背中が痛い
「ねえ、私がアンタを裏切ったらどうする?」
困らせるような質問をさせたら、彼女は日本で一番だと思う。
私が困る様な質問を平気でしてくるので、彼女が口を開く度に、頭が痛い。
彼女が眠っているベッドの側面を背もたれにしているせいか、少しだけ背中も痛い。
「さあねえ、その時の私の気分次第じゃないかな」
「そういうの、ナシ」
ベッドの上で少し動くと、その華奢な両腕を私の腰の辺りに回して、顔を私の耳に近づけた。
「ほら、早く教えて」
媚びるように、誘うように、彼女がそう言う。
「そうね……ちゃんと殺してあげるわ、この手で」
両手に自分の両手を重ねると、彼女が嬉しそうに手を動かす。
「うん……いいね……私、亜樹ちゃんになら殺されてもいい」
耳元で、へへへと、小学生のように笑う彼女の声が聞こえたので、少しだけ顔を向けて、その唇を塞いだ。
柔らかな舌が、少しだけ入り込んできそうになったので、おでこに手刀をして、引きはがした。
「今ここで、した方がいいの?」
「今は、嫌かな」
彼女ははにかむように笑って、私に回していた手を離すと、またベッドの上に寝転がった。
崩れてしまった体勢を立て直して、背中をベッドの側面に預ける。
微かに残るキスの感触が消えないうちに、私は目を閉じた。
彼女の夢が見られるように、と願いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます