これほどまでに、虚構と現実の境目を揺るがした作品を見たことがなかった。
海に面するハコという区切られた世界に、青という名のカミサマが派遣されるところから、物語は始まる。そこには白というカミサマと黒服の少女がいた。カミサマは、ハコを管理する代償に、自分の体と機械の体を入れ替えている。白は指一本だけだったが、青はいたるところ、臓器まで、機械と入れ替えていた。ここまではSF風だが、そこに突如「演技」の話しが紛れ込む。そして、青の存在と僕という存在が、交差していく。いや、青だけではなく、白や少女も、脚本家や俳優と交差していく。それだけではない。世界の全てであるように見えていたハコも、舞台装置と交差していく。
青は——、僕は——、君の為に君にとってのカミサマを殺した。
僕は——、青は——、カミサマ殺しのカミサマだったから。
そんな僕を、君は——、俳優として拒絶した。
君に足りないモノを僕が補い、君の辛さを僕が背負うと言ったのに、君はそれは全て自分の物だと言って、僕の存在意義を奪っていった。
果たして、ここは現実の舞台(世界)?
それとも、虚構のハコ(世界)?
どうしようもなく不安定な世界の中で、僕も君も生きている(生を演じる)。
是非、御一読下さい。