第12話 エピローグ

 皇帝軍との戦いから一年後、アマーリエ聖騎士団と改名した一万の兵団は、オラース軍との合流地点を目指し、ハイランド王国の東の平原に歩を進めた。広義には人族の危機を救うため、狭義にはこの戦いで功名を立て、今後の外交を有利にするためだ。どんな理由を付けようが、皇帝を殺し、貴重な軍勢を削いだアマーリエ軍は、西方諸国から敵視される事は避けようがない。蛮族との大規模な戦闘、この混乱が収まる前に、西方世界の守り手として既成事実をつくるしか活路は無かった。

 どこまで行っても、私の進む道には、血と脂が付き纏う。

 しかし、もう迷いは無い。

 弱さに打ち勝つ信念を得た。

 辛さに耐え得る希望を得た。

 呪われた魔剣は消失し、その代わりに、失った指は戻り、古傷はすっかり綺麗に癒えた。二年間止まっていた、女の難儀も復活した。愛馬は上機嫌な足取りで私を運び、その傍らには愛する騎士が付いている。

 私が生きた証は、すでにここにある。

 辺境を併合したアマーリエ地方、三十万の民と、一万の歴戦の精鋭たち。それに、愛する一人の騎士と、私はいつでも、一緒なのだ。


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【旧】3.辺境騎士団と剣の巫女 小路つかさ @kojitsukasa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ