第18話 未来の可能性
年を越えての元旦。
その前日の大晦日は彼女と軽く会って話をするだけの他愛のないモノであった。
元旦の予定を話していると初日の出の話題になった。
「申し訳ないけど・・・私は朝が弱いから初日の出はいいかな」
僕も別段、初日の出に興味があるわけではなかったので(初日の出は)無しとなった。
「もし初日の出までに私と君のどちらかが
追加で言った彼女のセリフは実にらしいと思った。
――――というわけでだ。
大晦日は互いの家で家族と一緒に過ごしたという別段なんて事のない日であった。
そして、冒頭の年を越えての元旦。
僕たちは学問の神様が宿るといわれる神社に向かった。
何故のこの場所かと言うと
「君の将来を考えてのチョイスだよ」
「受験という恐ろしい悪魔を倒すための下準備」
「来年もきちんとここに来てね」
一人で。とは言わなかったが、少し切なくなった。
来年は一人で来る(=行く)ことが確定しているからだ。
一緒に・・・と言えないことが辛かった。
―――『受験』―――
正直、受験といわれてもピンとこない。
自分が未だに何になりたいか思いつかないからだ。
彼女に一度、訊ねられてから少しは考えたが思いつかない。
現状は、とりあえず大学には進学しておこうという気持ちがあるくらいだ。
今日も同じように訊ねられたが答えられなかった。
喫茶店に入る。
神社に向かう途中にある大正時代を思わせるレトロな喫茶店でシャレオツだ。
モダンな服装を着た女性定員にコーヒーを2つ注文して話を進める。
色々とアドバイスを受けた中で、一番印象を受けたセリフは、
「とりあえず良い大学に入っておけば可能性が広がるから損はないんじゃない?」
至極真っ当なことを言われた。
決して軽んじてはいけないことであった。
未来が決まっていないのであれば、その選択肢を広げることは最善の一手である。
彼女がいれば、それはしなくても良いかもしれない一手だったのかもしれない。
しかし、彼女はいなくなる。
ならばするしかない、決めるのは自分だった。
元日ということもあり、参拝のために並びに並んだ。
待つ時間は長く感じるが、将来のため・・・になるのかはわからないが、そう信じる気持ちで我慢できた。
願いごとをするな、感謝しろ
参拝は本来そういうモノだと言う人もいるが、今回と次回だけは許してほしい。
(受験が上手くいきますように)
(そして、叶うなら・・・)
一つではなく二つも願いをした。僕はいやしんぼだ。
しかも、二つ目の願いは角砂糖のようには甘くなく、決して溶けることのない願いだった。
内容は言わなかったが、二つ願いをしたことを言うと彼女はカラカラと笑って、
「私なんて十個したよ」
我が彼女ながら実に欲張りだと思った。
数だけの話ではない。
未来を見通す力があるのに願いごとをするなど傲慢だ。
そんな傲慢な彼女は、さらにいやらしいことをした。
「見て見て!『大吉』だよ!!凄いでしょ!!!」
おみくじを引いて大吉を当てて喜ぶ彼女。
そんな彼女を見てほほ笑む自分。
僕も引くことを勧められた。アドバイスをするからと。
彼女のアドバイスを基に引いたその結果は・・・
『末吉』
実にらしいと僕は思った。
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