016:閑話休題と恥ずかし話
謝り倒した後。
いや、今回頭を下げているのは僕ではなく青髪の魔女で。
謝っている相手は僕と七人の変態であった。
事の顛末はこう――
僕が魔女へ告白まがいの勧誘をして場を収めたとき、ついでに僕と七人の関係性を教えたのだ。
カツアゲされていたのではなく、勧誘されていたのだと。
多少強引なところもあったけれど、さして僕は迷惑をしていないといういこと(むろん大迷惑だったが、ここは口を噤んだ。方便という奴である)。
結果魔女は顔を真っ赤にして謝り始めたのだ。
「勘違いしてごめんなさい」
「攻撃してごめんなさい」
とまあ、そんな感じに。
七人とて僕に対しての負い目のような物はあったのだろう、謝罪はすぐさま受け入れられ、僕がパーティを組むのならそれでいいと言って、あっというまに消えてしまった。
少し僕も勘違いしていたらしい。
一人で現れた強力な回復職を巡って争っていたのだと思って、自惚れていたが、実際はそうではなく。
これといった攻撃手段のない回復職が依頼を受けやすいようにという、勧誘――もとい慈善活動だったようだ。
なんて恥ずかしい思い違い。
どの程度戦えるのかなど、どういう能力を持っているのかなど、彼らが知る由もないのに。
耳を赤くして、刺青の入ったような右腕を左手で掴む。
それで、僕と魔女は路地裏に取り残されたまま無言が続いていた。
「あの……ほんと、すみませんでした。私こういう街に来るのは初めてで、その……てっきり悪い人ばっかりいるものだと思っていたので」
「いっいえ、僕らもすごい紛らわしい感じだったので。あんまりお気になさらず」
「…………」
「…………」
本当に恥ずかしそうに、目には涙すら溜めて俯く魔女。
そして対人恐怖症を例の如く発症して、何も言えない僕。
無言。
この路地を抜ければにぎやかな街が広がっているというのに、ここまで静寂が染み入ることなんてあるのだろうか。
かなりきつい、賑やかしの変態共がもうどこかへ行ってしまったのがかなり痛手だった。
こういうのは話題作りが重要だ。
なんでもいい。
天気でも、好きなものでも、どんなものでもいいからとりあえず間を埋めるのだ。
そしてどこか、なにかしらの話題において相手が饒舌になる瞬間がある。
そこを狙いすませ。聞き上手になれ。
深く深呼吸した後、魔女の目の見る。
魔女は髪だけでなく、目も青かった。
「そ、そういえば。街に来たのは初めてって言ってましたけど。それってこういうところに来るのがってことですか?それともこの街自体が初めて?」
「ぜ、前者です」
魔女はふいと視線をずらし、僕の心は砕けたがめげない。
「実は僕もこういうところに来るのは初めてで。一週間くらいしかまだいないんですよね」
「あっそうなんですか。すみません……記念すべき一週間滞在記念に泥を塗ってしまって」
どんな記念日だ。
始めたばっかのソシャゲの報酬みたいな頻度じゃないか。
「……けど。あんまり街にはいなかったので、色々見て回りたいんですよ」
「わ、私と話してると時間がもったいないですよね。すみません、すぐに消えます」
「そうじゃないですよ」
とぼとぼその場から去ろうとする魔女に苦笑し、呼び止める。
「街初心者同士、一緒に色々見て回りませんかってことです」
「な、ナンパですか?」
「意外と学ばないですよね。同じ目に遭いたいんですか?」
「ひえっすみません……けど、いいんですか」
魔女は言いずらそうに、体をくねらせながら上目遣いで告げる。
「私けっこう貧相な体ですよ……?」
僕は容赦なく杖を向けて、コレクションを浴びせた。
やっぱりナンパだと思ってるんじゃねえか。
あとすぐに体を許すな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます