臆病と花

 学校という名前の空間の中で、私と知恵は、多くの時間を共有していた。

 おそろいのシャーペンも持ったし、カバンに付いているキーホルダーも、一緒。


 帰り道、夏の頃には青々としていた葉っぱが少し黄色くなっているのを見ながら、くだらないおしゃべりをして、歩く。


 この時間が永遠に続けばいいと思いながら、時々見える終わりに、震える。


 笑っている知恵の顔、かわいくて……。

 それをこうやって近くで感じられるのが、嬉しい。

 でも、これ以上は望んではいけない。



 私の胸にある思いは、受け入れられても、受け入れられなくても、波風がたつ。



 好きも嫌いも、今より上下してしまう。



 その変化が、ものすごく怖い。



 完全な拒否だったら、私が諦めてしまえば、いい。


 だけど、受け入れられたのなら、二人で歩いていけるのかが、心配。

 それに、道が別れてしまう時のことを考えると、何もかもを諦めるのが最善だと思う。


 何も起こらない、臆病な恋心。


 私の胸をチクチクと刺してくるこの痛みを抱きながら、私は知恵の傍を歩くしかできない。

 変化の無い幸せを選んだのだから、仕方のない事なんだ。


 そう、言い聞かせる。




 でも、なんでこんなにも―――近づきたくなるんだろう。



 こんなことなら……恋を知らずに朽ちていく花に、なりたかった。


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