第20話 奇妙な結婚式1
翌々週の日曜日、十一月十日。友引。
今日は、スミレと総司の結婚式が、奈来早神社で行われる。
便乗して、早紀と美雪もということになり、合同結婚式となった。
慎也の正式な妻である舞衣も、第二夫人の祥子も、実は結婚式を挙げていない。
なのに、自分たちだけがしてもらう訳にはゆかないと早紀と美雪は大いに抵抗した。
が、早紀に関しては親が挙げるのに便乗するのだからと、美雪には総代のお孫さんを
三組(?)とも、普通とは言い難い関係。であるから、親戚も来賓も友人も基本的に来ない、身内だけの式。
挙式の為の衣裳も、慎也宅母屋二階の
婚礼衣裳は、借りれば、かなりの金額になる。使える物が有るのであるから、使用しない手は無い。
但し、ちょっと「派手」な衣裳ではあったが…。
式を執り行う「斎主」は、宮司である慎也。
総司・スミレの方は良いとして、後の二人の相手は慎也自身。
自らの結婚式の斎主をするという、これもあり得ない形式。おまけに、正式な妻でなく、「妾」だ。
だが、ここでは世間の常識なんて通用しない。何をしようと、今更だった。
巫女役は、舞衣と祥子が務める。
美雪側の参列者は両親と祖父母で、父の
友人の結婚式だと母に偽って内緒で来ている杏奈と環奈は、振袖姿。自分たちとしては既婚者のつもりだが、振袖でないと彼女らの母親は承知してくれない…。
そして、早紀の側は、スミレのことでお世話になったという、総司の親友の「探偵さん」が来ていた。ブラックスーツに白ネクタイの、略礼装姿だ。
準備を終えて一息ついていた舞衣と慎也に、べったりつきまとっている杏奈と環奈。これから着替えをしなければならなく、ハッキリ言って邪魔であるが、無理に引き離され、居たくても居られなくなってしまっているという事情なのであるから、やむを得ない。
その、杏奈と環奈が、総司と談笑している人物に気付いた。…「探偵さん」である。
「あれ? 何で、勘治叔父様がいるの?」
「え?」
舞衣と慎也は、目を丸くした。
総司からは、スミレの秘密を、黒崎・橋本から守ってくれた探偵と紹介された。さらに、亜希子の研究所も紹介してくれたという…。その人物が、杏奈たちの叔父?
杏奈と環奈の視線に気が付いて、探偵もこちらに目を向けた。
目つきは、かなり鋭い。まさに、修羅場を
「あの人は、私たちの父の弟で、山本勘治です」
「内緒ですが、叔父は公安関係の秘密の工作もしてるんですよ」
「スミレさんの保護も担当してたんですね」
「叔父様だったから、うちの研究所を紹介したんだ…」
交互に、小さな声で杏奈と環奈が言う。
慎也と舞衣は、同時に同じことを考えた。
(公安の能力、
が、勘治は元々、総司の親友だった。つまり、偶然と言えば、偶然なのだ。
親友に依頼されて、たまたま関わったことが、自分の仕事とも深く関わっていたということ。だから、いつもよりも少しばかり力を入れ、積極的に動いた…。そういうことである。
これに関しても、またまた腐れ縁。…あ、いやいや、縁というモノは、誠にもって有難いモノだ。
式が始まる時刻となる。
社務所からの参進。社務所から拝殿までは、敷物が敷かれている。
先頭は、斎主である慎也。白色装束の「斎服」姿で頭には
続くは「千早」を羽織った巫女姿の、舞衣と祥子。
そして主役である、総司とスミレの、束帯・十二単姿。
そう、時代衣裳というのは、この大層な代物だ。
着慣れない衣裳で、二人とも歩き
更に続いて準主役で、十二単の略装である
こちらは十二単に比べればかなり歩きやすそうだ。だが、見た目は、やはり雅で目を引く。
その後ろには、美雪の家族と、山本探偵、杏奈・環奈が続くという花嫁行列だった。
神社境内は、無人では無い。他にも参拝者がいた。当然ながら、境内に入る他の参拝者を、止めるわけには行かないのだ。
その為、偶然居合わせた参拝者から、この
これは、山本探偵の仕業であろうか。もしくは公安か…。
いや、どちらにしても、これでは、内緒で来ている杏奈と環奈のことが、彼女たちの父親に筒抜けだ。当の本人たちも気になり、前を歩く叔父に小声で確認した。
すると、あの妨害は山本探偵の仕業。ここに二人が来ていることは内緒にしてくれるとのことで、ホッとした杏奈と環奈であった。
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