第2話 STORY 2

外は晴れ渡っていた。

降り積もった雪が太陽の光を反射して眩しいくらいに輝いていた。

普段の僕の移動手段は原付だった。

しかしさすがに今日のこの雪で原付での移動は無理だった。

仕方なく僕は大学のある方角に向かって歩き始めた。

この街の冬は毎年必ず雪の積もる日が何日かあった。

学生の街らしい活気と新しさ、それと遊郭の名残を残す歴史的な赴きを残す重厚さ、その2つが混じりあったこの街が僕は大好きだった。

しばらく歩き始めた時に1人の中年の男が僕の行く手を塞ぐ様に立っているのがわかった。

その男はそこに立ったまま動かなかった。

僕は構わず歩き続けた。

その男との距離はどんどん縮まっていった。

男は僕を見て少し微笑んだ様に見えた。


「僕を見て笑ったのか・・・?」


そう思ったが辺りを見回すのも変だと思い、無視して通り過ぎ様とした。

その時男は僕の右腕をそっと掴んだ。

掴んだというよりは「そっと手を置いた」と言ったほうが正しいぐらいの弱々しさだった。

僕は不思議なくらい落ち着いていた。

怒りや驚き、不安といった感情はまったく起きず、ただじっとその男を見つめた。

そして左手でその男の手をそっと振り払った。

その男は口を歪め僕をじっと見つめて再び笑った。


『鍵屋だ。鍵屋を探すんだ。あの男にしか作れない。そしてお前にしか開けれない。いいか?理由は俺にもわからん。お前は選ばれたんだ。鍵屋をさがせ』


僕はその男の発した言葉の意味が全く理解出来なかった。


「鍵屋?選ばれた?この男は何を言ってるんだ?」


僕は再びその男の顔を見つめた。

男は口を歪めた卑屈な笑みをずっと浮かべたままだった。


『お前の意思など関係ない。受け入れるしかないんだ。いいな?鍵屋を探せ』


そう言って男は立ち去った。


「鍵屋・・・?」


僕は最近見続けている夢の事を思った。

ある場所に門があった。

そして僕はたくさんの鍵を持っていた。

何物かに追われている僕はこの門を開けて中に逃げ込もうと思うのだが、この門を開ける鍵が見つからない。

僕は結局鍵を開ける事が出来ず何物かに捕らわれてしまう。

そして決まってそこで目が覚めた。

偶然とは思えなかった。


「鍵屋・・・?」


僕は振り替えってみたがその男の姿はどこかに消えていた。




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Key Maker 四月いつか @kouji4345

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