第63話 襲撃は何時?
早々に戻ってきた恵美たちにアマは驚いた。が、理由を聞き、納得した。
ただ、敵が
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
その夜、慎也たちは、大婆御殿の隣に建てられている恵美の居宅に入り、襲撃を待った。
だが、結局、敵は攻めてこなかった。
朝…。
明るくなってから、慎也たちは村の様子を改めて見て回った。
前に来た時と比べ、色々な施設が整っている。
…水車小屋に用水路、共同の保存食加工場に貯蔵庫。あげくは温泉施設まで出来ていた。全て恵美の指導の賜物だ。
これらが河童に蹂躙されることになるかもしれないと思うと、やりきれない。少しでも被害を小さくしたいものだ。
河童の様子は、アマに宝珠で見せてもらった。小島で魚をとり、食い散らかしている。
あの島の周辺は最高の漁場なのだが、河童に占拠されて漁にも出られないとのこと。海では水生種族である河童の方が断然有利で、攻めて行って勝てる見込みが無いのだ。
悔しがるアマを見ていると、早く何とかしてやりたい。
慎也たちとしても、子供を預けてきている身だ。奈来早神社も閉めている。出来るだけ早くけりを付けて戻りたい。
「あのさ、思ったんだけど、昨日、
慎也は恵美に尋ねた。
「いや~。襲撃してくるから~、それに備えて~だけど…」
「それさあ、警戒されるだけじゃない? 消してみたら、直ぐ来ないかな…」
「そうじゃな。敵の目的は神鏡を奪うこと。戦闘を交えず盗むつもりなら、篝火を焚かれれば来にくいじゃろうな…」
「確かに、ごもっともです」
慎也の提案に祥子が同調し、警備責任者のテルも認めた。アマも、なるほどと感心したように頷いている。
「それにさ、こちらが油断していると思わせれば、真っ直ぐ神社の方へ忍び込んで奪おうとしてくると思うんだよね。
そういう風に持って行ければ、他の施設に手を出したりしないと思うけど…」
「それも、確かに…」
再度、テルが頷く。
「でね。単に篝火焚かないだけだと、昨日までは何だったんだと警戒されるから、祭りを装ってみない?
向こうさんだって何もせず魚食ってのんびりしているだけじゃないと思うんだ。当然、こっちの様子に探りを入れているはず。
上手く祭りだと思わせて、夜、適当な時間で篝火を消せば…」
テルが目を見開く。
「祭りが終わったと思って、攻めてくる!」
「そう! 普通に考えれば、祭りの後なら絶対の好機だと思うだろ?」
皆、納得し、頷き合った。
早速、神社から神輿が担ぎ出された。
河童が見やすいように、港や海岸を中心に担いで回る。
賑やかに太鼓も打ち鳴らす。笛も合わせて祭囃子だ。
夜は昨日と同じように篝火を焚いた。儀式をしているように思わせるため、
この灯りは、小島からもよく見えるはずだ。
午後十時頃、神社の松明と篝火は一斉に消された。
――――
治太夫は、十一日午前には島近くへ到着し、島の周りをぐるっと回って、近くに程よい小島を見つけた。
夜通し泳いで来て、皆、疲れているし、腹も減っていた。小島周りは魚が豊富だった。魚を捕まえ、小島に上陸して、たらふく喰らった。
とりあえず十分に休息し、深夜に攻め込むことにした。しかし、夜になると篝火が見えた。
警戒されているとなると、地理に不案内な自分たちには夜討ちは不利だ。その晩は襲撃を見送った。
翌十二日、大勢で行動すると見つかる恐れがあるので、三太を偵察役にし、探らせる。海から確認する限り、鬼の姿は見えなかった。
童島の河童からの追撃にも監視要員を配置するが、そちらの方から来る者もいない。
この晩も篝火が見え、襲撃を見送るが、あまり時間もかけられない。追撃部隊が来ると挟み撃ちになってしまうからだ。
鬼の方も、少人数で二晩夜通し警戒すれば疲れてくるはずだ。襲撃は明日と決め、唯一島に上陸したことのある三太から、島内の様子や目的の神社の場所を聞き、誰がどこから攻めて行くかを相談した。
十三日、昼頃。偵察の三太によると、神輿が港に引き出されていたという。
昨日までは警戒していたのではなく、祭りの準備であったようだ。
神島のヒトたちは、向かい風で容易には戻ってこられないはずだ。だから、自分たちが攻め込もうとしているのを、鬼たちはまだ知らないのだろう。銀之丞が知らせに来る可能性があるので、それを十分警戒することにした。
そして…。
祭りならば、チャンスだ。祭りの後は、皆、飲み、騒ぎ、疲れて寝てしまう…。
襲撃は、やはり今晩だ。狙うは、鏡のある神社!
治太夫は、持って来ていた
――――
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