傷口

『血は一番汚いモノ』

 今日の保健体育で、私はそう習った。

 それが誰の血でもそうなのだ。

 どれだけの金持ちも、どれだけの無垢な少女も、どれだけの卑怯者も、全員が汚い血を体に巡らせながら生きている。

 その話を聞いて私の好きな彼女にも、その汚いモノが流れているのだと思うと、背筋に言いようのない寒気を感じた。

 外見から、穢れとは無縁に見える智にも、そんなモノが流れている。そんな現実に耐えられないのかもしれない。

 けれど、それは違っていた。

 その日、彼女の家に行き、いつものように制服を脱いで行為を始めようとしたその時、指に傷があるのを見つけた。

 理由を聞くと、休日にカッターナイフを使っていた際に誤って、自分で自分の指を切ってしまったとのことだった。

 私はほっとすると共に、その傷に惹かれた。

 汚いモノが溢れ出ていたであろう、その傷跡に。

 彼女の手を取り、傷のある指を口に含んだ。

 裂けている場所を犬歯で噛むと、生暖かい感触が舌の上に広がり、やがて鉄の匂いが口内を満たした。

 息を荒くする彼女の顔が、いつもよりも赤い。

 血が出ているであろう場所を奥歯まで入れると、私は甘く噛み始める。

 とめどなく出てくる血を飲みながら、私は背筋の寒気と、彼女の痛みの顔を楽しみ始めていた。

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