映画って、好きなんだ

「あの映画、面白かったね~」

千秋の言葉に頷きながら、映画のことを思い出す。

うん、1個も覚えてない。

でも、それは当たり前の話。

私が見ていたのは千秋の横顔であって、映画じゃない。

彼女の喜怒哀楽が合法的にずっと見られるのは、映画館しかないのだ。

だから私は彼女を誘った。

「どのシーンが一番良かった?」

「そりゃあもちろん……」

語り癖のある彼女のことだ、話さえふればずっと話している。

だから、映画って好きだ。

内容は……これからも多分覚えないけれど。


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