補正が上乗せされているのがわかる。
これなら余裕でゴブリンを倒せてもおかしくは無い。
この子と一緒なら安全に街まで行けそうだな。
さりげなく声をかけて異世界の情報を聞こう。
何より可愛い子と知り合いになれるのは嬉しいしな。
現実世界──いや、前世か? その時は極度のコミュ障だったからちゃんと声をかけられるか不安ではあるけど必要な事だと割り切ろう。
頑張れ俺ッ!
おっと、少女が去ろうとしている。早く話しかけないとだ。
やっぱり初対面だから爽やかに笑顔で挨拶して良い印象を持ってもらうのが1番良い方法だ。
俺の先の人生もかかっているんだ。勇気を出して──
「──こんにちわ──?! 危ないッ!!!!」
俺が声をかけると同時にミカの後ろから隠れていたゴブリンが襲いかかろうとしていた。
直ぐに紐を射出してゴブリンの腕を絡め取り、攻撃を逸らす事に成功する。
戦闘時以外はマップを常時起動させておく方がいいな。
「──?!?!」
ミカも後ろを振り向き襲われている事に気付く。
ゴブリンは再度攻撃しようとしたので、俺は無我夢中で紐を使ってゴブリンの動きを封じるように念じながら使う。
すると、あら不思議──
ゴブリンの亀甲縛り宙吊りが完成した。
何故、亀甲縛りなのか自分でもわからない。
ただ、無我夢中で捕縛しようとしたらラーニングさんがやっていたように自然に体が動いたのだ。
他意は無い。本当だ。
俺の表情は『どうしてこうなった?!』とポカンとしているので間違いない。
ミカも宙吊りのゴブリンを見て呆けている。
一応、命の恩人とまでは言わないがピンチを救ったので印象は良いだろうと思いたい。
そう思って異世界初の人に気不味そうに話しかける──
「……だ、大丈夫でしたか??」
この時、俺の顔は間違いなく引き攣っていただろう。それぐらい不器用な笑顔だった。
「……へ…………い」
ミカは何か言っているが俯きながら震えている。
きっと怖かったのかもしれない。
ここは安心させるような言葉が良いのだろうが、何も思いつかない。
「怪我は無いですか??」
とりあえず身を案じる言葉を選んだ。
ミカは口を大きく開いて声を出す──
「──変態ッ!!!!!!!」
異世界で最初にかけられた言葉は少女からの辛辣な言葉だった──
いや、確かに縛り方はあれだけどさ……。
おい、ゴブリン……その気持ち良さそうな表情を止めろッ!
更に誤解されるだろ?!
────────────
ミカのイラスト貼りましたのでイメージ補完にどうぞ(σ゚∀゚)σ
https://kakuyomu.jp/users/tonarinotororo/news/16817330657891939101
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます