アカイハナ

 ハナが私の指に傷をつけたのは、三日ほど前になる。

 あの娘はドジで、そのくせ何でもやりたがる。そのせいで周囲は何かしらに巻き込まれる。それでも嫌われずに許されるのは、彼女のキャラによるところだろう。

 彼女が私の手からプリントを貰っていく際に、左手の親指と人差し指の間に紙の縁を通したものだから、それが刃に変わり、薄く紅い溝を作った。

 白い肌に紅い線が走ったのを見て、彼女が必死になって謝ったのがかわいかった。

 怯え、震える、犬のような彼女。

 昨日も、一昨日も、そんな表情で私を見てきた。

 背に走るほの暗い喜びを、その時私は肯定した。

 今、私の勉強机を照らす卓上のライトの光を白い肌が反射をしている。

 左手の親指を右手で握り、少し力をいれる。治りかけていた傷口が開き、紅い液体に浸される。

 それを見ながら、私は明日も彼女のあの罪悪を感じている怯えた顔が見られるのを、喜んだ。


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