勝負なんて

「ほほう、これはまたえっちぃ下着ですなあ」

 次の時間の為に着替えていた未散のスカートを後ろから捲り上げながら、顎を擦って可奈は満足そうに頷く。

 その顔に後ろ回し蹴りが入り、可奈は更衣室の壁に背中からぶつかった。

「いったいなあ……何するんだよ、未散」

「そ・れ・は!」

 顔を真っ赤にして目をつり上げて彼女に近付く未散は、まるで鬼だ。

「こっちのセリフよ!このバカな!」

「あ、またバカと可奈を一緒に言ったな!」

「そりゃ言うわよ!アンタ、高校生にもなって恥ずかしくないの!?」

「ないよ」

「そりゃあ、パンツ見られてないアンタはいいわよ!」

「見せようか?」

「いらないわよ!まったく……」

「そういえば、未散のパンツさ、いつもより派手だけど、勝負パンツってやつ?」

「普段使いです!勝負なんてしません!」

「なーんだ」

 可奈は笑って、未散に抱き付く。

「なななななななな、何よ!」

 未散の体温が急上昇し、頭から湯気が出始める。

「安心した、未散がフリーで」

 耳から沸騰したヤカンのように湯気を吹きながら、未散は後ろにのけ反りながら倒れていく。

 後頭部から倒れた未散の口元はふにゃふにゃになるぐらいに弛んでいて、鼻からは噴水の如く鼻血がわき出た。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る