俺が先輩を温めてみた

 幸せなお昼休みが終わり、また教室へ。

 ずっと先輩と居られたらいいのになあ。



 ……それにしても、隣の席の『明石あかし 枝眞えま』が俺を見ている。なんでそんなに見るかなー(汗)



 午後の授業も終え、放課後。

 立ち上がろうとして明石に止められる。



「小野寺くん」

「な、なんでしょうか、明石さん」

「なんで敬語? 同じクラスなんだから、タメ口でいいよ~」

「そ、それもそうか。それで、何かな」


「君、ずっとあたしを見ていたよね?」


「いやいや、逆だろう。明石さんが俺を見ていたんじゃないか。だから、俺も自然と……ね」


「あ~…そんなに見ていたかな」

「うん、見ていた」

「で、でも、見ていたのは……そのホクロっていうか」



 またホクロか。

 俺のホクロは魅惑の特殊能力でもあるのというのか。こんなアイドルみたいな子でさえ対象だというのか。だとすれば、凄いな俺。



 そんな中、先輩が迎えに来た。



「鐘くん、一緒に帰りましょ」

「先輩。……じゃあ、明石さんまたね」

「えっ、あの人って……」

「ひとつ上の先輩」

「そうなんだ。ふぅん……諦めないし」



 最後にボソッと何かをつぶやく明石。聞こえなかった。



「ん? なんて?」

「なんでもない。じゃあね」



 明石と別れ、俺は先輩と共に下校した。



 ◆



 校門を出て自宅ではなく――駅の方面へ向かった。御崎町は、駅周辺にショッピングモールやら商業施設が集中していた。


「今日も寒いね、鐘くん」


 先輩に限った話ではないが、寒い季節なのに短いスカートだ。黒のタイツを穿いているとはいえ、寒そうだな。


 息は白く、手は凍えていた。

 いつも温めて貰ってばかりだし、たまには俺から温めてあげるべきではないだろうかと結論に至った。だから……!



「先輩、手、貸してください」

「……しょ、鐘くん?」


 冷え切った先輩の手をぎゅっと、優しく握る。先輩はぴくっと体を震わせて緊張していた。顔は急速に真っ赤になり、俺も釣られるように顔が火照ほてる。



「いつものお返しです」

「……うん。ありがと。そんな優しい鐘くんが好きだよ」



 先輩の笑顔はいつも温かった。

 今日も素敵な表情が見れて良かった。

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