第34話 NTRに脳を破壊されたギャルゲーヒロイン(下)
先ほどの映像が収められたスマホを手に、
オススメの動画を友達に紹介する女子高生、といえば聞こえはいいが、中身がアレだし片方拘束されているので中々に珍しい光景となっている。
桃山がクソ映画を無理矢理見せられた人みたいにげんなりとした表情を浮かべた。
「パイセン、意外と……いうほど意外じゃないけど、こういうクソみたいな演技が似合いますね」
「困ったわ。思ったような反応じゃなかったわね。もっとさっきみたいに悔しさを滲ませたようなやつが欲しかったのに。……やっぱりアイツの趣味はダメね、何度お見合いを申し込まれても断る意志が強化されたわ」
「パイセンのくせに異常にパーフェクトな演技をしてたから逆に腹が立ったというか、そもそも普通の人にとってはシチュエーション自体がちょっとネタっぽいというか」
悔しさを滲ませた表情で大岡部先輩がベッドに戻ってきた。
「いいリアクションが見れたらこのまま解放して皆でお昼にしてもいいと思っていたけど、口直しが必要ね。チョコ持ってきて」
使用人が慌てて出て行き、一分ほどで戻ってきた。
やっぱり俺の方に差し出してくる。
黒い宝石のようなチョコを摘まんで大岡部先輩の口元に持っていこうとしたらダメ出しされた。
「それだと一回目と同じじゃない。私は一回目以上の桃山さんのリアクションを見たいのよ」
「具体的には?」
蠱惑的な笑みを浮かべ、耳元で囁いた。
「口移しよ」
「それやらなきゃダメ?」
「やるまであなたたちを解放しないから」
目がマジだった。
ちょっと怖い。
「ポッキーで代用できない?」
「この家にポッキーがあるとでも?」
ないよね。薄々分かってたけど。
こっちの打ち合わせの声は届いていなかったらしく、桃山は首を傾げていた。
覚悟を決めてチョコを口に含む。
うますぎて全部食べそうになったが、目的を思い出して大岡部先輩に顔を近づける。
「ちょっ、ちょっと、だーろくパイセン、それはダメでしょ! あたしとはまだなのに!」
大岡部先輩が余裕たっぷりに言い放つ。
「そんなに怒らないで。彼はあなたを解放するためにやっているのよ?」
俺もコクコクと追従する。
「でも、でもぉ……」
桃山が涙を滲ませると、大岡部先輩が涎をジュルリと呑み込んだ。
絶対、チョコ食べたさから生じた涎じゃないよね?
「ちゃんと見ておいて。大丈夫。あなたを想う気持ちが本物なら、
俺にプレッシャー掛けるのやめません?
しかも何気にめちゃくちゃそれっぽいセリフをナチュラルに言ってきたのでビビる。
脳がNTR漬けになっていないと即興でそんなセリフ出てこないからね?
小さく開かれた口が迫ってくる。
至近距離になっても目は閉じずに見開いたまま。
こっちも応じるように相手の目を見据えた。
視界を埋め尽くす大岡部先輩の整った顔を見ていると、不意に後頭部を掴まれた。
身体の動きまで見れてなかったので完全に虚を突かれ、抵抗することさえままならないままあっという間に捕食された。
キスなんて柔な言葉では表現できない。
口の中を蹂躙していく様はまさにプレデター。
「あ、ああ……だーろくパイセンが……」
桃山の悲しみの声で意識を取り戻し、どうにか距離を取った。
口の端から垂れたチョコを手で拭おうとしたら、その手を抑えられ、大岡部先輩が舌で舐め取った。
そのまま押し倒され、再びキスされそうになった直前で、
「ちょっ、もうチョコないんですから、これ以上は契約的にどうなんすか」
この一言で先輩が動きを止めた。
まだ頬は上気したままだったが、瞳にはいつもの冷静さが戻っていた。
「私としたことが、女子の嗚咽を聞きながら舐めるチョコのあまりの美味しさについうっかりこっちから自分の契約を破りそうになったわね。一線を超えるところだったわ」
「ぐすっ、もう一線超えてますよぉ……」
「あら、ごめんなさいね。あなたの反応がよかったから、つい熱が入っちゃった。お詫びに、昼食と手土産、それとバイト代……いえ、エキストラ代でも出すから」
優しく声を掛けていた先輩が振り返った。
「残りのメンタルケアはあなたの仕事でしょ?」
「はいはい。誰がここまで破壊したんだよって話もしたいですけどね」
拘束具を外しながら色々と声を掛ける。
その後、昼食時などもべったりとくっつかれた。
別荘から車で送られる直前、外で立っていた大岡部先輩が微笑んだ。
「今日はとてもいい日だったわ。もし
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