第12話 ジェンダーレスサロン


★ ジェンダーレスサロン





ヨシキが居なくなり、

しばらくしてついに貯金が無くなり、

給料がスズメの涙ほどしかもらえなくなり、その頃には僕も文也の事を信じられなくなり恨み始めて来ていた。



文也はユキの言う提案には

シッポを振って喜んで行動するが、

上手く運んだ試しがなかった。


僕の意見にはユキに聞いてからといい、

結局ユキはイエスと言わなく

却下されてしまう。


僕のストレスも最高潮に達した時、

もう相談せずに勝手に

動いてしまおうと考えた。


あくまで長は文也だが、裏で動こうと。



僕はゲイに生まれた、

その事に自信を持ちたかった。

ゲイやビアン、FTM、女装家の世界に

広告を出してみようかなと。


文也には相談をせず、

僕は新宿の二丁目のお店に

サロンのフライヤーを置いて

もらう為に頭を下げながら歩きまわった。


孝清も快く了承してくれ、

クラブの大きなイベントや

パーティの参加者用に配る

フライヤーの中にサロン広告を入れてくれた。


ネット上では、ゲイサイト、SNS、

に広告を出しまくった。



その効果は絶大なほど凄く、

三カ月経つと予約でいっぱいになるほど

忙しくなった。

正直、二人では厳しいほど。



嬉しい悲鳴に変わった。



半年が経ち、

リピートしてくれるお客様が出てきて、

給料も一番苦しい時よりかは

安定してくると、

カフェバーのバイトがキツくなった。


オーナーにサロンが安定して忙しいと

うちあけ、頭を下げた。

オーナーは微笑みながら

肩に手を置き優しく言った。


オマエの本業の夢に戻れと。


睡眠不足がようやく終焉を迎えた。




だが、お店に来店するお客様が

ゲイとビアンが八割の多さで、

流石にその事に気づき

疑問をぶつけて来たのがユキだった。


ユキは僕のやり方に不満をぶつけ、

自分がまるでオーナーにでも

なったかの様な物言いで攻めてきた。


文也もゲイは嫌いだ常識がない。


とまで言ってきた。



すいませんが、

僕もゲイですが、何か?

と言いたいところだったが、

なんとか堪えきれた。




ただ明確なのは、

その君達が嫌っているゲイ達が

僕等の生活を救い、

安定を助けてくれてるのだが。



文也はユキの言いなりなので、

僕はその瞬間から、

このサロンでの夢を諦めてしまった。




もう何も言わない。

ここ半年で来てくれた

同じ細胞のお客様達だけでも大切に

仕事をするとだけ決め、

営業方針に対する夢と希望は、

この時の文也のセリフで

あきらめることを決断した。




そう決めてからは

割と気持ちが楽になった、

サロンもジェンダーレスサロン

として認知され、

不満を言うのはユキだけだったが、

安定した事により

文也も文句は言わなくなった。



僕の友人達がカットしに来ると、

ユキも文也も不機嫌なのが、

とてつもなく嫌だった。


同じ細胞を持つ文也だったら

分かってくれると信じてたが、

無駄だった。




少し汗ばむ五月の終わり、

予約を制限し、

文也はしばらくの休暇を取った。

籍を完全な男性にする為に海外に旅立った。


その間は僕の一人営業だ。


仕事仲間と心友との境界線は

しっかりと信じて、

文也に御守りを買って渡した。



文也は御守りを握りしめ笑顔で

ありがとう、

と言った。


新しい自分になる為に

一歩づつ歩み出していた。



だが、ユキは違った。


その頃から、

宙を見つめて動かなかったり、

幻覚を見るようになったり

不眠症で激痩せしたり、

誰がみても様子が異常になっていた。


文也が一歩前に進むと、

ユキの様子が異常になるのだ。



僕はあの日から、

ユキに対して距離を置いていたので、

表向きの接し方しかできなかった。


どんどん悪くなるのが

明確に分かっても僕は目を背けていた。




きっと、

この時代から知らず知らず、

僕は文也から

恨みを築きあげていたのだろうか、

なるべく厄介な事に巻き込まれないように

逃げていた。



文也が帰って来た日、

ユキは自殺未遂を起こした。


文也が一つ進化した日に。


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