第14話 死にたい私とお風呂
それからしばらくして救急隊の人たちに助けられた。少し事情聴取をされ、自身の不注意が原因と分かると厳重注意されて解放される。
「
「もう、ダメだって。
びしょ濡れの私に
「だって、だってぇ…………
顔を私の胸に沈ませてくる。私はその頭を優しく撫でた。
「二人とも、風邪ひくしすぐ帰るぞ」
「うん……」
「そうだね。お母さんにお風呂沸かしてもらうように連絡しておくよ」
風が吹き、私は冷たくなった体を縮こまらせる。服が濡れてるせいで全身が冷え、声を抑えながらくしゃみをする。
「くしゅん。あたしも服濡れて寒くなってきちゃった」
先導していた
「ただいまぁ」
「「お邪魔します」」
「おかえりなさい。とりあえず二人はこれで体拭いて」
「「ありがとうございます」」
「
「それは構いませんよ」
「あの、先に
私のせいで
「何言ってるんだよ。女の子は体冷やしちゃダメだろ? 俺は大丈夫だから」
「そうよ。こういうときぐらいレディーファーストに甘えてもいいんじゃない?」
私と同じくらい冷え、未だに震えている体。本当ならこんな目に遭うこともなかったのに、お風呂まで我慢して、悪態の一つも吐かないで。
そんなの――あまりに理不尽だ。
「ま、待って……」
私は恥ずかしさを堪えながら次の一言を発した。
「私、
「え⁉」「は⁉」「
三人同時に驚愕の声を上げ、私は羞恥のあまり俯いてしまう。
恥ずかしい。体は芯まで冷えてるのに顔だけ火が出るほど熱かった。
「本人がいいなら、構わないの……かな?」
「ダメに決まってるじゃないですか⁉ 俺は男なんですよ!」
「そうだよ、そんなことしたら
「でも、私のせいで
なんとか口にする。場の空気に耐えられなくなった私は逃げるように脱衣所へ向かった。扉を閉じるとすぐに服を脱いで体を洗い始める。
いつもより念入りに洗うと髪を結んで湯船に浸かった。浴室は心身をリラックスさせる場所なのに全然落ち着かない。
ガチャリ
脱衣所の扉が開く音が聞こえ、思わず背筋を伸ばす。浴室と脱衣所を仕切る扉から一つの大きな影が見えた。
「入ってもいいか?」
「ど、どうぞ」
三角座りのように浴槽で座って秘部を隠す。衣擦れの音が扉越しから聞こえるたびに胸の鼓動が速まった。
もうすぐ
ドク、ドク、と外まで聞こえるんじゃないかというくらい鼓動が早くなる。緊張のあまり目を瞑って扉が開くのを待った。
そんな私の気持ちなど関係なく、一分も経たないうちに扉が開く音が聞こえてくる。恐る目を開けると腰に布を巻いた状態の
「っておま、布巻いてないのかよ⁉」
「そ、そんなの渡されてないし……」
「たく、目のやり場に困るな」
「見たいなら……見てもいいよ?」
我ながら何を言ってるのかが分からなかった。頭が真っ白になって上手く考えられなくなる。
「それで見れたら苦労しねぇよ」
呆れたように言葉を零して
「
「いんや、ただ痩せ気味なだけだ」
「そうなんだ。……ねえ、その腕の痣大丈夫?」
「あぁ、そこは前に
「掴まれたって、屋上の話?」
「そうそう」
「もしかして、あれが原因?」
だとしたら
「そんな拗ねるなって。あんな力で痣なんかできるわけないだろ」
「じゃあどうして?」
「恥ずかしい話なんだが、ドジして色んなところぶつけて痣作っちゃうんだよ」
言われて注意深く観察してみる。確かに腕以外にも足とか背中……ってどうやったらそこに痣ができるんだろう。
「とりあえず、恥ずかしいからあまり見ないでくれるか?」
「ご、ごめん」
ボディーソープを手に付け始めたので、
シャワーの音を聞きつつ浴槽の端に移動する。
そろそろ入ってくる……。
「それじゃ、俺はもう上がるよ」
しかし
「ど、どうして?」
「早く出るように言われたからな。それに
「待って……」
私は彼の腕を掴んでいた。自分でもどうしてかは分からない。考えるより先に体が動いていた。
「
どうして、なんて考えるまでもない。今の私は一糸纏うことなく、秘部だって隠していない。
つまり、つまり……。
裸を見られた?
「は、はわわ……」
これまでにない羞恥心が込み上げてくる。何をすればいいのか分からず、考えようとしても思考が纏まらない。ただこのままじゃいけないということだけは分かった。
「だ、だめぇぇぇぇぇ!」
パチンと鋭い音が浴室に響きわたった。
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