第3話 二人の強面親父

 俺はスパーダを駆り雪灯りへと向かう。湖畔に面した漁協の倉庫から、オレンジ色に塗装された水陸両用パワードスーツベルーガが飛び出して来た。乗っているのはアケローン漁業協同組合の奥出おくで理事長だ。ヘルメット部分は装着していないので顔は丸出しだ。


「理事長! 何やってんですか?」

「ああん? ウチの職員を殺した奴が雪灯りで暴れてんだよ。捕まえて焼き入れちゃる!」

「あれ? そんな事件あったの?」

「ああ。タレコミがあってな。確認したら事実だった」

「なるほど」


 沿岸警備隊に情報提供したノエルだろう。的確な情報を流しテロリストを追い詰めている。


 前方で二体の戦闘用アンドロイドが警官数名と対峙していた。

 アンドロイドがドラム缶を放り投げる。警官隊は左右に散らばってそれをかわす。しかし、奥出理事長はベルーガを走らせその場へと突っ込んで行き、すっ飛んでくるドラム缶を叩き潰した。


「てめえらか! 長谷はせを殺ったのは!」


 理事長が激高していた。オレンジ色のベルーガは、その戦闘用アンドロイドに向かってパンチを放つ。しかし、そのアンドロイドはベルーガの重量級パンチを両手で受け止めた。


 そこへもう一機のパワードスーツが走ってきた。同じベルーガだが、こっちは黄色に塗装されている。ちゃんとヘルメット部分を装着しているので顔は見えないが、乗っているのは多分ハンター蒲鉾店の親父。M・F・ハンターだ。


「てめえらか! 会社のトラックを盗みやがったのは!」


 そう言えば俺が追った小型トラックにはハンター蒲鉾店のロゴが描かれていた。奥出理事長もハンター親父も、元軍人で宇宙の海兵隊と言われている機動攻撃軍の強者だった。アケローンの強面親父として有名な、この二人が操るパワードスーツと殴り合って勝てる奴がいるとは思えない。


 そんな時、俺の無線が鳴った。


「睦月だ」

「高橋だ。遅れてスマンな」


 俺の上官、高橋隊長だ。


「お前はアレを出せ」

「え? ここで暴れているアンドロイドは理事長とハンター親父が制圧しそうですが?」

「そうじゃない。東ゲートに駆逐戦車マルズバーンが出やがった。お前はそれを阻止しろ」

「あ?」


 駆逐戦車マルズバーンを引っ張り出すなんて正気の沙汰ではない。こっちの戦車が出払っている以上、あの駆逐戦車を止めるにはアレを出すしかないって事か。

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