第49話 愛の危機2

 あいの大切な赤ちゃんは、河童の後方に寝かされて、スヤスヤ眠っている。

 入り口のそばに寝かされているので、外から誰か助けに来てくれれば、安全に救出可能だ。


 もし、あいの母親、舞衣が居れば…。あいが強く念じれば、テレパシー能力のある舞衣のことだ。気付いてくれるだろう。

 …しかし、舞衣は人界。ここに舞衣は居ない。

 助けに来てはくれないのだ。


 来てくれる可能性のあるのは、夫のテル。

 同じ境内、目と鼻の先の村長むらおさ御殿に居る。

 異変を感じて、帰ってきてくれれば…。

 アマか大婆が宝珠で気付いてくれても、直ぐに一緒に居るテルに伝わる。そうすれば、即、駆け付けてくれるだろう。


 それを期待するなら…。


 あいは何とか、少しでも時間を稼ごうと考えた。

 今は、それしか出来ることが無かった。


 とはいえ、これもナカナカ至難のわざだ。

 適度に話を合わせなければならないが、合わせ過ぎて興奮させると、直ぐに犯されてしまうことになる。

 拒否しすぎても逆効果だろう。加減が分からない。


 幸い、相手はかなり口数が多く、話し好きの様だ。

 向こうから話をさせるよう誘導すれば、あるいは上手うまくゆくのか…。


 試してみる価値は、あるかもしれない。


「あ、あの……。私の『感触』と『味わい』を楽しむって、おっしゃいましたよね…。

 私も心積こころづもりがしたいのです。具体的に、ど、どんなことをされてしまって、そ、そ、それは、どんな感じ…なのですか?」


「なに?そんなことを聞きたいのか? 変なヤツだな。

 まあ、良いだろう。さっきも言ったよな。貴重な肉体からだを捧げてくれるお前には、最大限の敬意を払うとな。何でも教えてやるぞ。

 まず、真っ先に楽しむのは、入れた時の、お前の腹の中身の感触だな…。これが、またたまらぬものだ。

 ズブッと突っ込むと、中は、な…。温かで、柔らかで、弾力があって、粘液でネットリしていてな。グニューッと締め付けて、うごめからみついてくるモノだ。感触は、すこぶる心地よいのだぞ。

 お前の中身の様子は、外見の具合と臭いから、大体どんなか分かる。絶対間違いの無い、超一級品だ。反応も恐らく、最高に良いだろう。楽しみだ」


 こんな『入れた時』の解説は、あいにとって言語道断、不快以外の何物でも無い。

 そっちは良くても、無理矢理『入れられて』しまうあいには、苦痛でしかないのだ。

 だが、不愉快極まりない話ではあっても、あいの目論見としては上手くいったようだ。事細かに解説してきてくれる。

 もしかすれば、聞き慣れない声に気付いて、隣に住むさとがテルに通報してくれるという可能性もある…。


 太吉は更に続ける。


「そして次は、な。入れたら、もう即、出す。これに尽きる!

 この出す瞬間が、またたまらなく良いのだ。

 凄いぞ。噴き出すように、一気に出て来て、気持ちの良いこと、この上ない!!

 何しろ、肉体からだの中の『生命いのちみなもと』が体外そとへ飛び出るという、究極の一瞬だからな。

 それにな。この出て来るモノが、また良いのだ! 赤紫色でヌメヌメしていて、とても耽美で綺麗なんだ。

 お前は出されてしまう側だから、残念ながら、その至高の瞬間は見られない…。せめて、全部出た後に、出し終わったモノを見ておくが良い。我が、お前に見せてやる。折角の貴重なモノだ。もう、二度と見られぬだろうからな」


 その『出されてしまう側』のあい……。彼女にとって、これは信じられないトンデモ発言だった。


 入れて出す…。

 よくよく考えると、前戯の話も飛んでいる。

 いきなり入れて、後は直ぐ『出す』…。間の話も飛んでしまった。

 最終的な目的は、やはり『出す』ことであり、そのためにする行為であろうが、なんと短絡的なことか。


 いや、あいは、河童が行う前戯の詳細を聞きたいのでも無ければ、挿入して終了に至るまでの行為の濃厚な子細を聞きたいのでも無い。

 そんな話は、不快の極みだ。

 だが、そうにしても、入れたら即出すは無いだろうと思う。


 そして、あいにとって、もう一つ衝撃的内容が含まれていた。

 それは、『出るモノ』は、赤紫色ということ……。


 河童の精は、そんな気持ち悪い色なのかと思うと、吐き気を催す。気が遠くなりそうだ。


 その上さらには、それが『耽美で綺麗』だとは…。

 『出し終わったモノ』を、後で見せてやるとは…。

 『貴重なモノ』などとは…。


 あいの方から話してくれるように振ったことへの御丁寧な回答ではあるが、全くもって冗談ではない。

 見せて貰わなくて結構だ!


 彼女にしてみれば、そんなモノは、触れるどころか見るも汚らわしいモノ…。

 腐敗してドロドロになった汚物に等しい…。


 『二度と見られぬ』?

 一度も見たくは無い!!


 あいの頭の中は、「キモイ!」の一言に尽きた。


 そのあいの表情から猛烈な不快感を察知したのか、太吉も、彼女を気遣う姿勢を見せる。


「これは、我にとってはたまらぬ快感でも、為されるお前にとっては、そうも行かぬことではあったな。まあ、憐れに思わぬでも無い…。

 だから、少しでも痛くないよう、楽に受けられる姿勢を取らせてやる。

 尻を上げろ。もう少し。そう、こうだ!」


 太吉は、あいの秘部と腰に手を当て、クイッと彼女のお尻を上げさせた。


 いきなり大事な部分に触れられて、あいはビクッとした。

 そして、後方へ秘部が露出した、更に卑猥なポーズを取らされてしまう……。


 ……やり過ぎてしまったかもしれない。

 少し押さえないと、このまま即、入れられてしまいそう。

 これは、抵抗しなければ……


 上げられた臀部を、スッと下ろす。


「嫌です。こんな恥ずかしい格好……。お願いします。どうか、許してください」


「何を言うか。お前も苦しいのは、嫌だろう?

 可哀想だと思うから、痛くないようにしてやるのだ。この恰好が、一番楽だぞ。

 さあ、こうだ! このままの姿勢で、体の力を抜いていろ」


 下げた臀部を、再度、無理矢理グイッと上げさせられた。


 抵抗しすぎるのも、間違いなく逆効果だ。仕方なく淫靡いんびなポーズのままで静止する。

 それに、グイッと上げさせられた時の河童の強い力に、あいの顔は強張っていた。

 自分だけでは抵抗不可能だと思い知った。


「なに、そんなにも緊張しなくて大丈夫だぞ。すぐに済んでしまうコトだ。

 体の力は抜くんだぞ。力を入れると苦しいだけだ。力を抜いていれば、挿入する時もヌルッと綺麗に入ってしまう。その後の出す作業も簡単に一気に済む。

 気付いた時には、もう全て終了しているぞ。だから、力を抜け」


 ……ヤラレル! このまま、入れられる!……


 緊張するなと言われても、それは無理。力を抜けと強調されても、これから行われること考えると、そうも行かない…。


 あいは、奴の腰蓑に隠れている男のモノを想像してしまう。


 ……痛くないようにとか、苦しいとか言っていたから、大きいの?

 色はきっと、肌と同じ緑色…。

 その気味の悪い肉棒が、この恥ずかしい格好のまま、ズブッと私の秘部に刺し込まれる…。

 お腹の中に、赤紫色の汚らしい河童の子種液が噴き入れられてしまう…。

 その結果、妊娠したら……。

 私は神子かんこよ!

 鬼の子を産み育てる使命を持つ身。

 河童の子をはらんだりしたら、最悪だ。

 イヤだ!

 早く来て、テルさん!

 助けて、テルさん!……


 河童の硬い手で、あいの弾力のある美尻が撫でられ、その肉襞がグイッと広げられた。

 あいの恥ずかしい部分の全てが、後方から完全むき出しの状態となってしまう。


 ……もうダメだ。これ以上時間は引き延ばせない……


「くうううううっ……」


 悔しさで涙が溢れ、床にポタポタと零れ落ちる。体が震えてくる。


「泣いているのか? そんなにおびえるなよ…。

 不必要に苦しめるのは、我は好まぬのだ。手早く作業して、直ぐに終わらせてやる。

 この、楽に出来る姿勢のままで居ろよ。ほんのちょっと辛抱するだけで良い。あっと言う間の事だ。即、残さず全部出しきってしまうからな。それで、もう終いだ」


 苦しめるのを好まないと言うなら、止めるべきだろう。さっき、最大限の敬意を払うと言っていたでは無いか。

 こんな獣のような屈辱的な格好で、無理やり犯される…。

 異種族なのだから当然かもしれないが、これは単なる性欲の捌け口でしかない。


 女ではなく、『メス』としての扱い。

 いや、それ以下か……。


 性交ではなく、交尾。

 いや、単なる「排泄」……。


 そしてその上に、ふざけた、言い訳じみた発言が重ねられていた。

 あいの頭の中で怒りが沸騰しそうになった。


 ……『手早く作業』って、何よ。私は物じゃないのよ!

 何が『楽に出来る姿勢』よ。何が『ちょっと辛抱』よ。

 それで、『あっと言う間』で『即、残さず全部出しきってしまう』って、早漏申告?!

 早漏で、一瞬で終わるからってこと?

 バカなの?……


 心の中で散々罵倒ばとうするが、口には出せない。変に怒らせては、我が子の身が危うい。

 反論も何も出来ないのがまた、悔しくて情けなくて堪らない。


「では、開始だ。時間も無い。今から、お前を頂く!

 ウマそうなお前の中身、存分に馳走になるぞ。

 さあ、そのままの姿勢を保て。動くな。力を抜け」


 開始宣言……。


 もうこれで、太吉の一方的なグダグダ話も終わってしまう。

 あいも、これ以上、こんな変態との会話を繋げられない。


「い、イヤ、イヤ!ホントに止めて……。お願いします!!」


「入れるぞ。よいか? 痛いのは最初だけだぞ。即座に残さず全部、綺麗に出しきってやるからな。

 出てしまえば、もう終いだ。シビレて痛みも感じなくなって、そのまま昇天だ。すぐに、楽になれる」


 ……シビレて、そのまま昇天ですって? 

 そんな一瞬で私をイカセル気なの?

 どんだけ自信過剰なのよ。ホント、バカじゃない?!

 楽になれるって、何よそれ!……


 ズボッ!!


「ゔんぐうううううううう~!!」


 乳房への愛撫も、秘部への刺激も、その他諸々……、体をほぐして挿入準備させるという行為は、全く無かった。

 その説明が無かったということは、一切しないということだった。


 屈辱に耐えながら尻を突き上げて卑猥なポーズを保っていた彼女の後方から、まるで刺し貫くが如くの勢いで、一気に突っ込まれた!


 白く、華奢きゃしゃで、しなやかなあいの肉体……。

 その柔らかな彼女の肉襞を蹂躙して、下腹部の内部へ、緑色をした太く硬いモノがズブッと、躊躇ちゅうちょも容赦も一切無く、無残に……、


 挿入されてしまった……。



 それは、あいの覚悟していた女の秘穴…膣口へ、では、なかった。


 羞恥の極みである、排泄の為の穴……、


 肛門に、だ!



 そして、挿入されたのも、あいの想像していたモノではなかった。


 河童の股間の屹立した肉棒、ではなく……、


 腕が、だ!!



 さらに……。


 あいには、詳しく説明なされていた。


 『挿し入れ』た後には、『即』、『一気に』『出す』……。

 『赤紫色』の『貴重なモノ』を、と……。


 『肉体からだの中の『生命いのちみなもと』が体外そとへ飛び出るという、究極の一瞬だ』、と……。



 ………。

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