第5話

「…

今日もう泊まってけよ。

遅い時間は危ないけん。」


「…

うん。

そうしてもい?

あれ一人で受け止める余力がねぇわ。

もうHP0よ。

何だか酷く疲れた。」


「んだな…」


バス停じゃねぇ所で降ろされて,

七宝と結構な距離歩いた.

もしかしたら…

少し遠回りを態としたのかもしれないとか,

思ったりもした.

時々,振り返って確認してたけん.

暗くなったし,

普通に狙われる事もあるからなんかな…

さっきみたいなの…

もうマジで勘弁…






「風呂は?

先行って来いよ。」


「一緒入る?」


「何で?

せめぇし、のんびりして来いよ。」


ちょっと1人が怖いっち言ったら…

馬鹿にされんのかな.


「ふぅん。

んじゃま、

お先ー。

さんきゅー。」


何だか…

鼻の奥に血のニオイが残ってそうで,

何だか…

本当に,どうしようもなくなって,

口が震えて,

目からも溢れてきた.

シャワーと混じって,

きっと分からないよっち思い込んだ.

気を抜いたら

声も出ていきそうで堪えた.

出た時目が赤くないといいなとか,

この期に及んでも

体裁だけ整えようとする自分が

やけに滑稽やった.


「感謝ー.

気持ちかったわ.

お次どぞ.

お前の服はでけぇ.

袖も足も

だいぶ余るわ.」


「あいよ.

服は折っとくか

たくっとけよ.」


「右うまく上がらん.

ん”っ!」


「あー…

こい.

手伝う.


だぼだぼなんも

何かいいな.」


「あ”ぁ”!?」


「ふぅん…

うん.


セキュリティしっかりしてるし,

大丈夫とは思ってるけど,

何かあったら直ぐに

呼べよ?」


「…おう.」


そういう事か.

何か…

息苦しいな.


「何か食べよう.

出てから考える.

待ってて.」


「何か喰う気力ない…

腹も空かねぇし…」


「そういう時こそだろ.

腹減って仕方ねぇっち聞くより,

今は良かったわ.」


「あぁ,それこそ,

のんびり行ってこいよ.」


「ははっ.」

わりぃ,七宝.

今,お前の笑顔っち

マジで安心するっすわ.

言わねぇけど.


七宝が風呂から上がって,

何か作って,

何か一緒に喰ったはずなんだけど,

何だか,

ぼんやり進んでいって,

やっぱり何だか記憶が曖昧で,

よく分からんまま,

時間が過ぎ去った気がする.

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