3
私はパソコンの画面を閉じ、ベッドに横になった。
目を閉じると、そこにはアニメの彼女らが居た。彼女らは教室の隅に集まって談笑をしていた。私はその様子を自分の席から観察していたが、ふとした時に一人と目が合った。彼女はこっちへおいでよという素振りで私に向かって手を伸ばしてきた。私は一瞬行くべきか迷ったが、すぐにその手を取った。彼女は満足そうに微笑んだ。その笑顔のあまりに無垢なのに私は驚いた。
彼女達とはすぐに打ち解けた。私達はそのままカフェのテーブルを囲んで懇話を始めた。心地よいジャズのBGMと壁際に飾ってある観葉植物が落ち着いた雰囲気を演出していた。ここならゆっくり話せそうだと思った。私はコーヒーを注文した。親切にも最初からコーヒーには角砂糖が入っていた。
「何故アイドルを始めようと思ったの」
私はリーダーの子に一番気になっていた質問を投げかけた。アニメの中では衝動に駆られて始めたような描写がされていたが、その衝動の原因を知りたかった。もっとも私は第一話しか見ていないので、今聞かなくても後の話で明らかにされるかもしれないことだが。
「君はいきなり難しい質問をするんだね」彼女は苦笑した。
「本当に一時の衝動で始めたの」私は詰問口調で問いかけた。
「いや、違うよ。私は平凡な毎日に飽き飽きしていたの。だから特別なことがしたかった」
なるほど彼女も変わらない毎日に飽きていたのかと私は思った。しかし特別なことと言っても、数多の選択肢の中からどうしてアイドルを選んだのだろうか。
「単純な理由よ」彼女は続けて言った。「ずっと憧れていたんだ。私が中学生の時、同い年位の子がアイドルをやっているのを見て、すごくときめいた。私の目に彼女は煌めく星として映ったの。私もいつかあんな風になりたいって。だから高校に入って何か始めようと思ったとき、アイドルを選んだの」
私は意外と普通な理由に拍子抜けした。てっきり高邁な思想がバックボーンにあるものだと思っていた。しかし、彼女はアイドルに輝きを見たのか。
「ふふっ、君は三次元のアイドルが好きじゃないんだっけ」
「まあ、そうかな」
私は曖昧な答え方をして、ぬるくなったミルクティーを口にした。気がつくと私の部屋に居るのは私と彼女の二人だけになっていた。私は今の質問を生返事で済ませようと思ったが、彼女はそう甘くはなかった。
「そんなに平凡が嫌い?」
「逆に君は好きなの」
私は直ぐに反問した。彼女は中々口を開こうとしなかった。
「――私は嫌い」
「そう」
私は目を覚ました。
感動しちゃ悪いか? ゆうゆうゆう @i_yu_yu_k
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。感動しちゃ悪いか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます