君になら、傷つけられてもいい

私が千歳に告白をした時、彼女は困惑していた。

「ああ、これはダメだな」

その顔を見て、自分の告白が失敗に終わったと思い込んでいた私に対して、彼女は意外な言葉を返してきた。

「いいよ」

でも、その後にこう続いた。


「でも、傷つくかもしれないよ」


風が私たちの間を通り過ぎ、千歳の髪の毛を揺らした。

隙間から見える目からは、覚悟がにじみ出ている。


「アナタに傷つけてもらえるなら、それでいい。ううん、それがいい」


何も考えずに出たその言葉を、千歳は愛おしそうに受け取った。

私たちは多分これから傷がつく。

だけど、それすらも愛おしいと思える日々を過ごしていく。

それが多分、幸福というものだと思うから。


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