いつの日か、通り雨

秋に降る雨の冷たさは、葵の手の温かさに気付かせてくれた。

下校中、急に降り出した冷たい秋雨は、私達のセーラー服をあっという間に濡らした。

「佳奈、このままだと風邪ひくよ?止むまでウチに来なよ」

葵の家から自分の家まで、あと15分は歩かないといけない私を気遣って、彼女は私を家に入れてくれた。


「佳奈、服脱いでお風呂はいってきなよ」

「いや、着替えないし」

「貸すよ、必要ならパンツも」

「パンツ以外貸してください」

「佳奈なら、フリフリのついたパンツが似合うと思います」

「帰ります」

「ごめんなさい、調子乗りました」

お言葉に甘えて葵の家のお風呂を借り、出たことを伝えると、次に葵が入った。


葵の部屋で、濡れてしまった自分の鞄の中身を確認する。

どうやら、中への被害はないようだ。

私は、底の方にしまってある折り畳み傘に触れた。

「君の出番は……当分ないかな」

ワザと出さなかったその傘を、また底の方にしまう。

葵が出してくれた温かい緑茶を飲みながら、次の通り雨はいつかな、と考える。

緑茶のおかげで、お腹がほっこりと温かくなる。

貸してくれた服に付いた、微かな彼女の匂いが愛しい。

そっと目を閉じ、眠りにつく。

このままずっと寝ていたい。

そんなことを考えながら。


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