第2話
はぁ……なんか精神的疲労が酷いな……悶えるゴブリンとか誰得だよ。
しかし、さっきから歩いているけど、木々しかないな……。
早く人里に行きたい。
なんせ、ここは異世界だ。他にも強いモンスターだっているはずだ。
油断せずに行こうと思う。
いつでも戦えるように紐を出して練習しながら進む。
紐は体周辺から出せるし、思い通りに動かせる事が出来る上に伸縮自在だ。複数の紐も出せるが、制御が甘くなってしまう。
紐は魔力で作り出しているようだが、やはり魔力が減った感じはしない。“称号補正”は機能している気がする。
そもそも魔力ってどこにあるんだろうか?
ゲームの時に魔法を使ったらMPが減っていたが、ここは異世界で現実。魔力を消費すれば精神的な疲労があるはずだ。
ラノベとかでもそこは定番だったしな!
まぁ、使っていればその内わかるだろう。
しかし、このまま複数のゴブリンと出会ったら最悪だな……早々に詰みたくない。
せめて、『索敵』『気配察知』『危機察知』とかのスキルさえあれば危険を回避して進められるんだが……。
他にも何かないかと調べる事にした。
ステータス画面を開くと──
マップ機能、無限収納、メール機能、ラーニング機能のアイコンが存在していた。
他のアイコンが消えている事から、今上げた機能はおそらく使える確率が高い。
まぁ、ラーニング機能は使う事はないだろう。これ以上紐に可能性を見出せないからな……。
試しにマップ機能のアイコンを押したら周辺地図が表示される。そして赤い点と緑の点があった。
赤い点はモンスター、緑は俺だ。
これはゲームの仕様と同じだった。
今の俺は『索敵』スキルも使えないから、索敵代わりに使えるのでモンスターのいない場所を歩く事が出来る。
正直助かった。
何が助かったって? そりゃーモンスターと戦わずに済む事だ。
先程、試しに近くにあった大きめの石を持ち上げたのだが、普通に持ち上げられなかった。
この世界にレベルの概念が無い場合──
強くなるには転職による恩恵である
俺は“賢帝”になるまでは転職を繰り返し、スキルを地道に集めてゲーム内で強くなった。
転職が出来ない以上はスキルを集めたいが、
今の状態で最弱のゴブリンと殴り合った場合──簡単に負けてしまうだろう。
ここはゲームで集めた無限収納に眠っているであろうアイテム頼りで生き抜こうと決めた。素材もたんまりとあるから売ればお金に困る事もないはず。
そして無限収納を使用する──
「おっ、これもゲームの仕様と同じだな……出し入れは出来る──って、マジかよ……」
試しに近くにあった石を出し入れしてみた。
ゲームと同様に使えた。
だが、リストを確認すると──
肝心のゲームで集めた素材やアイテム、装備、課金で手に入れた物は全て無かった。ゲームからの持ち込みは不可のようだ。
いや、正確には1つリストに記載されていた。
『封印されし紐』とあった。
どう考えても危険な臭いしかしない。
俺はソッと無限収納の画面を閉じた。
そして、天を仰ぐ。
アイテム頼りで生き抜こうとした矢先にこれか……俺の気持ちは落ちる所まで落ちた。
メール機能は正直使えないだろう。
一応、送受信出来るみたいだけど、フレンドがいないのに意味がない。
他に何か出来ないかと調べていると『鑑定』スキルが無いはずなのに使えた事に気付く。
地面に薬草の名前が表示されたのだ。
よく考えたらこの機能はプレイヤー全員にあった気がする。つまり、ゲームの仕様通りだ。
ゲームには『鑑定』ではなく細かな説明が記載される『詳細鑑定』があったはずだ。
とりあえず、周囲に一応食べれる物が無いか調べたが、何も無かった。薬草とかはあったのでそれは採取しといたが……。
早く森を抜けて人里に行きたい……モンスターの脅威もあるし、このままだと飢え死にしてしまう……。
テンプレなら街とかに到着すれば冒険者ギルドがあるはずだ。ゲーム内にもあったからあると信じたい。
登録さえしてしまえば、雑用の依頼で食いつなげられる。
問題は──
使えるスキルは紐魔法のみ……そして職業はヒモだが……なんとかなる──のか?
馬鹿にされたり、無能扱いされる未来が見えるな。
あんまり良く無い未来を思い浮かべてしんみりしてしまう。
最悪は誰かのヒモになろう……幸いメイキングした時に金髪碧眼の美少年にしている。
ゲーム内でも王子と呼ばれるぐらいだったしな。まぁ、王子の前に『悪魔』とついていたが。
…………いやいやいや、ダメだダメだ。
ヒモは無しだ。100歩譲ってヒモになったとしよう。
ここは異世界だ。拾ってくれた人が良い人という保証が無い。
とりあえず、最低限の自衛は出来るようにしないとダメだな。
単独で行動しているゴブリンと実戦しながら街に向かうか……その前にゲームと同じならマップ機能で縮小拡大が出来たはずだ。
まず街を探すか。
マップを起動させる──
すると近くで赤い点と一つの青い点があった。
青い点はゲームの仕様ではNPCだった。
つまり、人がモンスターと戦っているか──襲われている可能性が高い。
人がいるという事は近くに街や村があるという事だ。
マップを縮小すると近くに街があった。
本来であれば危険を犯さずにスルーするのが得策だ。
なんせ赤い点が3個もある。
あのチュートリアルだけでは戦闘能力の低い子供が複数のモンスター相手に勝てるとは到底思えない。
なんせ俺にはラーニングモードさんのように紐を同時に複数操る事は出来ないからな。せいぜい2本が限界だ。
「このモンスターがいる場所に行くべきか──行かないべきか……どうするか……」
この青い点が冒険者であれば助けは必要ないかもしれない。
俺は昔からとある事情で基本的に他人に無関心だ。
他人がどうなっても知った事ではないし、心底どうでも良いと思っている。
だが──ここは異世界で初めて来る場所だ。
もし一般人が襲われていたら、助けて恩を売っておけば何かの役に立つかもしれない。
────最悪は逃がす事ぐらいは出来るか?
…………命の危機はあるが、ここでこの世界の人と知り合いになれれば色々と情報が得れるのは大きなメリットだろう。
命を賭ける意味があるのかと問われると……正直微妙だと思っている。
そもそも極度のコミュ障だから人と話せるのか不安だ。
おっと、今は襲われてる人をどうするかだったな。
これが冒険者なら声をかける。冒険者でなければ助ける──というか逃す方向でいくか。
紐しか使えなくても足止めして逃げるぐらいなら出来るはずだろうし、遠くから攻撃すれば安全は保たれる。それに紐魔法の良い練習にもなるはずだ。
マップを再確認すると赤い点残り一つになっていた。
もしかしたら襲われているのは冒険者の人なのかもしれないな。
うん、もし戦闘になっても1匹だけならなんとかなりそうだし、命の危険はなさそうだな。
良い人そうなら話ぐらいはしよう。ヤバそうな人なら即退散だ。
よし、行くか──
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