歪で、愛しい

 ―――思春期の女性の特徴は、体が丸みを帯びてくる。

 教科書のその言葉を、自分の体で理解し始めたのがいつだったのかは覚えていない。

 日々の授業と放課後を使いきる部活動に、少しの趣味の時間。それらが意識を支配していて、自分の体が女になっているのを見逃していた。

 だけど不思議なもので、自分の変化は知らないくせに、友人の夕佳の体の変化には気付いていた。

 腰骨と胸の辺りに滑らかなカーブが付き、華奢と言われていた体に色彩を乗せている。

 髪の隙間から見えるうなじからは、色香が漂っていた。

 大学生となった今になれば、ただの思い出でしかない。

 けれど、私は今だに鏡を見る度に夕佳の体を思い出して溜め息をつく。滑らかで、ひとつひとつのパーツが歪に、あの白い肌の中に納められていたあの体を。

 いつか勝てる日はくるのだろうか、そんなことを考えながら、へそまでTシャツをたくしあげる。

 へその横にあるキスマークを撫でる。少しの突起が愛しく私の指の腹にキスをした。

 キスマークの思い出を再生していると、携帯が鳴った。それを付けた張本人からだった。

 Tシャツを下げて、受話ボタンを押した。

「どうしたの、夕佳。こんな時間に」


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