第21話 奇妙な結婚式2
拝殿の所定位置にそれぞれ着座し、式の開始。慎也がお
続いてメインの儀式、三々九度だ。
山本探偵が写真係を買って出てくれていて、拝殿前方に移動し、写真を撮る。
古式ゆかしい平安装束のスミレと総司。二人とも、かなり重そうで、動き
舞衣が
総司に舞衣が最初の盃を渡すと、祥子がそれに三度に分けて御
盃はスミレへ。それに再度御神酒が注がれ、スミレが口だけつけて、飲む
少し大きい次の盃はスミレから、また更に大きい次の盃は再度総司からで、計三回繰り返され、一組目の三三九度は、無事終了した。
さて、次からが変則的になる。
新婦席には美雪が坐った。
斎主を務めていた慎也がその隣に坐り、舞衣と祥子によって三三九度が進められ、終わったら、美雪と早紀が席を代わって、同じようにという段取りで有った。
慎也が坐り、舞衣と祥子もスタンバイ。慎也と美雪が、
盃を持とうとした舞衣の手をいきなりつかみ、自分が舞衣の居たところへ移動。舞衣には自分の居たところへ立たせたのだ。つまり、さっと、入れ替わってしまった…。
そして、何食わぬ顔で、美雪が舞衣に盃を渡す。
「へえ? なに!」
キョトンとしている舞衣に、美雪は無理やり盃を押し付けた。
美雪の隣で苦笑しながら、祥子が御神酒を注ぐ。
「正妻の舞衣さんが結婚式してないのに、私がというのは、やっぱりダメです。せめて、先に三三九度してください!」
親族席では、祖父の
袿袴姿の美雪が進行し、巫女姿の舞衣が受けるという、何とも奇妙な三三九度。注がれた御神酒を舞衣が
が、ここで慎也が気付いた。
「あ、あれ、順番が違うよ。最初の盃は俺から…」
そう、三三九度は、まず新郎が先に飲み、その盃を新婦が受けるという形で始まるのだ。上位から、下位へという順番である。
が、慎也の
「いいんです!どうせ、舞衣さんの方が立場は上でしょ!」
敢えてしたのか、それとも間違えてしまった言い訳か…。だが、祥子が堪え切れず、顔を横に向けてプッと噴き出した。それを合図に、皆、声を上げて笑い出した。
「いいですよ。その通りです。間違いありません」
いじけ気味に、慎也は御神酒を飲んだ。
爆笑の中の、舞衣との三三九度であった。
さて、この後は段取り通りかというと、そうも行かないのだ。
美雪は次に、祥子を新婦席に立たせた。早紀が祥子の代わりに銚子を持つ。
「次は第二夫人の番です。その後は…」
美雪の視線は、振り袖姿の杏奈と環奈…。
視線を受けた二人は、思いもかけないことに、目をキラキラ輝かせている。
今日は拝殿には幕が張られていて、外から中が見えなくしてある。よって、あの二人を混ぜても問題ない。いや、当初の中学生の時とは違い、あの二人も、もう成人している。だから、問題は無い。
が…。
「おいおい、君たちは一回ずつだけど、俺、何回しなければならないんだよう…」
「仕方ないでしょう。それだけ妻がいるんですから!これも義務です」
舞衣の非情な一言。やはり、間違いなく舞衣の方が立場は上だ…。
再度笑われながらの三三九度(以後は正しい順序で)が、この後、五回続けられた…。
ところで、この奇妙で愉快な結婚式に、参加したくても参加できなかった不運な者がいた。
山本三姉妹の長女、沙織である。
彼女は、東京に居た。
杏奈と環奈は、まだ大学生。そして、アルバイトという名目で、亜希子の研究所に行くことが出来ていた。
が、沙織は既に大学を卒業している。慎也のところに居る間は良かったが、実家に戻されると、ブラブラしている訳にもゆかない。
ということで、祖父の秘書を命じられてしまったのだ。
沙織は、美雪と早紀の結婚式に内緒で行くことを妹たちから電話で聞き、歯ぎしりするほど
そんな沙織が、杏奈・環奈も結婚式で三三九度して
が、この妹二人も、その辺りは心得たものだ。こういう面白いカードは、いざという時に取っておくものだと、取り敢えずのところは内緒にすることにしていた。
取り敢えずのところは…。
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